4. ISO/TC108/SC 2/WG 2の審議内容
4.1 議長の欠席と代行について
会議の冒頭Mr. Olssonから、Mr. TeschがWG2の議長として承認されたが、今回の会議は都合により出席できないとの報告があった。そして、今回の会議は、Mr. Teschによって提案された議題に従って、Mr. Olssonが議長として議事進行を行うことが提案され、出席者全員により了承された。
出席者全員の自己紹介を行った後、議事が開始された。
4.2 ミンデン会議 議題(N 227:添付資料 2)の承認
特に異議なく承認された。
4.3 前回ベルリン会議 議事録(N 225:添付資料 4)の確認
前回ベルリン会議の議事録は、出席者にMr. Palle Voss(DK)を追加することで、特に異議なく確認された。SC 2事務局のMr. Hansenから、今回の会議に対する要望が述べられた。ベルリン会議で提出されたN 222“Mechanical vibration and shock - Guide for the measurement, evaluation, and reporting of global structural vibration in merchant ships”を、Mr. TeshがNWIP用として今回の会議までに修正して準備することになっていたが未提出である。今回の会議でWG 2として内容を審議してほしい。N 352“Mechanical vibration - Vibratory noise measurements and acceptance criteria of shipboard equipment”は、ANSIのDraftがNWIPに添付されており、審議がやり易くなっている。期限内に審議を終了して作業を進めてほしい。ISO 6954の改定作業が、大幅に遅れた(10数年)ことから、今回の要望が出されたものと思われる。
4.4 ISO 6954-2000の運用状況について
2000年12月15日に発効されたISO 6954(添付資料10)が配布され、各国の対応及び取り扱いについて確認した。日本では、当該整合規格であるJIS F 0907:1990(船舶居住区画の振動評価のための基準)の改正作業が本年3月に終了し、発行予定であることを紹介した。Mr. Bobanacからは、スエーデン、デンマーク及び韓国では、新ISOを適用している。また、スエーデンの船主から2mm/secの要求が出されたが、新 ISO 6954 での計測結果と旧 ISO 6954 での計測結果の関係が不明であり、この要求の程度を判断するのが難しい。また、新ISOの計測は簡単であるが、評価が難しく、計測データを再分析して内容を検討しなければならない。パソコンで計測データを処理するソフトを作成して対応しているとの報告があった。Mr. Morelからは、新ISOの要求値は計測結果よりも高いレベルであることが多い。しかし、船内の位置毎に適用する要求値を船主と造船所で設定しなければならないとの報告があった。
今回は、新議長のMr. Teschが欠席のために審議ができなかったが、前回ベルリン会議でMr. Teschが提案したように、同じ計測データをもとに新ISOと旧ISOを比較する作業は必要であり、今後も議論を行うこととなった。また、Mr. Bobanacから、新ISOのガイドラインについて、人間の居住性に関する感覚と整合を図る必要性が提案された。新ISOでの計測データと乗組員の判断(complain and no-complain)や他の居住性に関する評価と検討してはどうかとの提案があった。今後、審議を継続することとなった。
新ISOの運用については、計測値とその評価に関するデータ(実績)が不十分であるためにガイドラインの値や適用区画の問題を含めてこれから議論が行われるものと思われる。この問題に対して、日本が指導的な役割を果たすためには、日本の造船所を中心にデータ収集を行い、問題の有無を明らかににすると共に技術的な側面からも改正に向けてのアクションを起こす必要があると考える。
4.5 SC 2/WG 2のNew Work Itemについての審議(添付資料2及び25)
前回のベルリン会議では、ISO 4867(Code for the measurement and reporting of shipboard vibration data)及びISO 4868(Code for the measurement and reporting of local vibration data of ship structures and equipment)の改正とSC 2/WG 2/N 222(Mechanical vibration and shock - Guide for the measurement, evaluation, and reporting of global structural vibration in merchant ships)を統合してNew Work Item(新規標準化項目)として提案することになっていた。しかし、今回、N 222を修正したDraftは提出されなかった。
最初に、Mr. Bobanacの提案により、船舶の振動計測に関する規格を整理して、一つのISO規格シリーズとしてまとめることに関して議論を行った。議論の結果、既に改定作業を終了しているISO 6954-2000を含めて、各規格の構成を統一した5つの規格として整備していくことに決定した。SC 2/WG 2の会議では、規格の概略構成だけが決定された。その後に開催されたSC 2会議(5月10日)において、具体的な名称も含めて規格の構成案がSC 2議長のMr. Olssonから提案され、Work ItemのAWI(NWIPが可決されて、WDがみ作成の段階)20283“Vibratory Acceleration Measurements for Shipboard Equipment”を、以下のように5つのパートに変更することが決定された。
Part 1 General
Part 2 Mechanical vibration - Guide for the measurement, evaluation, and reporting of global structural vibration in merchant ships (SC 2/WG 2 N 222 + ISO 4867 + ISO 4868)
Part 3 Mechanical vibration - Vibratory Acceleration measurements and acceptance criteria of shipboard equipment (SC 2/WG 2 N 228)
Part 4 Mechanical Vibration - Guidelines for the Measurement and Evaluation of Ship Propulsion Machinery Vibration (SC 2/WG 2 N 223)
Part 5 (future revision of ISO 6954:2001)
Part 1, 2, 4をPreliminary Work Item (PWI)として登録する。Part 1を、2002年11月末までに、New Work Item Proposalとして提出、Part 2を、6ヶ月以内に、New Work Item Proposalとして提出、Part 4を、2003年1月末までに、New Work Item Proposalとして提出する。また、Part 3のFirst CD(Committee Draft)を2002年11月末までに提出する。
4.6 |
SC 2/WG 2/N 222(Guide for the measurement, evaluation, and reporting of global structural vibration in merchant ships)の審議(添付資料 5 、8及び11) |
今回は、新議長のMr. Teschが欠席のために、N 222を修正したDraftは提出されなかった。Mr. Teschから事前に配布されたLog file for ISO/TC108/SC 2/WG 2( 添付資料5)には、該当する資料N 226が記載されていたが、確認できなかった。N 222と前回のベルリン会議で配布した日本コメント(N 224: 添付資料8)をもとに、審議を行った。日本コメントの各項目について内容を確認しながら審議を進めた後、N 222のDraft案の内容の審議を行った。審議結果をもとに、Mr. KilcullenがN 222を修正してDraft案を作成する。Daft 案を議長のMr. Teschに提出して、WG 2のメンバーの意見を取り入れる。6ヶ月以内に、New Work Item Proposal(NWIP)として提出して、SC 2で投票を行うこととなった。
審議の結果、日本コメントを以下のような取り扱いとして、N 222の内容を修正することとなった。
(1)ISO 4867とISO 4868の改正を含めた新しい規格を作成するので、現行のISO 4867及びISO 4868との整合性を取ることは可能である。
(2)船舶の振動計測に関するISO規格を4.5の議論をもとに整備する。この規格は、Global structural vibration in merchant shipsに関するもの(SC 2/WG 2 N 222 +I SO 4867 + ISO 4868)とし、ISO 6954-2000(Habitability)とは異なる規格とする。
(3)「船体構造の振動と機器の振動の評価を個別に行う」、「疲労強度の評価は、溶接継ぎ手などの構造形状によって影響されるので、構造の振動だけでは評価できない」のコメントについては了解する。Draft案作成時に考慮する。
(4)「振動計測条件として、1/2出力から全出力までの振動を計測する必要はない」のコメントについても了解する。Draft案作成時に考慮する。
(5)振動許容値の決め方などの詳細についての議論は必要である。振動許容値(Acceptance criteria)は本文中には記載しない。全てANNEXとする。
また、Mr. Morelから、適用船として100m以上の船舶としているが、IACSでは65m以上となっているのではないかとの意見があり、Draft案作成時に100mの根拠を調査することとなった。また、High Speed Craftを除外することが提案され、Draft案にはその旨を記載することとした。
船舶の振動に関するISO規格の全体像が決定されたこと、N 222の資料が前回のベルリン会議から変更されていないこともあり、N 222の内容の大枠だけの審議となった。具体的な項目についての詳細な審議については、NWIPとして提出される資料をもとにして行うとの認識であった。振動許容値の審議を十分に行うことができなかったが、振動許容値を本文中には記載しないことが決定されたことは、今後の審議を進める上で重要な結論である。振動計測に関する規格については、計測方法と振動許容値を別々に議論するように提案した結果が認められたものである。他の規格についても、計測方法を本文として、許容値をANNEXとすることで統一したフォーマットを採用することとなった。
4.7 |
SC 2/WG 2/N 223(Guidelines for the Measurement and Evaluation of Ship Propulsion Machinery Vibration)の審議(添付資料12) |
前回のベルリン会議に提出された資料の改定版がUSA委員から提出され、内容について審議を行った。日本意見として、推進機関の振動に関しては、船級協会規則との整合を図る必要があるので、WG2で提案内容を十分審議する必要があることを主張した。また、ISO規格が発行されても、船級協会規則と乖離したものであれば、実際には利用されないものとなることを主張した。前述した議論で、船舶の振動に関する規格の全体構造が決定されたために、本提案についても議論を行い、今回の議論を考慮してNWIPとして提案することとなった。N 223の内容についての審議を始めたが、会議期間中には十分な時間を取ることができなかった。この結果、大枠だけの方針を決定して、Mr. Taddeoが、今回の議論を考慮してN 223を修正することとなった。2003年1月末までにNWIPとして提出して、SC 2で投票を行うこととなった。
審議での決定事項及び議論は、以下の通りである。
(1)Calculationに関する項目は、全てANNEXとする。
(2)Calculationの内容については、各船級協会規則との整合性を図る。USA委員に質問した結果、本提案内容は、ABSと整合しているとの回答であった。
(3)ANSIのDraftを資料としているために、不要な語彙の定義が多く見られるので、不要なものを整理する。
(4)本提案内容には、WG 1などの他のWGの審議と関連するものがあるので、調査を行う。
N 223の資料について、読み合わせをしながら各項目の審議を進めたために、審議時間が非常に長くなった。このために、会議日程を半日追加したが、全体の1/3の項目しか審議できなかった。その場で、内容を判断して、意見を述べたり改定提案を行うのは非常に難しい対応であった。また、今回の会議には、提案元のUSAから4名出席しており、フランス及びクロアチアの委員と共同して対応するのも厳しい状況であった。フランス委員は、USAの一方的な提案(ANSIの内容)に対して、日本と同じように提案に反対の立場の対応であった。クロアチア委員は、日本とフランスの意見とUSAの意見の調整を行うような対応であった。的確な対応を行うためには、できるだけ早い時期に、N 223の改定案を入手して、日本側の意見を集約しておく必要がある。
4.8 |
SC 2/N 228(Vibratory acceleration measurements and acceptance criteria of shipboard equipment(ISO Work Item 20283))について(添付資料13及び26) |
New Work Item Proposalの投票結果によって、正式にISO Work Item 20283として登録された。前回のベルリン会議の資料(SC 2/N 352)を修正したfirst CD案(N 228)の審議を行った。正式な規格名称をVibratory acceleration measurements and acceptance criteria of shipboard equipmentに変更した。規格の構成を統一することを主張した結果、許容値(Structureborne sound acceptance criteria)をANNEXとすることとなった。
審議の最初に、日本意見として、本規格に提案されているような音響域の振動(Structureborne sound)の計測データを、商船において、統一された計測方法で計測しているデータはない。今回の規格がどのような分野で要求されているのか、また、振動許容値はどのようなデータを元に決定されたものかを示すように要求した。提案元のUSA委員(Mr. Taddeo)から、US-NAVY用に作成したものであるとの回答があった。
Mr. Morelからは、「要求が厳しくて商船への適用が難しいのではないか」、「造船所と船主が、この規格を満足するのは難しいのではないか」などの意見が出された。また、USAからの一方的な提案を、強引に一般商船に適用することに対して、反対の立場であることを述べた。Mr. Bobanacからは、本提案内容に関しては、技術的な面から検討して、商船への適用を考えるべきであるとの提案があった。また、Mr. Olssonからは、本提案には、機器の振動に関する内容も含まれているので、SC 2/WG 1などの他のWG の活動状況との調整が必要であるとの提案があり、Mr. KukkがWG 1に出席しているので、情報を調査することとなった。
本提案資料についても、読み合わせをしながら各項目の審議を進めたために、全ての項目に対する審議ができなかった。許容値(Structureborne sound acceptance criteria)をANNEXとすることだけが決定され、詳細については、Mr. Taddeoが今回の議論を考慮して資料N228を修正することとなった。2002年11月末までに、修正資料を議長に提出して、WG 2メンバーに回覧することとなった。
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