2.4 滑走艇の抵抗
滑走艇は滑走面が水面に対し仰角を持って前進し、滑走面に水流の動水圧を受ける。水圧力の垂直成分は、艇の排水量とバランスする揚力となり、水平分力は圧力抵抗となる。従って滑走艇の抵抗は、圧力抵抗と滑走面の切線方向に働く摩擦による抵抗の和となる。この場合、艇は圧力抵抗に抗して前進し、水に造波エネルギーを与えことになるから、この圧力抵抗は造波抵抗と見なすことが出来る。
図2−8に抵抗要素を示す。なお、全抵抗が最小となる最適滑走仰角は3〜5°辺りにあるようである(下右図参照)。
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滑走挺のトリム角(α)と抗揚比(R/L)の関係(βは船底勾記を示す)SRCNews No.4 1989.1 |
図2−8 滑走艇の揚力と抵抗
又、滑走艇は排水量型船と異なり航走中艇体が浮上するから、抵抗評価時に静止時の船の長さを評価メジャーに使用するのは合理的でないとして、揚力に関係する艇の排水容積▽の1/3乗を採用した容積フルード数Fn▽=v/√g▽1/3が使用されることが多い。
滑走艇はラストハンプを超えると、トランサム後部にあった渦が消え、後流水面がフェアな凹面のとなり、更に高速になると航走トリムの増加は緩やか又は減少に転じ、船尾の沈下もなくなる。
参考までに、高速艇の速力と航走波形のパターンを図2−9に示す。
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図2−9 高速艇の速力と波形
2.5 高速船とは
1996(平成8)年に発効した高速船構造基準では、比較的低速のものも高速船扱いとなるが(後述)、一般には更に高速な速力域のものを高速船と言う。然しどの速力以上のものを高速船とするかについては、それぞれの見解に応じた定義がなされており、必ずしも統一されたものはない。ただし概括的に言えば、ラストハンプを超え、半滑走或いは滑走型となるものを高速船と定義するのが一般的である。定義の例を以下に示す。
●丹羽誠一氏(新高速艇工学)
ラストハンプを超え、半滑走状態のもの。
ラストハンプのフルード数は、F、=v/√gLWL=0.56であるから、例えば次のようになる。
LWL(m) |
10 |
20 |
30 |
40 |
50 |
V(kt) |
10.8 |
15.2 |
18.7 |
21.6 |
24.1 |
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●大隅三彦氏(中速艇の一設計法)
高速艇は滑走型で、旅客船等の業務艇は半滑走型と定義し、これをvs/√LWL=3〜6と定義。
LWL(m) |
10 |
20 |
30 |
40 |
50 |
V(kt) |
9.5〜19.0 |
13.4〜26.8 |
16.4〜32.8 |
19.0〜37.9 |
21.2〜42.4 |
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●(社)日本旅客船協会
航海速力22kt以上の旅客船を高速旅客船とする。
●高速船構造基準
V≧3.7×▽0.1667(m/sec)
V:満載状態での最強速力
▽:満載排水容積(m3)
旅客船の場合のLWL〜△a(満載排水量)の目安を図2−10に示す。
参考までに排水量型船と高速艇の抵抗カーブの特徴を図2−11に示す。
図2−11 排水量型船と高速艇の抵抗カーブの特徴
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