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6.2. フィリピンの旅客船市場
6.2.1. 旅客船市場の概要
 フィリピン海運業の政策決定機関であるMARINA(Maritime Industry Authority)に登録されている3GT以上の内航船舶(漁船を除く全船舶)は、1999年12月時点で5,694隻、総トン数155万3,600トンであった。このうち上位10社で、隻数の6.7%(379隻)、総トン数の39.8%(61万8,000トン)を占めている。また、全登録船舶のうち、旅客船は307隻(5.4%)、貨客船は1,439隻(25.3%)となっている11。旅客数は、図10のとおりで、1991年の3,172万人から2000年の4,437万人に10年間で40%の伸びを示している。
 
図10 フィリピンにおける船舶旅客数の推移
出所: Philippine Domestic Shipping Industry:State of Competition and Market Structure by Philippine APEC Study Center Network(PASCN Discussion Paper No.2002−04)
 
 
11 MARINAホームページ(www.marina.gov.ph
 
 旅客船航路は、主要航路(52路線)、準主要航路(46路線)、その他の航路(214路線)に分けられる。主要航路、準主要航路を運行している船社は37社あるが、そのうち5社による寡占状態となっている。
 
 上位5社は、上から順に、Negros Navigation Company;WG&A,Sulpicio Lines,Philippines Fast Ferry Corporation(PFFC),Cebu Ferries Corporationで、この5社で全旅客数の90%を占める。フィリピンでは、ここ数年、海運業の規制緩和がすすみ、同時に船社の再編もすすんでいる。上位5社のうち、2社は企業合併によって生まれたものである。WG&A社は1996年のWilliam Lincs Inc.、Carlos A.Gothong Lines,Inc.、Aboitiz Shipping Corpの合併によるもの、PFFCは1998年のセブのUniversal Aboitiz,Inc.とNegros Navigation Companyの子会社でBacolodをベースとするSea Angels Ferry Corporationの合併によるものである。また、Cebu Ferry Corporationは、1996年にWG&A社の子会社として設立された。Negros Navigation CompanyとSulpicio Linesは老舗の船社である。表8にフィリピンの旅客船市場上位5社の概要を示す。
 
 フィリピンにおける高速旅客船の導入に積極的に取り組んできたのは、このうちPFFCとCebu Ferries Corporationである。とくに、PFFC社は、フィリピンの高速船事業の60%を占め、主にセブ地域にて、高速船17隻を就航している。
 
表8 フィリピンの旅客船市場上位5社の概要
順位 会社名 内航海運業界全体に占める順位 所有船舶数* 資本金(千ペソ)
1 Negros Navigation Co.,Inc. 1 22 3,637,635
2 WG&APhils.,Inc. 2 29 1,496,599
3 Sulpicio Lines.,Inc. 5 31 213,252
4 Philippines Fast Ferry Corp. 8 105,116
5 Cebu Ferries Corp. 64 6,000
* 所有船舶数は、旅客船のみでなく、船舶全体。
出所: MARINAホームページ
 
6.2.2. フィリピンにおける船舶輸入
 MARINAの資料によると、2000年の船舶購入隻数(漁船を含む)は、107隻で、そのうち57.8%の63隻は輸入船である。その内訳は発表されていないが、高速船市場で優位を占めるPFFC社、Cebu Ferries Corporationの両社がAboitizのグループ会社で、親会社のAboitizグループはセブで造船所を運営していることもあり、高速船の輸入は少ないものとみられる。
 
 フィリピンの通関統計によると、1998年から2000年の3年間の総輸入額は7,132万USドルであるが、そのうち35.7%は漁船(2,549万USドル)である。旅客/貨客/貨物船(統計分類コード7932701&7932709)は、全体の6.8%の485万USドルで、主に500GT以上の大型船は中国、台湾から、その他は日本からの輸入が多くなっている。また、オーストラリアからの輸入は、カヌー、ヨット、スポーツ・レジャー船がほとんどとなっている。図11にフィリピンにおける船種別船舶輸入を、表9にフィリピンにおける貨物船、旅客船、貨客船の輸入統計を示す。
 
図11 フィリピンの船種別船舶輸入(1998〜2000年計)
出所:フィリピン通関統計
 
表9 フィリピンにおける貨物・旅客・貨客船の輸入
輸入コード  7932701 500GT以上の
貨物・旅客・貨客船 
7932709 その他の
貨物・旅客・貨客船 
合計  シェア 
国 
中国 輸入額(CIF US$) 1,031,232   1,031,232 21.3%
隻数 2   2 10.0%
Kg 1,192,460   1,192,460 11.5%
台湾 輸入額(CIF US$) 1,390,000   1,390,000 28.6%
隻数 1   1 5.0%
Kg 4,498,000   4,498,000 43.4%
日本 輸入額(CIF US$) 150,733 1,949,800 2,100,533 43.3%
隻数 1 12 13 65.0%
Kg 1,572,000 2,391,480 3,963,480 38.2%
韓国 輸入額(CIF US$)   70,017 70,017 1.4%
隻数   1 1 5.0%
Kg   196,920 196,920 1.9%
シンガポール 輸入額(CIF US$)   200,000 200,000 4.1%
隻数   2 2 10.0%
Kg   516,000 516,000 5.0%
スイス 輸入額(CIF US$)   60,824 60,824 1.3%
隻数   1 1 5.0%
Kg   5,000 5,000 0.0%
合 計 輸入額(CIF US$) 2,571,965 2,280,641 4,852,606 100.0%
隻数 4 16 20 100.0%
Kg 7,262,460 3,109,400 10,371,860 100.0%
出所: フィリピン通関統計







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