5.溶接ビード形状の工作精度標準
5.1 溶接ビード形状の工作精度標準
溶接ビード形状の不整は静的及び疲労強度に影響を及ぼすので、適正な仕上がり形状を保持しなければならない。指標となるLWS Q 8101規定を図5−1に示す。
図5−1 溶接ビード形状の工作精度標準
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5.2 補足説明
5.2.1 余盛高さ
余盛高さの有無による5083−O材の疲れ強さの一例を図5−2に示す。これによれば、余盛があるものは、これを除去したものに較べ疲れ強さ(応力振幅)がN=106で約35%低下し、疲れ強さに対する余盛の影響が大きいことが判る。ただし、本図で余盛ありと余盛高さ0.5〜1.0mmのものとを比較すると、N=106以上では両者の差は余りない。従って、ここでの余盛ありの余盛高さを3〜5mmと仮定すれば、余盛高さをこれ以下とする厳しい規定は、疲れ強さに対しては考慮する必要はないとも言える。
一般には、突合せ溶接継手の応力集中は余盛端部に生じ、その応力集中率には止端部の丸みと余盛の角度が大きく影響する。これに対し、現場ではフランク角はともかく、止端の丸みを管理するのは極めて困難である。しかし、余盛高さを低くし、フランク角を大きくすれば、結果的に丸みが大きくなり、応力集中率は下がると見て良い。
図5−2 5083 O材のミグ突合せ継手のS−N曲線
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5.2.2 ビードのフランク角
図5−3は5083−O材の突合せ片面ミグ自動溶接継手の余盛高さh、止端の丸みρ及び応力集中率αの関係を示す。フランク角θが大きくなると、hが低くなり、ρが大きくなり、αは小さくなる。図5−4は5083材の両面1層ミグ溶接継手のフランク角θと疲れ強さの関係を示す。これに規定値を当てはめて見ると、余盛を除去したもの(θ=180°)を100%とした場合、規定各角度では次のようになり、標準範囲135°での疲れ強さは約65%程度となる。
θ(度) |
180 |
135 |
120 |
90 |
疲れ強さ比率(%) |
100 |
66 |
56 |
31 |
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許容限界の90°は大き過ぎる嫌いがあるが、90°を超えた場合はオーバラップとなるので、その規定に従うことになる。
5.2.3 オーバラップ
溶着金属が簿材に溶融しないで単に重なっただけのものをいう。実際にはビードを切断してその断面を調べるか、浸透探傷試験を行わないとその判別は難しい。
5.2.4 アンダカット
溶接止端部が母材表面より低くなることをいう。通常のアルミニウム合金ミグ溶接では余り発生しないが、水平横向き及び立向姿勢溶接時に出易い。
図5−5にアンダカットの深さと疲れ強さの関係を示す。この例では、繰返し数107の場合、余盛有り、アンダカット深さdが0.5mm以上のものは、健全材に較べ疲労強度(応力振幅)が約50%低下している。
図5−3 |
5083−0 6mm板突合せ継手の形状と応力集中率の例 |
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図5−4 |
5083板継手の余盛フランク角と軸荷重片振り疲労強度の関係 |
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図5−5 |
5083−H 6mm板のミグ立向全自動突合せ溶接継手のアンダカットと平面曲げS−N曲線 |
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図5−3〜図5−5は LWS Q 8101による
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