日本財団 図書館


2. 電装認定事業場について
(1)電装認定事業場とは
 電装認定事業場とは、船舶検査の方法附属書H別記1の「船舶電気艤装工事事業場の施設及び能力の基準」(以下「電装認定基準」という。)に適合し、管海官庁から「船舶電気艤装工事を行う特定の事業場」としての「証明書」の交付を受けた事業場をいいます。
 この電装認定事業場は、定期的検査時等において、電気艤装工事を適正に行い、かつ、その自主検査の結果を書類(チェックシート等)で提出することにより、一定の範囲内の船舶の電気設備に関し運輸局(海運支局)の船舶検査官及び日本小型船舶検査機構の検査員の立会いが省略されることになっています。
 上記関連通達等の抜粋を付録1及び8に掲載します。
 なお、電装認定事業場が管海官庁に提出するチェックシート等の用紙は、当協会で準備している「電気機器及び回路のチェックシート」、「船内電気機器効力試験成績表」又は「船内電気機器及び回路の試験成績表(小型船舶、小型漁船用)」を使用して下さい。
 これらの概要を表1.3のフローチャートで示します。
 このフローチャートで判りますように、電装認定事業場となるためには当協会で実施している資格を取得することが前提となっています。
 
図1・3 電装認定事業場関係のフローチャート
(拡大画面:69KB)
 
(2)電装認定事業場になるためには
 前述のように電装認定事業場になるためには電装認定基準に適合しなければなりません。
 この電装認定基準に適合すれば管海官庁に申請して電装認定事業場の証明書の交付を受けることができます。
 つまり電装認定事業場になることができます。
 この電装認定基準には、人員、施設、器具・備品類、及び実績の4つの要件が定められており、先ずはこの4つの要件を満たすことが電装認定事業場になるための前提条件となります。
 それでは、これらの要件について順を追って説明しましょう。
(1)電装認定事業場となるための4つの要件
(イ)人員
 人員については対象船舶別に表1.4の「技能者の所要人員表」で定める技能者によって構成されていなければなりません。この表で判るように対象船舶ごとに技能者(資格者)の所要人員が定められていますので、どのランクに適合するかによって証明を受ける工事区分(対象船舶)を異にします。
 表1.4に掲げる技能者の人数算定にあたっては、技能者の種別ごとについて算出した数の小数第1位を四捨五入することになっています。
 なお、対象船舶が表1.4中に掲げる200G.T未満の旅客船、漁船等、500G.T未満の貨物船及び100G.T未満の危険物ばら積船であって全作業員が3人以下の事業場は、船舶電装士がいなくても表1.4の基準に適合しているものと認められます。この場合、全作業員は2名(主任船舶電装士1名と作業員1名)以上在籍していればよいことになります。
 例えば、ランク1については「総トン数200トン未満の漁船、引き船及び旅客船、総トン数500トン未満の貨物船、並びに総トン数100トン未満の危険物ばら積船」がその対象となりますし、ランク4については、すべての船舶について制度の適用を受けることができます。
 管海官庁から交付される証明書には条件として対象船舶が記載されます。
 
(注)技能者(資格者)の構成人員が表1.4の「技能者の所要人員表」に示す要件に適合しているかどうかを考える場合、上位の資格者の人員を下位の資格者の人員に充当することができます。ただし、1人の資格者が2つ以上の資格を兼ねることはできません。
 
表1.4 技能者の所要人員表
ランク 対象船舶 資格構成者
1 2 3 船舶電装士 主任船舶電装士 船舶電装
管理者
資格者の
最低人員
旅客船
漁船
その他
貨物船
(1に揚げる
貨物船を除く。)
危険物ばら積船 所要割合 最低
人員
所要割合 最低
人員
1 G.T
200未満
G.T
500未満
G.T
100未満
全作業員の25%以上   全作業員の15%以上 1名   1名
2 G.T
500未満
G.T
5,000未満
G.T
500未満
全作業員の30%以上 1名 全作業員の15%以上 2名   3名
3 G.T
5,000未満
G.T
20,000未満
G.T
5,000未満
全作業員の30%以上 2名 全作業員の15%以上 3名 1名以上 6名
4 全ての船舶 全作業員の30%以上 3名 全作業員の15%以上 4名 2名以上 9名
注1) 水中翼船及びホバークラフト等、特殊な船舶は対象外となる。
2) 「その他」とは、非旅客フェリー、作業船、引き船、交通船及び巡視船をいう。
 
(ロ)施設
 業務を円滑に行うために次の施設を有することが必要です。
(i)雨天の場合でも作業が支障なく行える適当な面積の作業場(この作業場は、パイプ曲げ、電線端末処理等の作業ができる適当な面積を有するものであり、特に大きさにこだわる必要はありません。)
(ii)船舶電気艤装工事を行うに必要な機器の保管場所
(iii)試験及び検査を行うに必要な機器を保管するに適当な保管場所
(ハ)器具・備品類
 工事、試験及び検査を行うために次表の設備を備える必要があります。
 
工事のための設備 試験及び検査のための設備
(1)ボール盤
(2)溶接機
(3)グラインダ
(4)携帯用ドリル
(5)充電器
(1)絶縁体抵抗計
(2)電圧計(交流及び直流用で精度が1.0級以上のもの)
(3)電流計(〃)
(4)回転計
(5)比重計
(6)テスタ
(7)温度計
(8)ストップウオッチ
 
(ニ)実績
 過去4年間において管海官庁、(財)日本海事協会(NK)又は日本小型船舶検査機構(JCI)の検査を受けた新造船が8隻以上(第2回以降の定期検査等を受けた修理船にあっては、3隻を新造船1隻として換算する。)の実績を有することが必要です。
 前述のように電装認定事業場は、ランク1からランク4まで区分されており、人員及び実績についてはそのランクに対応した資格者の構成人員及び対象船舶の工事実績が必要となります。
 従って、更に上のランクを目指す場合は計画性をもって資格者の養成を行う必要があります。ただし、資格者の人数が足りても、実績が足りないとそのランクについての証明を受けることができませんので、注意して下さい。
(2)その他の要件
 更に認定基準には工事及び点検の方法等について次のように定められています。
(イ)工事の方法
(i)工事日程表を作成すること。
(ii)工作図、配線図面を作成すること。
(iii)工事、試験及び検査を行うために必要な器具の表を作成すること。
(iv)取付ける機器の表を作成すること。
(v)工事の進行状態をチェックする者を定め、工事の進行状態を把握すること。
(ロ)点検方法
 工事を行った場合は次表の事項について点検ができるようなチェックシートを作成しチェックを行うこと。(用紙は当協会で販売している電装認定事業場の「電気機器及び回路のチェックシート」、「船内電気機器効力試験成績表」又は「船内電気機器及び回路の試験成績表(小型船舶、小型漁船用)」を使用して下さい。)
 
対象設備 点検内容
回転機器 作動状態の良否、取付状態の良否、絶縁の良否、機器の破損の有無
配電盤 計器の破損の有無、取付状態の良否、作動状態の良否、絶縁の良否
配線 被覆の破損の有無、電線の取付状態の良否、使用電線の適否、絶縁の良否、接続方法の良否
電熱装置 取付状態の良否、機器の破損の有無、絶縁の良否
小型電気機器 器具の異常の有無、絶縁の良否
照明装置 装置の異常の有無、取付状態の良否、絶縁の良否
 
(ハ)書類の作成
 電装認定事業場は、船舶ごとに作成した試験及び検査の成績表を保管しておかなければならない。
 
 以上電装認定事業場となるための必要事項について述べましたが、電装認定事業場となるには技能者(資格者)は最低何人必要なのか、資格者の構成人員はどうなるのかを表1.4より確認して下さい。また、検査実績が(1)の(ニ)を満足しているかについても確認して下さい。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION