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2)短距離航路
 インドネシア全体で短距離旅客船が寄港する港は137港ある(別添10)。このうちの運輸省陸運総局で短距離主要航路と定義されている35航路は別添11のとおりである。短距離主要航路のうち、メラク(西ジャワ)〜バカウニ(スマトラ)、ウジュン(東ジャワ)〜カマル(マヅーラ島)、クタパン(東ジャワ)〜ギリマヌク(バリ島)が短距離3大航路である。これらルートに就航している船舶は別添12(1)〜(3)のとおり。
 
 また、インドネシアの短距離旅客航路の中には、パイオニアシッピングと呼ばれるいわゆる離島航路が多く、21の地方港を起点として49の航路があり、350DWT型、500DWT型、750DWT型の貨客船を中心に運航されている。貨客船とはいえ中古貨物船の甲板にポータブルの居室スペースとオーニングを設けたタイプの一時しのぎの船舶が多い現状である。航空路のない島への生活物資と人の運搬を担っているため、運航費の60%以上を政府の補助金が補っている。船舶建造への政府資金投入はこれまで行なわれなかったが、2001年から石油代金への政府の補助金を停止した事による財源の一部を利用して、パイオニア船の政府による建造、地方政府への無償貸与が行なわれるようになった。パイオニア航路の概要は別添13のとおり。
 
 短距離旅客船社は業界団体(GAPASDAF;Gabungan Pengusaha Angkutan Sungai Danau dan Feri)を組織しており、そのメンバーは25社である。短距離旅客船事業では、国営のPT.ASDP社が最大で、民間大手では、PT.Jembatan Madura、PT.Dhama Lautan、PT.Putera Master SP、PT.Jemla Ferry、PT.Windu Karsaなどがある。
 
GAPASDAFの概要:
構成メンバー:25社
主要船社 運航船舶数
1. PT.ASDP :84隻
(チャーター運航船 :11隻)を加えた隻数=95隻(=50.8%)
2. PT.Jembatan Madura :24隻(=12.8%)
3. PT.Dharma Lautan :15隻(=8%)
4. PT.Putera Master SP :14隻(=7.5%)
5. PT.Jemla Ferry :10隻(=5.3%)
6. 2隻を所有する船社5社 :10隻
7. 1隻を所有する船社19社 :19隻
合計:187隻
 
 PT.ASDFはRO-RO船、純客船、数隻の高速小型船あわせて95隻を運航している。このうち84隻は運輸省陸運総局が所有しており、11隻は民間オーナーからのチャーター又は共同運航の形式を取っている。
 
GAPASDAF船隊の船型構成
 GAPASDAFのメンバーが所有する船隊を規模別にみると、100〜200人定員の500GT以下の船舶が全体の65%を占め、一方1,000GT以上は僅かに15%である。GAPASDAFメンバー所有の船体の内訳を表7に示す。
 
表7 GAPASDAFメンバー所有の船隊
<100GT 34隻 501〜600GT 19隻 1001〜2000GT 7隻
101〜200GT 27隻 601〜700GT 9隻 2001〜3000GT 2隻
201〜300GT 23隻 701〜800GT 2隻 3001〜4000GT 7隻
301〜400GT 12隻 801〜900GT 6隻 4001〜5000GT 5隻
401〜500GT 26隻 901〜1000GT 1隻 5001〜6000GT 6隻
        6001〜7000GT 1隻
小計 122隻 小計 37隻 小計 28隻
        合計 187隻
 
短距離旅客船業の問題点
 3大航路及びその他の航路でも常に定員を越える旅客を運んでいるのが実情である。旅客の需要予測については最近のものは無いが、1993年に陸運総局とJICAが行なった「全国旅客船ネットワーク開発調査」がある。この調査では「1990年から2010年の20年間でRO−RO船及び旅客船の総需要は3倍に増加する」と予測している。この調査結果について、現在、運輸関係者は、「1997年の経済危機により旅客需要は一時的に減退したが、長期的には、20年間で3倍のペースで需要は伸びている」とみている。しかし、その一方で、旅客船の供給は低いレベルに留まっている。そのため、船社は、効率が低下した老齢船を依然として就航させ、大型中古旅客船を採用することで新たなニーズに対応しているのが実情である。短距離旅客船業界のかかる問題点をまとめると、下記のとおりとなる。
 
(1)経済情勢
 インドネシアは1997年の経済危機からの立ち直りの兆しをみせてはいるものの、そのスピードは鈍いのが実情である。旅客輸送の運賃は2002年時点で、1997年のレベルから多くは50%〜60%上昇しているが、国内燃料油価格の高騰とインフレで相殺され、実質の利益増加に繋がっていない。「実質運賃は経済危機以前のレベルのまま」と言うのが業界の見解である。
 
(2)船舶金融に不利な国内システム
 旅客船業界の大方は、実質運賃を上昇させ収入増加を図るためには、老齢船の新船への代替とサービスの向上が必要である事を認識している。それを妨げている大きな要因が高金利である。国内産業銀行は、一般に海運や造船と言った海事産業を優良産業と見ていない。このため一般的な海運企業への貸し出し金利は15〜20%と非常に高い水準にある。短距離旅客船業は着実な現金収入があり、このため金利も他の海運業に較べれば低いと言われている。旅客船社は「10%の金利なら対応出来る」と言う。それにも関わらず、国内産業銀行からの融資は非常に限られたものに限定されているのが実情である。
 
 海外金融の場合、5〜6%の低金利が利用できるが、インドネシア旅客船業はこの低利海外金融を享受できる環境に無い。その理由は業界の信用が低いために海外銀行が融資しようとしない事、また、インドネシア旅客船業界にとってもUSドル建ての融資を受けることは、為替リスクが高い。
 
 旅客船業に限らず、一般にインドネシアヘの海外からの船舶金融は他国に較べて低い。その最大の要因は、インドネシアが「国際抵当権条約を批准していないために」船舶への適当な抵当権の設定が難しい事、このために海外融資機関の融資が難しい環境にある事である。
 
(3)劣悪な船舶保守管理
 短距離旅客船は、一般に稼働効率が非常に低い。短距離3大航路のいずれも、就航船舶の何割かが故障して稼働していない状態が恒常化している。また、稼働中の船舶でも定格速力を維持できる船は珍しいと言う状況にある。これは、船舶の老朽化より、劣悪な船舶保守管理が最大の要因である。近代的な船舶保守管理の採用によってこのような状況が改善されない限り、例え新造船を投入しても短期間の内に稼働効率が低下する可能性が高い。
 
 以下にメラク〜バカウニ航路で見た劣悪な船舶保守管理の典型例を示す。
 
◆低負荷運転
 一般に7〜8ノットで運航されている船が大部分である。これは以下の要因で主機回数を定格の70%以下に保持せざるを得ないためである。
a)排気管のフレキシブルジョイントの破損によるガス漏れ
b)シリンダーライナーの磨耗過大
c)付属温度計、圧力計、流量計の破損(運転状況が把握出来ないため安全策をとる)
d)L.O.清浄機の故障
e)定期整備の不履行
◆発電原動機の不調
a)ガバナーモーターの故障
b)温度計、圧力計の破損
c)交換予備品の欠如
◆ポンプ類の予備品欠如
◆甲板の異常腐食
 
6.1.2. インドネシアの船舶輸入
 インドネシアにおける船舶輸入は、スハルト政権下で科学技術大臣をつとめ、スハルト政権後に大統領に就任したハビビ氏がドイツ留学していたこともあり、ドイツの造船所との関係が強い。PT. PELNI社の1,000人乗り以上の純旅客船は、すべてドイツで建造されたものである。最近では、シンガポールがシェアを伸ばしているものの、2002年にはドイツの政府銀行が、インドネシアの旅客船建造プロジェクトに対する8,180万ユーロ(7,070万USドル)のソフトローンを認可し、インドネシアの運輸省はドイツのMeyerwerft造船所に船舶の建造を発注した。このプロジェクトは、3,000人乗りの旅客船を建造するもので、完成は2004年の予定、船舶はPT.PELNIが運航する。ドイツの政府銀行は、すでにこれまで、PT.PELNI社の旅客船24隻と、PT.ASDP社の貨物船5隻にファイナンスを提供している。また、Meyerwerft造船所は、これまでPT. PELNIに旅客船22隻を納入している10
 
 なお、インドネシアの貿易統計(World Trade Atlas CD Rom Database)によると、1998年から2000年の3年間におけるインドネシアの船舶輸入は13億3,142万USドルで、そのうち、旅客船・貨物船は12.5%の1億6,5644万USドルである。オーストラリアからの輸入は、2,875万USドルで、そのほとんどがクルーズ船・遊覧船である。図9に、インドネシアの国別船舶輸入シェアを示す。
 
図9 1998−2000年のインドネシアの船舶輸入(国別)
 
10 2002年10月25日付Jakarta Post







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