2・1・6 試験用設備
製造工場における、試験用の電源設備及び負荷設備について、簡単に述べる。
(1)電源設備
(a)発電機の試運転及び試験は駆動機と直結したまま回転させ、発電機の励磁を加減して行う。
(b)電動機や変圧器の試運転・試験は、電源を商用電源から設備された遮断器を通じて直接得るのが普通であるが、整理品の試験や故障調査のために行う試験は、試験内容と被試験機の容量に相応した商用電源とは別の電源で行うことがある。
(c)耐電圧試験用の電源は、耐電圧試験用として作られている変圧器を使うか、一般変圧器の低圧側巻線に電圧を印加し、高圧側の誘起電圧が所定の値となるような結線として使うことが多い。
(d)交流発電機を電源とするときは、発生電圧波形が純正弦波に近いもので周波数は所定のものであって試験中は安定に保持できることが必要である。
このためには、駆動機を直流電動機にするか巻線形誘導電動機を使って、セルビウス又はクレーマ方式にするとよい。
(e)試験の結果に疑義がないように試験用電源は、十分安定した容量の大きなものを使うべきである。また電圧波形の影響が大きい試験に使う交流電源の無負荷電圧の波形狂い率は10%以内とすること。
ただし、試験の結果に疑義のない試験に限り商用周波数の電源で試験して差し支えない。
(2)負荷設備
(a)発電機の負荷には、一般に実負荷として水抵抗器が使われていることが多い。
水抵抗器は、コンクリート又は木枠からなる水槽中に電極を挿入し、その挿入量又は極間隔を加減して負荷を調整するもので、一般に給水しながら負荷の安定を図るとともに蒸発量を補ったり水温を調製する。
(b)水抵抗器の電極の形状・配置によって、抵抗値(R)はほぼ次のようになる。
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三相のときは各相間について行う。ただし2D/d<4Dのとき、誤差が大になる。
これらの水抵抗器の電極面の電流密度は、0.15A/cm2以下にとるのがよい。
清水の固有抵抗は20℃で2000〜5000Ω・cmであるが食塩含有量が5%を超えると10〜5・Ωcmと急激に減少する。図2・1は450V回路で1000kW程度まで負荷がかけられる水抵抗器の一例であるが、普通のドラムカン(φ0.6×0.9m)を使っても流水なしで3〜5kW、5l/minの水を流して約20kWの負荷がとれる。この場合の電極は面積0.06m2、厚さ5mm程度3枚でよい。
図2・1 水抵抗装置の一例(単位mm)
200l/minの水量を流して1000kW程度とれる450V用水抵抗装置。
(c)電動機の負荷試験で、相手機械と連結されているときは、相手機械に負荷をとってもらうのが普通である。電動機単独のときは、他の発電機をベルト掛け又は直結してそれに負荷をとってもらうのが普通である。
(d)ベルトを張るときは図2・2のように緊張面を下面にとり、ベルトとプーリーの接触角は平ベルト掛けで160°以上にとる。
ベルトの伝達能力P〔kW〕はほぼ次式でよい。
V;ベルトの速度〔m/s〕
A;ベルトの断面積〔mm2〕
σ;ベルトの許容応力(Kg/mm2)
図2・2 ベルトの張り方
(e)負荷力率を1.0以外の任意の力率(一般に遅れ90〜80%)で運転するときは、水抵抗とともに可変リアクトル又は同期電動機を使う。同期電動機(交流発電機でよい)を使うときは、2・2・8の図2・12のように接続し、界磁電流を調整して力率を変化させる。最大遅れ容量Qは、励磁電流を零にしたときで次の値となる。
P;定格出力〔kVA〕、S;短絡比 E'/E:使用電圧と定格電圧の比 σ:飽和係数
なお、さらに励磁電流の極性を変えて励磁すると10〜20%くらい容量を増すことができる。
2・1・7 復習問題(2)
(1)試験・検査に適用される規則、規格などはどんなものがあるか述べよ。
(2)試験を行った際の感電に対する安全対策を5つ挙げよ。
(3)発電機などの負荷試験に水抵抗がよく使用されるが、その際の電極面の電流密度はどの位とればよいか。
(4)発電機の負荷試験で負荷力率を1.0以外の任意の力率をとるには如何なる方法があるか。
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