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(3)対中国造船行工業協会
 国防科学技術工業委員会は、中国造船行工業協会(日本の造船工業会にあたる)を監督している。同協会会長は、協会内部の選挙で決め、同委員会が承認する。
 
(ii)国家経済貿易委員会
 国家経済貿易委員会の船舶工業に対する機能は、基本的に全国の工商業界管理と関係するものである。日本の経済産業省にあたる。例えば、船舶工業の運営・発展の全産業の中での総合調整とコントロール、産業構造調整の方向、産業政策、重点産業・重点製品の調整、各業界への投資配分、産業の投資指導目録のような外資利用政策と外国融資の利用、国有企業の外資に対する資産・持分・経営権譲渡、企業の国際展開と海外投資プラン、内外の貿易政策と輸出入政策、業界・企業への優遇政策、国有企業の管理・改革方針、企業体制の改革、大型企業と企業集団に対する政策、中小企業政策、技術開発(イノベーション、技術導入を含む)政策、重要な設備の国産化と重要な技術の研究開発、資源節約などである。これらは、通常、国家経済貿易委員会が主導権をとり、あるいは、国家発展計画委員会と協力して、全国の工商業界全体に対する企画・政策のなかで実施されていく。
 
(iii)国家発展計画委員会
 国家発展計画委員会の船舶工業に対する役割は、主に経済発展部門の管理のなかで発生する。例えば、船舶工業の大規模なインフラ建設や、重要プロジェクト、重点産業・製品・技術の奨励・発展であり、外資政策なども利用される。業務は国家発展計画委員会自身が担当するか、もしくは国家発展計画委員会が主導権をとって、全国各部門の発展計画を取りまとめて行う。
 
(iv)交通部
 交通部は船舶工業に対する直接的な管理はないが、交通運輸面で、船舶工業と部分的に関係する。例えば次のような分野である。
(1)船舶の安全・運航管理のための基準
 2001年に公布された「船舶検査業務管理暫定弁法」に基づき、交通部海事局(別名「中華人民共和国海事局」もしくは「中国海事局」)が船舶検査業務を実施する主管機関となっており、船舶の技術基準、検査規則などの制定、船舶検査の実施と証書の発行、船舶検査機構と検査担当者の審査・認定・監督、法定検査の授権、外国の船舶検査組織が中国で代表機構を設立する際の審査・認定・監督を実施する。
 国務院交通主管部門が認定・設置した船舶検査機構と国務院交通主管部門、省、自治区、直轄市人民政府の認可した地方検査機構が、中国海事局からの授権により、船舶への法定検査業務を実施している。
 
(2)老朽船
 2001年4月、交通部は「老朽船管理規定」を、また国家経済貿易委員会、財政部と共同で「運輸船舶強制廃棄・報告制度の実施についての意見」を発布した。この二つの文書に基づき、海洋、河川を航行する一部船舶に対する強制廃棄・報告制度が2001年5月1日から、その他の船舶に対する強制廃棄・報告制度が2002年1月1日から施行された。1993年4月に交通部が公布していた「老朽運輸船舶管理規定」は廃止された。
 
(3)交通部所管企業の管理
 交通部が所轄する造船企業の経営・人事に関して直接管理を行う権限がある。例えば長江航運集団総公司の金陵造船廠は交通部の所管である。
 
(v)その他の中央政府部門
 対外経済貿易部、税関総署、国家検査総局などの部門は、「制限輸入製品目録」を公布するなど船舶業界の輸出入に関係する政策及び業務管理、許可証管理などを実施している。
 国家税務総局と税関総署は、船舶工業に関連する関連税制の優遇政策(増値税還付政策を含む)に参画するが、これら優遇政策の制定は国家経済貿易委員会が主導権をとって行なわれるのが通常である。
 
(vi)中央政府部門相互の関係
 船舶工業に関する中央政府部門相互の関係は次のようになっている。即ち、業界管理の一般事務は国防科学技術工業委員会が責任を負い、特に重要・大規模な投資については、国家発展計画委員会が中心になって国家経済貿易委員会、国防科学技術工業委員会及び関連政府部門と共同で公布する。全産業政策の中での船舶工業界の目標、関連政策は国家経済貿易委員会が中心になって、国防科学技術工業委員会及び関連政府部門と共同で公表・実施する。
 
(2)地方政府
 地方政府の管理は、地方政府に国防科学技術工業委員会の弁公室がある場合は、中央政府(国防科学技術工業委員会)から地方政府の当該弁公室経由で地力政府の所管する国有企業を間接的に管理できるが、地方政府で船舶工業を担当しているのが経済貿易委員会等国防科学技術工業委員会以外の部門の場合は、国防科学技術工業委員会から地方政府を通じての管理・監督は簡単でないのが一般的であり、地方政府所管の国有企業に対する指示・監督は限られたものとなるのが現実のようである。
 
 2001年4月の全国船舶工業界管理工作会議で、地方政府(省、区、市)の船舶工業の対する職責が明確にされた。地方政府の船舶工業に対する管理は、基本的に中央政府の政策、法規、標準、計画の策定を受けて地方政府がこれを実施するというものであり、他の工業部門と同様である。地方政府(省、区、市)の主な役割は以下のとおり。
・国の船舶業界に対する発展方針、政策、法規、条例、計画及び基準の確実な実行
・国の船舶業界に対する発展政策、計画に基づく担当地域の船舶工業発展計画の制定・実施
・担当地域の船舶工業の固定資産に関する投資プロジェクトの審査・認定
・担当地域の船舶及び重要な舶用製品の設計・製造の資格認定及び許可証の最初の審査・報告・管理
・担当地域の船舶工業に関する技術開発の推進
・担当地域の船舶工業の統計情報収集、統計の取りまとめ及び上級機関への報告
・担当地域の船舶工業会の業務指導
 
(3)業界団体
 船舶工業の管理体系には各種業界団体が含まれる。
 例えば中国船舶工業行業協会、中国造船工程学会、中国機電製品輸出入商会船舶分会などが政府と業界を仲介する役割を果たしている。これらの業界団体の役割は重要で、例えば中国機電製品輸出入商会船舶分会は、2002年に「中国船舶輸出業界暫定規則」を制定・公布している。当該規範は経済貿易部主管部門の認可を経ており、船舶、舶用設備及び船舶部品の輸出に関わる全ての国有、合弁、独資企業(輸出企業)に適用され、アンチダンピングにおいて大きな意味があると思われる。
 中国機電製品輸出商会船舶分会はこの他、対外経済貿易部の法規、条例に基づき、船舶業界の輸出業務について協調を図るとともに指導を行う。
 中国船舶工業行業協会は、日本でいう(社)日本造船工業会、(社)日本中小型造船工業会、(社)日本舶用工業会などの業界団体にあたるものであり、船舶工業発展のために企業の意見を取りまとめ政府に提言するなどの役割を果たすものである。
 中国造船工程学会は、日本の造船学会に相当する。
WTO加盟後、業界団体の船舶工業に対する役割・機能はさらに増大するとみられる。
 
(参考)「国民経済と社会発展のための第10次5ヶ年計画要綱(抄)」
「行政管理体制と政府機構改革を引き続き推進し、清廉、効率的、運営の調和がとれ、行動が規範にあった行政管理体制を確立し、政府の民主的、科学的な政策決定を推進する。社会主義市場経済発展の要請に従い、政府の役割をさらに転換し、マクロ・コントロールと良好な市場環境の整備に精力を集中し、企業の通常の生産・経営活動に直接関与しない。(略)商工会や業種別協会などの仲介組織の役割を発揮させる。」(第16章第7節)
 
5.1.2.中国船舶工業総公司の改革
(1)中国船舶工業総公司
 改革開放の初期にあたる1980年代初めまでに、当時、船舶工業を監督していた第六機械部は、国家指導の下、上海、大連、広州、武漢、重慶などに9つの専業公司を設立した。
 さらに、1982年、国務院の認可を受けて専業公司の基礎の上に、第六機械部と交通部に所属する船舶、機械、計器など生産する基幹企業を組織し、全国の優れた資源を集中させて、中国船舶工業総公司を設立した。
 国務院が発表した「中国船舶工業総公司の設立に関する通知」では、中国船舶工業総公司は生産、研究開発、経営の総合体で、法人の地位を有する独立採算で、損益も自己責任を有する経済実体であると規定されている。
 中国船舶工業総公司は董事会の指導のもとで総経理が責任を有する制度を実施していたが、後に、董事会は取り消され、総経理が全責任を負う体制となった。統一された独立採算制の大型集団として中国船舶工業総公司の主な任務は、国家から経営管理を授権された国有資産を有効に利用・管理し、利益を高め、利潤を増加させ、国有資産の価値の増大を維持することであった。







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