2. AP227によるShip Mechanical Systemsの表現について
2.1 Ship Mechanical SystemsとAP227の経緯
AP226 Ship Mechanical Systemsは、英国LRのZabi Bazar氏を中心に開発が進められ2002年4月にCD投票に入ったが、この1〜2年位前からLRによる資源の供給がままならぬ状態になり、非常に苦戦していた。結果としてCDドキュメント、特にディクショナリの完成度は甚だ良くなく、またCDの時点ではDIS、ISと継続していけるだけのファイナンスの裏付けがない状態に陥った。
一方、我が国は船舶のAPの中でも機関部が最も現実のビジネス現場に近いという判断から、ここ数年力を入れて来た。初期よりマッピングの開発ワークショップへの参加やプロトタイプの開発などに取り組み、ドキュメントの解読も最も進んでいた。その様な背景からCD投票に当たっては、ディクショナリの部分が現実にそぐわないことを指摘し、この個所をformativeからinformativeにすべきと主張した。
これに対してヨーロッパ勢は、(ファイナンスの枯渇を最大の原因として)これ以上現行のAP226の開発を継続する事は出来ないという判断やRDLを使いたいという半ば政治的な判断注1から、AP226開発の中止とPLiBからRDLへの変更を持ち掛けてきた。そしてその解決策としてAP227 Plant spatial configurationの一部として組み込むことを主張し、結果的に米国がこれに応じたことで、方向性は決定的なものとなった。日本は規格開発に直接関与するだけの人・資金的な裏付けを持たない現実に基づいてこの方向転換に従わざるを得ない状況になった。
注1: |
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RDL Reference Data Libraryは、POSC/CAESARのプロジェクトに源を発し、ISO 15926
Oil and Gasのプロトコルの主体を成すものである。この開発に当たってはノルウェーが中心になり、多くの資源を投下してきている。これらの理由もあって、DNVの社内システムでは、RDLを用いた開発が進められていると聞く。
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2.2 Ship Mechanical Systemsの要求事項
Ship Mechanical Systemsの要求事項をUOF単位で比べると図3の様になる。双方でUOFの捉え方にかなりの差異があるので両者を単純に比較する事は難しいが、ここで網掛けを加えたものについては、本来UOFというよりもマッピングの過程で生まれるものなので特にカバーされる必要はない(敢えていわなくても必ずマッピングの過程で発生するものである)。dictionary_items_and_definitionsとlibrary_referenceはPLiBを参照するためのものであるので、現存のAP227には存在してなく新たに付け加える必要がある。External_referenceは図面や船級の規格書などを参照する為のものであり、上記のライブラリとは直接の関係は持たない。これに相当するものはAP227の既存ドキュメントからは伺えないが一般的には考慮されるべきものと考えられる。items_and_definitionは、上位構造を意味しAP227に限らず全てのSTEP構造には装備されているもので、AP227では、plant_item_characterizationなどがそれに相当する。主要な目的であるmechanical_product_representationとmechanical_product_structureについては、1:1の対応は見えないが、connection_UoF、connector_UoF、piping_component_UoFなどの一部またはその拡張として関係付けられる事になるだろう。schedule_and_event,
Shipsは、本来船の運航や保全に関するものであり、現行のAP227では、賄えないのではないかと考えられる。
図3 AP227とAP226のUOF関連図
No |
AP227ed2 UOF |
No |
AP226 CD |
1 |
associative_schematics UoF |
1 |
dictionary_items_and_definitions |
2 |
cableway_component_characterization
UoF |
2 |
engineering_measure_with_units |
3 |
change_information UoF |
3 |
external_references |
4 |
connection UoF |
4 |
items_and_definitions |
5 |
connector UoF |
5 |
library_references |
6 |
hvac_component_characterization
UoF |
6 |
mechanical_product_representation |
7 |
hvac_system_functional_characterization
UoF |
7 |
mechanical_product_structures |
8 |
hybrid_shape_representation
UoF |
8 |
part41_resources |
9 |
piping_component_characterization
UoF |
9 |
part42_resources |
10 |
piping_inspection UoF |
10 |
schedule_and_events |
11 |
piping_system_functional_characterization
UoF |
11 |
Ships |
12 |
plant_characterization UoF |
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13 |
plant_csg_shape_representation
UoF |
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14 |
plant_item_characterization
UoF |
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15 |
shape UoF |
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16 |
site_characterization UoF |
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先に開かれたワークショップでは、これらShip Mechanical Systemsの要件を満たす為には現存のAP227に、新たに3ケの機能単位を追加することで、達成できるという見込みが報告されているが、以上の様に考えてくると、Ship Mechanical Systemsの全ての機能を組込むのは、かなり難解な作業を伴うのではないかと思われる。本件については、現在鋭意作業中であり、近い内にその結果が公表されるであろう。なお、主な機能である舶用機器の表現には、旧来AP226で取上げられてきたISO 13584 Parts Library(通称PliB)によるものから、ISO 10303−221やISO 15926 (Oil and Gas) で使われているReference Data Library(通称RDF)によるものへ置換される方向にある。ただ米国は、PLiBを範疇にいれており、双方を使える仕組みを求められるものと判断される。
2.3 Ship Mechanical Systemの要求事項の実現
下記は現在考えられている、AP227によるRDLを外部参照する基本の仕組みである。この様なメカニズムをAP227に付加することによって、AP227の本来のスキーマを使ってShip Mechanical Systemsを実現しようとしている。原則的にはこの仕組みに何ら問題点はない様に思えるが、既存のAP227のスキーマは、必ずしもこの様な拡張には向いていないと判断される。それは何といっても主体が「配管」にある為である。
4章にてRDLについて詳説しているが、この様な外部ライブラリを上手く使うには、本体側のスキーマが相当しっかり(それに合うようなもの)している必要があると考える。
(拡大画面:34KB) |
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図4 外部参照メカニズムの概念図
表1 外部参照を示すPart21ファイルの例
# |
15=(EQUIPMENT($,'pump','steam',$,$,'98.6 degrees','A','B')INLINE_EQUIPMENT()
PIPING_ SYSTEM_COMPONENT('ASTMG11-88','ECTFE','steam',MEASURE_ WITH_UNIT ('.125
inches'), ()) PLANNED_PHYSICAL_PLANT_ITEM($,'PMP- 00500',$)PLANT_ITEM($,$,'PP1-
1','resolved',(),(),()) PLANT_ITEM_INSTANCE()); |
# |
16= PHYSICAL_DESIGN_VIEW(#15); #17= PLANT_ITEM_SHAPE(.IGNORE.,$,#15); |
# |
18=(DETAIL_SHAPE()PLANT_CSG_SHAPE_REPRESENTATION()SHAPE_REPRESENTATION(#17)); |
/* External classification */
#20= EXTERNAL_CLASSIFICATION('Pump','www.epistle.ws/RDL/rotating_equipment.rdf
#SteamPump','The classification for steam pumps'(#15)); |
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