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6 船舶工業への設備投資
6.1 1999年以降の投資
 中国政府は、1999年、6万トン以下の新造船施設の新設を禁止、6万トン以上を国の認可対象としたのに続き、2000年には全ての造船設備について2年間の新設停止と1995年以降のプロジェクトの再審査、全造船施設を国の認可とする等の措置をとっている。
 中国政府の船舶工業に対する投資政策は、総量規制ではなく、中国国内向けの建造が中心となる低レベルの中小規模の建造設備への投資を制限しようとする一方で、大型タンカー・大型コンテナ建造に必要な大型ドックやクランクシャフト製造等中国船舶工業の発展に必要な設備投資プロジェクトは奨励するという二面的なものになっている。
 第10次5ヶ年計画(2001年〜2005年)では、船舶工業への固定資産投資として108億元(約1,620億円)が予定されている。内訳は、銀行融資51億元(約750億円)、自社資金57億元(約850億円)。
 
6.2 船舶工業の設備投資抑制策
 船舶工業における設備投資に関する通知は次のとおり。
・「生産能力、生産プロセス、製品の淘汰目録」(1999年)
・「工商投資分野における重複建設取締目録」(1999年)
・「造船・船舶修理のためのインフラの重複建設を厳重に取締ることについての意見(1999年)」
・「造船・船舶修理インフラ建設プロジェクトの整頓状況に関する通知」(2000年10月)
・「主要業界のコントロール目標と政策措置」(2002年)
・「民用船舶工業における第10次5ヶ年計画構造調整企画要綱」(2001年、国科工委等)
 
6.2.1 船舶工業の重複投資を制限する措置
(1)「工商投資分野の重複建設取締目録(第一回)」(1999年9月1日施行)
 1999年8月、国家経済貿易委員会は「工商投資分野の重複建設取締目録(第一回)」(1999年9月1日より施行)を公布した。
 これにより6万トン以下の造船施設の新設・拡張が禁止されるとともに6万トン以上の造舶施設の新設・拡張は国の認可を受けることとなった。
 
(2)
「造船・船舶修理のためのインフラの重複建設を厳格に取り締まることについての意見」
 1999年10月、国務院弁公庁は国家計画発展委員会、国家経済貿易委員会、国防科学技術工業委員会、対外経済貿易部、人民銀行、税関総署に代わって「造船・船舶修理のためのインフラの重複建設を厳格に取り締まることについての意見」(以下「意見」という)を発表し、各省、自治区、直轄市人民政府、国務院各部・委員会、直属機関に徹底した取締りを要求した。当該「意見」の主な内容は以下のとおり。
1 2001年〜2002年は、ドライドック、船台、浮ドック及び艤装岸壁、修理埠頭など新造船、船舶修理のためのインフラ建設を全て停止する。
2 2001年〜2005年の新造船、船舶修理のためのインフラプロジェクトは、真に国際競争力を有するものについてのみ、国防科学技術工業委員会が審査意見を出し、国家計画発展委員会もしくは国家経済貿易委員会が審査した後、国務院が認可する。
3 各地域、各部門は1995年以降に審査認可された1万トン以上の新造船、船舶修理インフラの建設プロジェクトを検討したうえで、1999年12月までに国防科学技術工業委員会に報告する。国防科学技術工業委員会は国家計画発展委員会、国家経済貿易委員会及び対外経済貿易部とこれらのプロジェクトを再審査する。
4 国防科学技術工業委員会は船舶工業の管理部門として、全国の新造船・船舶修理業の長期的発展プランと業界の発展政策を早急に提出する。注)
注)2002年末現在未発表
 
(3)
「造船・船舶修理インフラ建設プロジェクトの整頓状況に関する通知(2000年10月)」
 1999年の意見に基づく再審査結果を通知したものである。
・認可(8件)
南通中遠川崎船舶工程有限公司造船工場
韓国独資三星重工業(寧波)有限公司5000トン級埠頭および船体工場の新設等
・再審査(3件)・追加資料提出(3件)
江蘇靖江造船廠10万トン級の造船ドックの新設等
中遠集団総公司広州遠洋公司船舶修理工場8万トンの浮ドック新設プロジェクト等
・不認可(1件)
江蘇省江揚船舶集団公司10万トン級ドックの新設プロジェクト等
・更に検討(3件)
福建泉州斗尾15万トン級の船舶修理基地建設プロジェクト等
 
(4)「主要業界のコントロール目標と政策措置」(2002年発表)
 国家経済貿易委員会は、2002年に発表した「主要業界のコントロール目標と政策措置」の中で、船舶工業の目標を成長率9%、建造量400万トンとし、業界を黒字に転換することをあげている。
 
(5)「民用船舶工業の第10次5ヶ年計画構造調整企画要綱」
 重点プロジェクトとして以下のようなものがあがっている。
(1)新造船
上海外高橋造船基地の第一期プロジェクトの建設と第二期プロジェクト
福建省泉州闘尾大型船舶造修工場(F/S)
江蘇靖江で新規に建設する10万トン級ドックとその関連プロジェクト(F/S)
青島海西湾船舶造修工場第一期プロジェクト(F/S)等
(2)船舶修繕
広西防城港船舶修繕プロジェクト(F/S)
寧波崙港船舶修繕プロジェクト(F/S)
(3)船用関連設備
大連船用ディーゼル機関、大連船用プロペラ廠、大連舶用バルブ廠への国家重大技術の導入
武漢船用機械廠、正茂集団有限責任公司、安慶船用ディーゼル機関廠の国債プロジェクト等
 
6.3 設備投資を奨励する船舶工業プロジェクト
 船舶工業で設備投資を奨励する分野は次の中で言われている。
・「外資投資産業指導目録」(2002年4月、対外経済貿易委員会)
・「輸入設備租税政策に関する通知」(1997年12月、国務院)等
 
6.3.1.外国資本の船舶工業への投資奨励
 2002年3月11日、国務院の認可を得て、国家経済貿易委員会、対外経済貿易委員会は共同で「外資投資産業指導目録」とその付属文書を公布した。新目録は2002年4月1日から施行される。今後当分の間、この「目録」に基づき、農業、交通、エネルギー、原材料、ハイテクなどの新産業及び西部地域の有力産業への外資の投資が奨励されることになる。
 船舶工業では、次の4つが国の「外資投資産業奨励目録」の奨励類に入っており、これらに該当する外資投資プロジェクトは、輸入設備の関税と輸入時の増値税を減免される。
 
・船舶用低速ディーゼル機関のクランクシャフトの設計・製造
・特殊船舶、高性能船舶の修理、設計及び建造(中国側が支配的地位を持つ)
・船舶の中高速ディーゼル、補機、無線通信、ナビゲーションシステム及びその付属品の設計・製造(中国側が支配的地位を持つ)
・FRP漁船、ヨットの建造
 
6.3.2.輸入時の減免税
(1)免税
 1997年12月、国務院は「輸入設備租税政策に関する通知」(国発〔1997〕37号)を発表し、1998年1月1日から「外資投資産業指導目録」の奨励類、制限乙類・注)に該当する外資投資プロジェクト、「現在国が重点的に発展を奨励する産業、製品および技術目録」に該当する国内投資プロジェクトについて規定の範囲内で関税と輸入時の増値税の免除を決定した。
注)2002年4月1日で甲類・乙類の分類を廃止
 
(2)減税(暫定税率)
 船舶工業等の発展を支援するため、重要な設備・部品であるにも関わらず国内で供給不能もしくは国産品では技術や品質が要求を満たすことができないものについては現行税率より低い暫定税率が適用される。現在、暫定税率を適用されている船舶関係の重要設備・部品はクランクシャフト、高速船用ディーゼルエンジンなど数十種類あり、多くの舶用設備に広がっている。







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