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2・2 交流発電機
 船用の交流発電機はすべて同期発電機が使用されているので、ここでは同期発電機の製造工場における試験・検査について述べる。
2・2・1 試験の種類と項目
 試験の種類とその各試験項目は次のとおりである。これらの各項目のうちから重要なものについてその詳細を説明する。
(1)形式試験
(a)GD2の測定、(b)風量の測定、(c)軸電流の測定、(d)各種インピーダンス、リアクタンス、時定数の測定(逆相インピーダンス、零相インピーダンス、直軸・横軸同期リアクタンス、過度リアクタンス、初期過度リアクタンス、漏れリアクタンス、諸時定数)
(2)受渡試験
(a)機械的点検
(b)巻線抵抗試験
(c)絶縁抵抗試験
(d)無負荷飽和特性及び相順試験
(e)規約効率の算定
(f)三相短絡特性試験
(g)界磁電流・短絡比及び電圧変動率の算定
(h)温度試験
(i)耐電圧試験
(j)並行運転試験
(k)励磁装置試験
(3)参考試験
(a)振動試験
(b)騒音試験
(c)過負荷試験
(d)過速度試験
(e)中性点電圧の測定
(f)循環電流の測定
(g)波形狂い率の測定
2・2・2 機械的点検
 機械的点検内容としては、運転前に外観構造、寸法形状を調べるものと、運転状態に入ってから調べるものとがあり、それぞれについての点検項目、検査基準、点検方法を表2・2に示す。
2・2・3 巻線抵抗試験
 巻線抵抗の測定は、次の目的のために行うものである。
(1)設計どおりに巻線が施されているかどうかを抵抗値から判断する。
(2)接続違い・断線その他の事故を未然に発見する。
(3)規約効率算定を行うための抵抗損失を求める。
(4)温度上昇値の算出を抵抗法により行う。
 測定は、抵抗測定器(ホイートストンブリッジ、ケルビンダブルブリッジなど)、又は電圧降下法(直流電圧を印加して電流との比より求める)などがあるが、通常は取扱い簡単な抵抗測定器によって測定する。
 
表2・2 機械的点検項目
項目 検査基準 点検方法
外観構造 1. 形式・一般構造 図面 外被の形、保護方式・冷却方式、付属品の取付、外観・構造について調べる。
2. 塗装色 仕様書 色見本により適合度を調べる。
3. 表面処理・仕上 社内規格 めっき・さび止め処理・仕上り程度について調べる。
4. 外傷・清掃手入れ 社内規格 打こん・腐食、機器内の作業中の材料くずなどの清掃状態について調べる。
5. 銘板、その取付位置 図面 銘板記載、刻印事項の確認及び各種銘板の取付位置を調べる。
6. 端子箱の取付・位置・形状 図面 取付方向・位置・形状、特に外部引込線との関連を調べる。
7. 端子の形状記号・位置・配列 図面 端子記号・形状・寸法の確認及び配列を図面により調べる。
8. 絶縁及び沿面距離 図面
社内規格
船級協会規則
船舶設備規程
端子取付の絶縁板及び軸電流防止絶縁板の処理、内部結線用電線の端末処理を調べ、端子板・軸電流防止絶縁板などの絶縁及び沿面距離を調べる。
9. ブラシと保持器とのはめあい JIS C 2802−84
JE C 2137−00
保持器の取付状態及びブラシのはめあい程度について調べる。
10. ブラシ材質・数量・すり合せ 図面
社内規格
指定材質数量の確認、すり合わせ程度を調べる。すり合わせ程度は接触面積の2/3以上。
11. メタルの当たり 社内規格 メタルの当たりが良好な状態にあることの確認、メタルの長さ方向に対して40%以上当たっていて一部に強い当たりのないことをめやすとして調べる。
12. 各部ボルト、ナットの締付け、回り止め 社内規格 打音・増締めによる締付けの確認及びゆるみ止めの方法を確認する。
13. 付属品の取付状態 図面 温度計・圧力計などの取付位置、給排油管のフランジ取付状態を調べる。
14. 保守点検の容易 社内規格 ブラシ、メタル回りなどの点検、油面位置、点検窓の開閉、局所的の分解の容易さについて調べる。
寸法形状 15. 外形寸法 図面
社内規格
図面により外形寸法を確認する。
16. 取付寸法 図面
社内規格
取付脚の穴及びピッチ、フレーム中心より軸端までの寸法を調べる。
17. 取付脚の平面度 社内規格 定盤上での据付状態のすきまを測定し0.1mm以下であること。
18. 軸中心までの高さ 図面
JIS B 0902−76
機器の取付面から回転軸中心までの寸法を測定する。
19. 軸端及びキーみぞ 図面
JIS B 1301−96
軸径・軸端長さ・キー幅・深さ寸法及び底部のRを確認する。軸端長さの許容差は 250mmまで±0.5mm 250mmを超えるもの±1.0mm 回転円周上等間隔の3点以上を測定する。
20. エアギャップ 図面
JEC 2137−00
指定寸法に対して平均値の許容量は±15%以内、測定値の個々の値は平均値に対し最大・最小の差が20%以内。
21. エンドプレー 図面
社内規格
回転子の軸方向の可動範囲を調べる。
22. メタルと軸とクリアランス 社内規格 マイクロメーター、スキマゲージなどで測定する。
23. ブラシ圧力 社内規格 規定値以内であることを確める。
24. カップリング、プーリー 図面 外径・はめあい部位・取付穴間隔などを調べる。
25. 潤滑油の種類 社内規格 注文主指定のもの以外は社内規格で指定したものを使用し、品種銘柄は確認。
振れ 26. 軸端部の触れ 社内規格 ダイヤルゲージを軸に近く固定し、軸を軽く回して最大振れを読む。 軸端の振れは0.03mm以下が望ましい。
27. スリップリング整流子の振れ 社内規格 26と同様、外周の振れを測定する。振れはスリップリングは0.05mm以下、整流子は0.03mm以下が望ましい。
運転状態 28. 騒音 JEM 1274−97
JEC 2137−00
JIS C 1502−90による普通騒音計A特性を用い、100ホン以下2・2・16参照
29. 振動 JEM 1274−97
JEC 2137−00
2・2・16参照
30. 相回転及び回転方向 社内規格
図面
交流発電機・・・正規回転の常態で検相器を用い相回転方向を確認する。 誘導電動機・・・端子符合と電源の相回転を合わせて運転し、図面指示どおりの回転方向を確認。
31. ブラシ回り点検 社内規格 ブラシの振動、回転中のブラシ位置、きずの有無、ブラシ当たりなどを調べる。ブラシ接触面積の2/3以上。
32. 軸受回り点検油漏れ 社内規格 オイルリングの回転状況、音響、温度、油漏れの有無を調べる。
33. マグネチックセンタ 社内規格 運転中のマグネチックセンタはエンドプレーの中心にあることを調べる。 マグネチックセンタ位置は片側に最小1.0mmのエンドプケーレーを残すこと。 マグネチックセンタ刻印表示を調べる。ただし、ころがり軸受の場合を除く。
34. スペースヒータ 図面 容量、結線を確認し、電動機の機内温度が周囲温度より上昇(5℃以上程度)することを確認する。
35. 潤滑油の量 仕様
社内規格
運転前後の油面位置の確認、強制給油の場合の油圧・油量を確認する。ころがり軸受のグリス充てん量は製造工程中で確認する。
検査基準のところでは社内規格とあるのは、製作会社の社内検査基準をさしているので、現地でメーカー以外の人が試験を行う際は、一般規格、仕様書・図面とともに項目説明を参照して点検すればよい。







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