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<「当面の技術発展の業種別重点(1999年)」(国家経済貿易委員会)>
(船舶工業)
(1)船舶工業の技術の現状
 現代の船舶技術は複雑で精度の要求が高く、専門分野も航海、音波、光学、通信、電子など最先端の技術分野を含め360の分野にわたり、国の総合的な技術力を示すものである。
 改革開放以降、中国の船舶工業は世界の先進技術を吸収し、その基礎の上に独自ブランドの製品を開発し、開発した製品を輸出してさらに新しい輸出の道を切り開くという科学技術創出の道をひた走った。建造量は80年代初頭の世界17位から、現在は第3位となり、品質は国際的に先進的な水準に達し、船舶の輸出先は日本、ドイツ、英国、ノルウェーなど世界50余りの国・地域に上る。
 中国の船舶工業は大きく発展したが、船舶の設計・建造技術の面では日本、韓国など先進造船国と比べたとき、次のように大きな差がある。
 
(i)船舶設計技術
 船型開発・船舶設計技術の面で、中国独自の開発による設計に属するものは、多くが一般船で、ハイテク、高付加価値の船舶は少ない。船舶の設計技術や設計手法でも遅れをとっており、設計期間も長い。例えば中国で設計された大型船の船体重量は先進造船国の設計する船体より1,000トン余りも重い。船舶設計技術は船舶工業で重要な技術であり発展に対する制約となっている。
(ii)船舶建造技術
 日本の大島造船所は一船台あたり年間12隻の船舶を建造しているが、中国は一船台あたり2.6隻である。船台利用率は日本の20〜25%、一人当たりの建造量は日本の8%、韓国の17%に過ぎない。
(iii)船用設備の技術
 中国の舶用設備全体の技術レベルは80年代初頭の国際水準のレベルである。中国の国産品の搭載率は38%であるのに対し、韓国は約85%、日本は97.8%に達している。船舶の自動化の面でも差は大きく、現在中国で建造している輸出船で使用されている自動化設備は基本的に輸入に依存している。
 
(2)船舶工業技術の発展目標
 中国の船舶工業技術の発展目標は、2010年までに建造量1,000万トンを突破し、世界の建造量の30%を占め、日韓と三極を形成する世界の造船強国になることである。そのためにイノベーションを進め、船舶の設計・建造技術のブレイクスルーを基礎に、ハイテク、高付加価値船をコアに、非船舶製品の発展も積極的に進め、船舶工業技術の構造的レベルアップを促進し、国際市場での競争力アップを図る。
 
(3)船舶工業技術の発展の方向と重点
(i)船舶の大型化、ハイテク化、高付加価値化
 大型化、ハイテク化、高付加価値化された船舶の価格は一般船の2〜5倍高い。ハイテク船、高付加価値船は世界の新造船市場の建造量の60%、生産額の80%以上を占め、すでに、大型船、高付加価値船の技術が世界の造船市場での競争を左右するようになっている。具体的に重要な製品は次のとおり。
 
(1)ハイテク、高付加価値船
 20万トン以上の大型原油タンカー、10万トン以上の大型プロダクトタンカー、大型化学薬品運搬船、5万立法メートル以上の全冷式液化石油ガス運搬船(LPG船)、液化天然ガス運搬船(LNG船)、4,000TEU以上のコンテナ船、大型自動車フェリー、工事用船舶、冷蔵運搬船、大型貨客フェリー、豪華客船など。
(2)高速船、水中翼船、エアクッション艇、ウエイブピアサーなど。
 
(ii)海洋工事用装備
 全世界で消費している石油・天然ガスの30%は海洋からである。多くの国が大量の資金・技術を積極的に近海の石油・天然ガスの開発に投入している。中国は300万キロ平方メートルの領海を有し、1996年現在でわかっている石油の貯蓄量は14.48億トン、天然ガスの埋蔵量は3,313.54億立方メートルもある。中国の海洋石油設備の研究、設計、製造は大きな社会的、経済的効果を有しているが、中国の大多数の海洋掘削設備は輸入されたものである。重要な開発製品は次のとおり。
 
(1)半潜水式掘削プラットフォーム
(2)移動式多機能型掘削プラットフォーム
(3)新型簡易掘削プラットフォーム
(4)分解式簡易運搬式プラットフォーム
(5)係留アンカー式石油生産貯蔵システム
(6)掘削船
(7)多機能型FPSO
 
(iii)舶用設備
 舶用設備は船舶の重要な部分であり、船価の40〜50%を占めるが、中国で建造される輸出船の国産設備の搭載率は40%に満たない。このような遅れた局面を改善するため、新世代の舶用設備を研究・開発することは、船舶工業の発展、船舶輸出による外貨獲得という大きな経済的・社会的効果をもたらす。重点的に発展させる製品は次のとおりである。
 
(1)舶用主機
高速ディーゼル機関、中速ディーゼル機関、低速ディーゼル機関
(2)舶用補機
発電機、エアコン、ウインドラス、操舵機、クレーン、ボイラ、汚水処理設備、スクリューポンプ、イナートガス発生装置など
(3)航行自動化システム
自動操舵装置、レーダー、自動ポジショニングシステム、電子海図、制御システム、ジャイロなど
(4)機関室自動化システム
主機の遠隔操作・監視警報システム、発電機・補機の自動制御システムなど
(5)貨物積卸自動化システム
燃料タンクの液面測定・遠隔制御・監視警報システム、イナートガスの測定・制御・集中表示、タンククリーニングの自動制御システムなど
 
(iv)船舶建造技術
 現在の建造技術は機械の高度化、自動化、統合化、モジュール化、コンピューター化の方向に発展している。重点的に研究開発すべき技術と装備は次のとおり。
 
(1)溶接
高性能溶接技術、自動平面溶接、直角溶接、垂直溶接、横向自動突合せ溶接技術
(2)船舶建造
造船精度コントロール技術、船殻艤装・塗料の一体化技術、生産設計技術、区画建造技術、モジュール化技術、柔軟な建造技術、先行艤装技術、船体外板の冷熱加工 自動成型技術
(3)コンピューター
コンピューターによる造船統合システム技術、企業情報管理システム技術の確立、船舶用の標準ソフトの開発、開発計画・ネットワークなど基礎的事項の開発、高出力ディーゼル機関の設計、製造、管理統合システムを補助するソフトの開発
(4)舶用製品
溶接ロボット、数値制御のレーザー切断機、フレームの数値制御、パイプ冷却曲げ機、大型門型クレーン
 
(v)基礎技術
 船舶の性能、構造、騒音、振動などの基礎技術は新型船舶を開発する上で解決しなければならない中核的技術である。競争力強化という面から、大型船の性能、構造を解析する先進技術をブレイクスルーする必要がある。
 
(vi)非舶用製品
 重点的に開発する製品には次のものがある。
高炉、研磨機、物流自動化システム、タバコ製造設備、騒音防止設備、船舶昇降機、大型ドック用門、鉛蓄電池、大型鉄鋼構造物、高性能コンピューター、都市の消防システム、油田計測システム、大型油圧システムなど。
 
<当面、国が重点的に発展させる産業・製品の技術目録(2000年修正)>
中華人民共和国国家発展計画委員会
中華人民共和国国家発展計画委員会 令
第7号
 
 「当面、国が重点的に発展させる産業・製品の技術目録(2000年修正)」は、2000年7月27日国務院の認可を経て、発布され、2000年9月1日より施行される。「現在、国家が重点的に発展させる産業・製品の技術目録(試行)」は廃止する。
 
国家発展計画委員会主任 曹培炎
国家経済貿易委員会主任 盛華仁
2000年8月31日
 
当面、国が重点的に発展させる産業・製品の技術目録(2000年修正)
 
 経済構造の戦略的調整を推進し、産業のレベル向上を図り、競争力を高めるために、「当面、国家が重点的に発展させる産業、製品の技術目録(2000年修正)」を発布する。
 国が重点的に発展させる産業、製品、技術を確定した現在の原則は以下のとおり。
 
1 現在、そして今後の一定時期において、比較的大きな市場ニーズが見込まれ、発展の展望が明るく、国内市場開拓に有利である。
2 技術レベルが比較的高く、企業の設備更新と産業技術の進歩を促進し、競争力を高めるのに有利である。
3 国内に研究開発から実際の産業化まで技術的基礎があり、イノベーションに有利で、新しい経済成長の出発点を形成する。
4 持続的発展戦略に合致し、資源節約と生態環境の改善に役立つ。
5 相対的に遅れている供給能力を高め、経済構造合理化の促進を助長し、国民経済の持続的、迅速的、健全な発展を維持する。
 
 上述の原則に基づき、国は28の分野と526種の製品、技術並びにインフラ及びサービスの発展を奨励する。
 本目録は国が牽引する経済構造の戦略的調整、投資構造の改善及び投資プロジェクトの審査・認可の主要な依拠のひとつとなる。経済関連部門は、本目録の要求に応じて相応の措置をとるものとし、経済構造の戦略的調整を進める。
 本目録に合致する国内投資プロジェクトで投資総額内で輸入した自家用設備は、「国内投資プロジェクトの減免とされない輸入商品目録(2000年修正)」の製品を除き、関税と輸入時の増値税を免除する。
 各地域は現地の実際の状況に基づき、真剣に国内市場のニーズと供給条件の変化を分析し、目録のうち現地で比較的優勢な分野を現実の状況と力量に応じて発展させるとともに、盲目的な重複建設を回避するものとする。
 
二十二 船舶
 
1 ハイテク船、高性能船、特殊船及び6万トン以上の大型船舶の設計・製造
2 3,000TEU以上のコンテナ船の建造
3 1万トン以上のフェリー、貨客船の建造
4 5,000立方メートル以上の液化ガス(LPG)運搬船の建造
5 液化天然ガス(LNG)運搬船の建造
6 舶用エンジン・舶用発電設備の製造
7 舶用クランクシャフト、舶用補機、電子機器の製造
8 海上掘削用プラットフォームの建造
 
(参考)国の主な支援策は以下の通り
(1)低利融資
(2)重点業種の技術改良のための国産設備投資に対する減免税。「高度新技術企業」として関係部門の認定を受けた場合、生産に入った年度から2年間、所得税が免除される。企業・事業単位の技術譲渡に関連する技術コンサル、技術サービス、技術教育・訓練の年間収入が30万元以下の場合も、暫定的に所得税を免除する。
(3)重点業種、重点製品、重点企業、重大先進技術の設備に対する割増償却、増加した新製品の開発費に対する減免税、輸入先進技術の設備の関税と輸入関係諸税の減免
(4)国家重点企業への技術開発センター設置を奨励
(5)ハイテク型中小企業イノベーション基金の創設(1999年5月に国務院が承認)。電子・情報技術、生物、医療、新材料、光機電一体化、資源・環境、新エネルギーなどの分野のイノベーション技術を助成と低利融資で支援するもの







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