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6・3 複素数によるベクトル表示
6・3・1 複素数
 
図6・10
 
 図6・10において、x軸とy軸の直交座標においてなるベクトルをあらためて考えてみよう。三角関数を使って
 
 
 
 故に a=Acosθ、b=Asinθ
 また、偏角θは次のように表される。
 
6・1・1参照のこと)
 
 次にベクトルの大きさAは6・1・1で述べたピタゴラスの定理を適用して
A=a2+b2
 
 
 以上の関係から、これだけでは大きさはわかるがその方向は表現できない。ベクトル図法なら大きさと方向の二つの要素を含んでいるから問題はない。そこで、数学的にこれを表現するには複素数を導入する必要がある。複素数について説明すれば次のようである。
 
図6・11
 
 図6・11においてなるベクトルを数学的に表現するには
A=a+jb・・・(6・7)となる。これを複素数という。
 この場合aを実数部jbを虚数部という。そして、絶対値
 
 
(1)jの意義
 上式に出てくるのことで、これを虚数単位ともいって、一般数学ではiと書くが電気工学では、iは電流と間違い易いのでjと書く。
 以上述べたように、ベクトルは大きさと方向の二つの要素をもっているので、このjを導入したほうが、電気の理論を解くのに便利であることを1893年頃、アメリカのスタインメッツが発表し現在に至っている。
 これは、図6・11のようにx−yの直交軸においてx軸方向を実数、y軸方向を虚数にとる。この虚数にはjを付ける。これによって複素数が完成し、前記のとおり、数学的にベクトルの表示ができる。
 
図6・12
 
 次にjの性質を考えよう。
 図6−12においてjを乗ずることは、なるベクトルが反時計式に90°=π/2づつ回転することを意味している。
 即ち、
 
 
 上式でわかるとおりjを乗ずることはベクトルがπ/2毎に反時計式に回転させることになる。なお、実数軸と虚数軸の交点を原点0としてy軸上で0点より上にあるj符号は(+)で、下は(−)、また、x軸上で0点より右(+)、左(−)と決められている。(図6−12参照のこと。)
 
 
(3)共役複素数(共役ベクトル)
a2+b2=(a+jb)(a−jb)式から
(a+jb)と(a−jb)との二つの複素数は互に共役であるという。
これを共役複素数又は共役ベクトルという。
 
 
6・4 復習問題(5)
(1)sin2θ+cos2θ=1 なることを証明せよ。
(2)sinπ/6、sinπ/4、sinπ/3、sinπ/2 それぞれの値はいくらか。
(3)cosπ/6、cosπ/4、cosπ/3、cosπ/2 それぞれの値はいくらか。
(4)弧度について説明せよ。
(5)1〔rad〕は何度に相当するか述べよ。
(6)角速度について説明せよ。
(7)偏角とはどんな角か説明せよ。
(8)ベクトルの和と差を図で説明せよ。
(9)複素数を説明せよ。
(10)jの意義を説明せよ。
(11)複素数の絶対値を示せ。







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