9.4 ウオータージェット推進装置
ウオータージェット推進装置は、船底から吸い込んだ水を推進用のポンプで加圧し、高速の噴流にして船尾から吐出させ、その反作用で船体を推進させるものであり、その原理上からも高速船艇の推進装置として有効であり、近年広く採用されて来ている。
1)ウオータージェット推進装置の特徴
a)メリット
●船底に突出する舵、プロペラ、軸がなく、船体抵抗上有利であり、又、浅喫水とすることが出来、喫水制約水域での航行が可能.
●操縦性に優れる(その場旋回も可能)
●主機を近接して配置することが可能。
●負荷変動の影響が小さく、急発進、急停止、曳航、波浪中航行等での主機操作が殆ど不要。
●振動、騒音が小さい(本質的に本装置はポンプ)
●キャビテーションが発生し難い。
●高速になる程推進効率が高くなる。
b)デメリット
●水吸入側(インテーク側)にゴミが詰まり易い.ヘドロ、土砂吸入によりインペラ消耗を生じ易い。
●保針性が悪い(小型のフィン又はスケグ装着が必要)。
●低速時はプロペラに較べ推力が低いから、主機回転をプロペラの場合より高めに設定する必要がある。
●ダクトがトランサムより突き出す(プロテクターが必要)。
●プロペラに較べ重く、価格も高い。
●一般には高速用のものを採用する為、低速では効率が低い(低速用を採用すれば効率は高くなるが、大型化する為重くなり、価格も上がる)。
2)推進効率
プロペラも原理的には同じであるが、本装置は流体の反動を利用するものである。次頁に示すパラメータを使用すると、ウオータージェットで発生する推進力(推力−スラスト)Tは次の様になる。
◇噴流と吸入流れの運動量の差に相当する発生推力
T=ρQ(Vj−u)
◇単位時間内に消費されたエネルギーE1
E1=u×T
◇流量Qの流体をPuからPjに昇圧させたエネルギーE2
E2=Q×(Pj−Pu)
◇推進効率η(但し粘性がない−理想流体−の場合)
η=E1/E2=u×T/Q×(Pj−Pu)=2/(1+Vj/u)=4/{3+√1+CT}
CT=T/(1/2×ρ×u2×Aj)
この推進効率ηの式から判ることは、
●噴流速度Vjが船速(=u)に近づく程効率が高くなり、Vj=uの時η=1になる。
●CTについて見ると、CTが小さい方、即ちAjが大きい方が効率ηは1に近くなる。
記号: |
T:推力 |
Pj:噴流の圧力 |
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ρ:流体の密度 |
Pu:吸入流の圧力 |
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Q:流量 |
Aj:ジェットの断面積 |
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Vj噴流の流速 |
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u:吸入流の流速=船速 |
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図9−13にウオータージェットの効率の例を示す。横軸は「ジェットの径の2倍」を取っているが、通常の斜流形式のウオータージェットでは、「ジェットの径の2倍」がそのまま型式名になることが多い。上述の様に、効率はVj/uにより変化し、この例図の場合、推力最大即ち効率が最大となるVj/uは1.45付近にある。船速uが変わると最適径が変わる。
ウオータージェットの効率の範囲は0.5〜0.65と考えて良い。
又、ウオータージェットの効率には、インレットの効率(位置、形状等)、船殼効率、設置高さ等が影響する。これらについては事前に十分メーカーと協議することが肝要である。
3)その他の留意事項
●メーカーによりダクト材質が異なるので、材質の確認並びに異種金属接触腐食の防止に留意すること。
●推力軸受けはウオータージェット部にあるのが普通。従って主機減速機部には必要ない。
●インテークやダクトと船体との取合い部に応力集中を生じさせないこと。
●回頭時や後進時のジェッ反力に対する強度に留意すること。
●後進時のジェット流とトランサムの相対位置に留意すること。
図9−14に参考事項を図示する。
図9−14 ウオータージェット推進装置の参考事項
(拡大画面:13KB) |
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(注)9.4の図は全て(株)石垣作成テキストによる
後進水流とトランサムの干渉
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後進バケットの舵効きと向き(バケット型)
(拡大画面:21KB) |
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ウオータージェットの反力
(拡大画面:15KB) |
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推力軸受け
(拡大画面:16KB) |
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インテーク部の注意事項
(拡大画面:40KB) |
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ウオータージェット型式の例
(石垣 IWJAシリーズ)
(拡大画面:35KB) |
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型番 |
入口径 (mm) |
最大入力 (ps) |
概略寸法(mm) |
概略重量 (kg) |
A |
B |
C |
D |
E |
F |
IWJA015 |
150 |
160 |
380 |
550 |
710 |
330 |
180 |
280 |
45 |
IWJA017 |
170 |
230 |
420 |
610 |
800 |
360 |
200 |
300 |
55 |
IWJA020 |
200 |
250 |
530 |
610 |
800 |
390 |
220 |
330 |
70 |
IWJA022 |
220 |
320 |
580 |
650 |
870 |
430 |
230 |
360 |
90 |
IWJA025 |
250 |
400 |
660 |
710 |
960 |
490 |
260 |
380 |
130 |
IWJA028 |
280 |
500 |
660 |
930 |
1210 |
525 |
280 |
410 |
180 |
IWJA031 |
310 |
630 |
820 |
890 |
1190 |
610 |
320 |
480 |
230 |
IWJA035 |
350 |
800 |
920 |
1000 |
1350 |
690 |
360 |
540 |
310 |
IWJA039 |
390 |
1000 |
940 |
1290 |
1720 |
770 |
400 |
640 |
430 |
IWJA044 |
440 |
1250 |
1230 |
1800 |
2310 |
950 |
530 |
740 |
650 |
IWJA049 |
490 |
1600 |
1370 |
2300 |
3100 |
1000 |
570 |
810 |
1000 |
IWJA055 |
550 |
2000 |
1540 |
2600 |
3500 |
1120 |
630 |
910 |
1350 |
IWJA062 |
620 |
2500 |
1730 |
2900 |
4000 |
1270 |
720 |
1020 |
1800 |
IWJA070 |
700 |
3200 |
1960 |
3300 |
4500 |
1430 |
800 |
1150 |
2500 |
IWJA078 |
780 |
4000 |
2180 |
3700 |
5000 |
1600 |
900 |
1300 |
3300 |
IWJA088 |
880 |
5000 |
2460 |
4200 |
5600 |
1800 |
1020 |
1450 |
4500 |
IWJA100 |
1000 |
6300 |
2800 |
4700 |
6400 |
2050 |
1160 |
1650 |
6300 |
IWJA112 |
1120 |
8000 |
3130 |
5300 |
7200 |
2300 |
1300 |
1850 |
8500 |
IWJA125 |
1250 |
10000 |
3500 |
5900 |
8000 |
2560 |
1440 |
2060 |
11300 |
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図9−13 ウオータージェット機種(型番要目)選定図
(石垣−−1,250psの例)
(拡大画面:51KB) |
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