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8 IMO 操縦性基準の活用状況調査
 本調査は、操縦性暫定基準が具体的にどのような形で利用されているかを把握する目的でアンケート形式により行われた。その結果をまとめて報告する。
 
 調査は、日本船主協会、日本造船工業会および日本中小型造船工業会に対して行われ、そのうち回答があったのは、船会社9社および造船所8社であった。日本中小型造船工業会には暫定基準の対象となる船舶を建造している造船所がなかったので、回答があった17社について解析を行っている(図8.1)。また、調査対象期間は、平成13年度(平成13年4月1日〜平成14年3月31日)の1年間であった。
図8.1 調査対象(国内)
 
 調査対象造船所のうち38%(3社)の造船所が操縦性暫定基準の適用を要求されている(図8.2(a))。また、調査対象船会社のうち33%(3社)の船会社が操縦性暫定基準の適用を要求している(図8.2(b))。
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図8.2 暫定基準適用要求
 
 適用要求があった造船所の建造実績に対して23%の船に要求されている(図8.3(a))。また、適用を要求した船会社は建造船の100%の船に適用を要求している(図8.3(b))。
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図8.3 暫定基準適用要求(建造実績ベース)
 
 造船所が建造する際、暫定基準の適用を要求された建造船の船籍国(図8.4(a))、あるいは船会社が暫定基準の適用を要求した建造船の船籍国(図8.4(b))を以下に示す。
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図8.4 暫定基準適用要求船籍国
 
 造船所に対する操縦性暫定基準の要求レベルは、「仕様ではないが、操縦性暫定基準を満足する事を要求される、あるいは試運転時に操縦性試験を実施」が最も多く、次に「ペナルティなしの仕様として適用」が多く、この二つを合わせると60%を越えており、操縦性暫定基準を満足する要求が強い事を窺い知ることができる(図8.5(a))。さらに、造船所サイドは条件付きながら100%受け入れている(図8.5(b))。
 また、操縦性暫定基準の適用要求に対してその他と回答した1社は、推定計算や模型試験結果の説明で暫定基準を満足していることを示している。
 次に、仕様として操縦性暫定基準の適用を要求された場合の造船所の対応としては、操縦性試験(試運転)を行う、推定計算結果を提出する、模型試験結果を提出するが各1社ずつあった。さらに各社ともその結果は暫定基準を満足している。
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図8.5 操縦性暫定基準の適用要求に対する造船所の対応
 
 今後、操縦性基準の適用を造船所に要求していく場合の船会社の対応に対しては、「仕様ではないが、操縦性暫定基準を満足する事を要求する、あるいは試運転時に操縦性試験を実施」が最も多く、次に「ペナルティ有りの仕様として適用」、「ペナルティなしの仕様として適用」の順になっている。この三つを合わせると75%に達しており、操縦性基準を満足する要求が今後強まることが予想される(図8.6)。
 なお、ペナルティ有りの仕様として適用と回答したところは、基準の強制化が前提としている。
 次に、乾貨物船への対処についての回答では、基準に示されている手順による適用を要求が3社、試験あるいは、推定計算結果を要求するが1社であった。
図8.6 今後、操縦性基準の適用を造船所に要求していくレベル(複数回答)
 
 今回のアンケート調査から、暫定基準を要求された造船所の建造隻数に対して約1/4が適用されていること、船会社からみると適用を要求する会社は全ての船に適用していることが分かった。このことから、暫定基準がかなり浸透していることが窺える。今後の対応では、船会社は操縦性基準の強制力のレベルに応じて操縦性基準の適用レベルを強める意向も窺われる。







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