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6 操縦性基準見直しのための操縦性推定法に関する検討
 操縦性基準見直しのためには高精度の操縦性能推定法が必要である。しかも、基本設計段階での船体主要寸法などから推定が望まれている。しかし、操縦性能に与える船尾形状の影響が大きく、その影響を加味した推定法が求められている。ここでは、船尾形状を考慮したさらに高精度の線形微係数推定法について検討した。
 
 すでに、船尾形状と操縦性能の関係を表現するさまざまな表現方法が提案されている。ここでは、これらの船尾形状係数について概説する。
 
 森[1]による船尾フレームライン形状係数は、次式で表される。
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ここで、
 
σa:船尾フレームライン形状係数
Cwa:船体後半部の水線面積係数
Cpa:船体後半部の柱形係数
 
σaの値が大きくなると、船尾フレームライン形状はU型、針路安定となり、σaの値が小さくなるとV型、針路不安定となる傾向がある。
 
 三宮[2]らによる船尾肥大度およびフレームライン形状等を表現したパラメータは、次式で表される。
 
βr0.3×l/ldiagCmCp/Cw×l/ldiag (6.2)
 
ここで、
 
l/ldiag:フレームラインの凸凹の度合いを表すパラメータ
Cm:(Midship Area)/(B d
Cp:(Area at 0.3 Lr/(Midship Area)
Cw:Breadth at 0.3 LrB
 
なお、各パラメータについては図6.1、図6.2に示す。
図6.1 三宮らによる船尾肥大度およびフレームライン形状を表現したパラメータの定義(1)
 
図6.2 三宮らによる船尾肥大度およびフレームライン形状を表現したパラメータの定義(2)
 
 山田[3]は、船尾プロファイル形状を表す指標として、S.S. 1/2からA.P. 区間でベースラインとプロペラシャフトセンターで区切られた矩形面積に対する船尾プロファイル横投影面積の割合を船尾プロファイル指数S3として提案しており、次式で表される。また、図6.3にこれを示す。
 
S3=(Shadow Area)/(Square Area) (6.3)
図6.3 山田による船尾プロファイル指数の定義
 
 26隻の船を対象として、各船尾形状係数の値が表す特徴について調査を行った。
 
 森による船尾フレームライン形状係数σaは、船体中央から後半の船体形状が含まれているため、Cbの小さな船においてはCpaが小さくなり、実際より針路不安定側へ移行してしまう傾向がある。
 
 三宮らによるβr0.3×(l/ldiag)においては、平行部が同程度の船に対しては船尾形状の違いがよく表現されていると思われる。しかし、0.3Lrの定義においてPrismatic Curve の最高値を用いているため、平行部があまりなく横断面積がなだらかに増加している船において、0.3Lr Stationが船体中央に近くなるために、βr0.3の値が大きくなり、その結果としてβr0.3×(l/ldiag)の値が実船より針路安定側へ移行する傾向がある。
 
 山田によるS3においては、SR221船型の場合、船尾形状が大きく違うにもかかわらず、船尾プロファイル横投影面積が同一であるため、S3の値は各船型において変化は見られない。
 また資料[3]において山田により、舵・スケグ面積比なる指標を定義し、これとループ幅の関係を示している。その図表をもとに、本節で用いたデータとあわせて図6.4に示す。
図6.4 ループ幅と舵・スケグ面積比の関係
 
 まずはじめに、調査の対象とした26隻の船について、各S.S.における横断面積係数の分布の調査を行った。その結果、S.S. 2より後部では分布が広範にわたっており、逆にS.S. 2より前部は分布がほぼまとまっていることが分かった。従って、各船ごとの船尾形状の違いはS.S. 2より後半部に如実に現れていると思われる。
 そこで、森による船尾フレームライン形状係数をベースに、S.S. 2より後部の船尾フレームライン形状を考慮に入れた係数σ'aを考える。
 
 ここで、
 
C'wa:S.S. 2より後部の水線面積係数(=Aw2/L2B2
C'pa:S.S. 2より後部の柱形係数(=V2/A2L2
Aw2:S.S. 2より後部の水線面積
A2:S.S. 2における横断面積
V2, L2:S.S. 2より後部の体積および船長
B2:S.S. 2における船幅
 
S.S. 2より後部の船尾フレームライン形状係数σ'aは、σaと同様、その値が大きくなるほど、船尾フレームライン形状がU 型に近づき、針路安定であることを表す。
 
 SR221船型を用いて流体力微係数の感度解析を行った結果、Z試験におけるオーバーシュート角は線形微係数の影響を強く受けていることが分かった。







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