9.3 プロペラ選定に関するその他の参考事項
1)プロペラ計算
高速船の船型計画では、プロペラの没水率、ティップクリアランスの確保、推進軸傾斜角等の点から、プロペラの直径が重要な決め手となるので、プロペラ計算でも先ず大凡の直径を決め、これに応じてピッチその他が決められる。計算は展開面積別のプロペラチャートにより、
前進係数(=VA/nD)
√Bp(={Nr√BHP×ηT/VA2.5}0.5)
δ(=N×D/VA)
トルク係数(KQ=Q/ρn2D5)
等のパラメータを用いて行う。高速船のプロペラは翼面積が大きくなるので、GAWNのチャートを使用することが多い。
然し通常は船の主要寸法、排水量、主機出力、/回転数、目標速力、プロペラ回転マージン、直径等をプロペラメーカーに提示すれば、メーカーで翼型も含め設計・計算し、主要目を決めてくれるので、これに依るのが便利である(この場合、必ず自航要素を含む計算書、形状寸法図、速力馬力曲線図を貰うこと)。
2)その他の参考事項
●材質 JIS規格アルミニウム青銅鋳物3種CAC703(旧AlBC3)が主
●翼数 3又は5(大型、高速高馬力船は5翼が多い)。
●展開面積比 比較的大きい
●スキュー角 20〜30°
一時40°を超えるものがあったが、振動、強度(含後進時)等の問題が続発し、現在は上記程度となっている。
●1軸2,000PS程度までは3翼で対応可能。高馬力では5翼が良い。
●2軸の場合両舷の回転方向は外回りが普通。
●翼荷重が大きくなるので必ずキャビテーションチェックを行うこと(普通、メーカーで計算)。
●プロペラティップクリアランスは少なくとも15%以上とすること。
●軸傾斜は航走時のトリム増を考慮し、9°以内とすることが望ましい。過大になると軸部斜流が増加し、キャビテーション特にルートキャビテーションを発生し易くなる。
●プロペラ効率のオプティマムポイントを狙い過ぎると、直径が大きくなり、配置に支障を来すと共に、軸、シャフトブラケット等が大型となりコストも上昇し、抵抗増を来たし得策ではない。影響する各要素をコンプロマイズさせて直径を決定すること。
参考までに、図9−4以降にプロペラ関係の実績データを示す。
図9−4 旅客船のLOA〜プロペラ直径実績
理論的根拠はないが、比較的纏まった傾向が見られる。
図9−5 プロペラ直径の簡易計算式と、係数Kの傾向
簡易計算式 D=K×BHP0.2/NP0.6
D:直径(m),BHP:主機定格出力(ps),K:係数,VT:4/4出力時の速力(kt)
NP:プロペラ回転数(rpm)
図9−6 BHP×102/△T×V4/42〜直径
図9−7 VT4/4〜ピッチ比
図9−8 BHP×103/△T×V4/42〜ピッチ比
図9−9 V4/4〜プロペラ回転数
1,000〜1,200範囲のものが多い。旅客船用主機は軽量小型を要求されるため、高速エンジンが採用されるが、それらの回転数は2,000〜2,300程度であり、これに減速比2:1程度の減速機を使用しているからである。プロペラの推進効率は回転数が小さくなる程良くなるが、プロペラ直径は大きくなるから、直径を小さめに抑えればどうしてもプロペラ回転数は上げざるを得ない。プロペラ設計では勿論オプティマムな点を選ぶ様にしたいが、実際的には余り強くこれに固執する必要はない。
図9−10 ピッチ比〜展開面積比(aE)
図9−11 VT4/4〜展開面積比(aE)
速力増につれaEも増加し、1.0を超える様になることが判る。
図9−12 VT4/4/√LWL〜展開面積比(aE)
図9−4 旅客船のLOA〜プロペラ直径実績
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図9−5 プロペラ直径の簡易計算式と、係数Kの傾向
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図9−6 BHP×102/△T×V4/42〜直径
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図9−7 VT4/4〜ピッチ比
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図9−8 BHP×103/△T×V4/42〜ピッチ比
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図9−9 V4/4〜プロペラ回転数
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図9−10 ピッチ比〜展開面積比(aE)
図9−11 VT4/4〜展開面積比(aE)
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図9−12 VT4/4/√LWL〜展開面積比(aE)
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