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6.6 船尾形状を考慮した線形微係数推定式
 第2章に示した貴島による微係数推定式(Type B)をベースに、Z試験のオーバーシュート角に強い影響を与える線形微係数に対して、森による船尾形状係数σa、三宮らによるβr0.3×l/ldiagおよび新しく提案した船尾形状係数σ'aのそれぞれを用いて回帰分析を行った。
 
(1)σaについて
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(2)βr0.3×l/ldiagについて
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(3)σ'aについて
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 シミュレーションは、貴島による流体力微係数推定式(Type A)、同推定式(Type B)の2種類の推定モデルと、貴島による流体力微係数推定式(Type B)をσa', βr0.3×(l/ldiag), σ'aそれぞれにより補正した3種類の推定モデルを併せて計5種類の推定モデルで行った。
 シミュレーション結果をそれぞれ図6.5〜図6.9に示す。これらの図における破線は実験値よりオーバーシュート角が3度離れていること示している。
 貴島による流体力微係数推定式(Type B)によるシミュレーション(図6.5)では、操縦性能のよい船には比較的よい精度を示しているが、操縦性能の悪い船になればなるほど実験値との差は大きくなっている。
 貴島による流体力微係数推定式(Type A)によるシミュレーション(図6.6)では、(Type B)に比べ改善されてはいるものの、まだ、十分な精度とはいえない。
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図6.5 貴島推定式(Type B)の推定値と実験値の比較
 
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図6.6 貴島推定式(Type A)の推定値と実験値の比較
 
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図6.7 σaモデルによる推定値と実験値の比較
 
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図6.8 βr0.3×l/ldiag推定値と実験値の比較
 
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図6.9 σ'aモデルによる推定値と実験値の比較
 
 森による船尾フレームライン形状係数σaを用いて補正を行った推定式によるシミュレーション(図6.7)では、精度の向上が見られるものの、Cbの小さな船に対して、σaを針路不安定側へ推定しているため、実験値を大きく上回るシミュレーション結果となっている。
 三宮らによるβr0.3×(l/ldiag)を用いて補正を行った推定式によるシミュレーション(図6.8)では、補正を行う際中心となったSR221船型と同程度の平行部を持つ船に対してはよい精度で推定しているものの、0.3LrStationが船体中央によった船の場合には実験値を下回るシミュレーション結果となっている。
 新しく提案したσ'aを用いて補正を行った推定式によるシミュレーション(図6.9)は、今回シミュレーションした船に関してはよい精度でシミュレーションができていると思われる。
 
 線形微係数に船尾形状を考慮し補正することにより、Z試験のシミュレーションの精度が向上した。
 船尾形状を表現するにあたり、各船の特徴の現れるS.S. 2より後部のσaを用いることで、より的確に船尾形状を表現することが可能となった。
 本研究で行われていないCbが0.5付近のコンテナ船のような船型に対してのシミュレーションを行い、その精度を確認する必要がある。
 
[1]森 正彦:船型設計ノート(24)、船の科学、Vol. 48、No. 3、平成7年3月
[2]三宮一彦、末吉 明、東濱 清:載荷状態が操縦微係数に及ぼす影響について、西部造船会々報、第99号、平成12年3月
[3]山田孝三郎:操船性能・操縦性の総合評価による船尾形状・舵面積の設計に関する研究、博士論文、平成13年12月







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