3. PLiBとRDLの概要
STEPの仕組みを用いて、プラントや船舶の機関部の部品データあるいは、抵抗・コンデンサといった電子部品などの部品情報若しくは部品表を現そうとすると、product
masterの構造とそれを記述するpropertyによって表現することになり、それは決して不可能ではないが、非常に重装備であり、アプリケーションとしては得る所も少ない。この問題を解決する方法として、現在2つの異なった方法がとられている。その一つは、AP221やISO15926
Oil and Gas(POSC/CAESAR)に見られるReference Data Library(Class LibraryまたはSTEP Libraryとも呼ばれている)によるもので、欧州勢のプラント産業を中心にした大々的な活動である。今一つの取組は旧来AP226機関部で採用されようとしているISO
13584 Parts Library(通称PLiB)とSTEPをマイグレーションするものである。この両者を比較した場合、Reference Data Libraryの方がより詳細な記述には適していると思われるが、機器の種類が増えて来るにつれて、それに対応するCLASSが増大して、その追加開発と保守に多大の時間と経費を要すると判断されている。事実AP221やPOSC/CAESARでは、この保守が常に話題になっている様だ。
PLiBは、STEPと同じくTC184/SC4の配下のプロジェクトで、Express言語を用いるなど類似の技術もあるが、アーキテクチャと方法論の点で両者は異なっていて、結果として双方が生成したデータは、そのままでは相互利用出来る形にはなってない。これを解決する方法として、現在主流になっているのが、PLiBが有するBSU Basic Semantic Unitと称するコードを活用して、STEP側とPLIB側の双方で、参照し合う仕組みである。
PLiBとは、ISO 13584 Parts libraryを指し本来電子カタログを表現するのを目的に開発されたものである。ここではそのディクショナリを対象とし、それは規格の第42部Methodology
for structuring part families注1に規定されているものである。製品の特徴がBSU
Basic Semantics Unitと呼ばれるユニークなコードとその値の対で表現される。BSUには、製品が何であるかを示すCLASS BSUとその製品の属性を示すProperty
BSUさらにそのディクショナリを供給しているSupplier BSUの3ケからなっている(図5参照)。ここにProperty BSUは1ケの製品に対して複数個のものからなる。一方これらの表現は階層化され、上位の属性Propertyは下位が継承するという典型的な階層モデルを成している。図6にクラス階層図の一例を、図7に第42部のスキーマをExpress−Gにて書き表したものを示す。
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図5 Basic Semantic Unit
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図6 PLiBクラス階層図
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ISO 13584−42:1995, Industrial automation systems and integration―Parts library―Part42: Methodology for structuring part families. |
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図7 ISO 13584-42のEXPRESSスキーマ図
RDLとは、Reference Data Libraryを意味していて、POSC/CAESARのプロジェクトで実証されたもので、現在は主としてISO
15926 Oil and Gasのプロトコルで、改良が加えられているものである。またISO10303−221のプラントのプロトコルでも利用されることになっている。歴史的にはAP221は独自にLibraryの開発を進めていたが、ハーモナイズの立場からも開発資源の立場からも強い要請を受けて、両者が統合していく方向が確認されている。なお、AP221側の立場では旧来STEP
Libraryという表現が主流であったこともあり、今日でもSTEPlibと呼ばれる場合が多く、両者には若干仕様の差異があるようだが、本質的には同じであり何れは統合されるものと考えられる。PLiBが製品カタログの表現を前面に出しているのに対して、RDLではむしろ製品モデリングの概念が強いのが特徴である。つまりExpress言語によるエンティティ定義による表現に対して、オブジェクトとオブジェクトの関連を記述することによって、製品の表現を実現しようというものであり、その意味においてPLiBとは大きく異なるといってよい。逆にいうならPLiBは、比較的開発し易くまた利用者にも分かり易いのに対して、RDLは製品モデリングそのものに帰着する故に、開発にはそれなりの見識と知見が必須であり、このために利用者から見てそれほど理解し易いものではないといえよう。
先に述べたように、RDLはOil and Gasを中心に欧州のプラント企業などが強く関わっていることもあり、欧州の企業や軍およびサプライヤもこれをサポートする(せざるを得ない)方向にあるのは事実のようである。例えばノルウェーの船級協会DNVはRDLをベースに社内システムの開発を進めているようである。
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