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5 構造改革支援
5.1 管理組織整備
 船舶工業をマクロ的に管理する体制は次第に整備され、各レベルの政府機関・管理機構の職責も次第に明確化されてきた。政府機関は、国防科学技術工業委員会等であり、管理機構は、2大船舶工業集団等である。
 
5.1.1. 政府機関
 中国中央政府の船舶工業の管理部門は、国防科学技術工業委員会、国家発展計画委員会及び国家経済貿易委員会であり、関連部門として交通部、対外経済貿易部、国家質検総局などがある。また、業界団体として中国船舶工業行業協会などがある。
 
 中国の造船にかかわる部門は、もともと旧船舶工業総公司、交通部、農業部、解放軍国防部、首都鋼鉄公司など14にも及んでいた。
 しかし、1998年の国務院の機構改革で、国務院は国防科学技術工業委員会が船舶工業界の管理に全面的に責任を負うことが明確に規定された。これにより、中央政府に船舶工業を主体的に管理する部門が長期にわたって存在しないという状況は解決された。
 
図6 中国の船舶工業関係組織の変遷
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 地方政府の船舶工業の管理部門は、国防科学技術工業委員会の弁公室が設置されている場合は同室、設置されていない場合は経済貿易委員会が担当となるが、中央政府が直接指示・管理する場合も多い。関連部門としては、地方の対外経済貿易部などがある。
 1998年に国防科学技術工業委員会が船舶工業界の管理に責任を負うことが明確になるのにあわせ、関連する省、市、自治区も船舶工業を管理する機構を設立し、部門を明確にしている。一部は国防科学技術工業委員会が直接、また、あるものはその地方の経済貿易委員会が船舶工業の管理を行うことで、基本的に中央と地方(省、市、区)による二つのレベルの管理体制が、ここ数年で完備されつつあり、現在、主要な省、直轄市、区では船舶工業の担当部門、船舶工業団体が基本的に整っている。
 
(1)中央政府部門
(i)国防科学技術工業委員会
 2001年4月に開かれた全国船舶工業管理工作会議によると、国防科学技術工業委員会が中央政府での船舶工業の主管部門となっており、その職責は以下のとおりである。
 
(1)対船舶工業界
・全国の船舶工業(造船業、船舶修理業、舶用工業)の発展戦略と計画の研究・策定
・船舶工業発展の方針、政策の研究・策定、業界法規や管理法及び業界基準の決定・実施、監督
・船舶工業の固定資産に関する投資プロジェクトの審査・認定
・船舶及び重要な舶用製品の設計・製造の資格認定及び許可証の審査・管理
・船舶工業の技術開発
・船舶工業の業界統計の情報収集、統計の作成、発表
・船舶工業と直接関係のある国際的組織の活動及び国際条約の制定、改正、国際会議への政府代表としての参加、重要な政府間の国際技術経済協力・交流
・船舶工業会などの部門の業務指導
 
(2)対造船国有企業
 従来、中央直属の国有企業は、業種別の主管部門(各工業部、総公司)に帰属し、経営面での監督を受けてきた(造船・舶用工業の場合は、第六機械工業部)。
 しかし、1998年3月の全人代で決定された中央機構の行政改革により業種別主管部門の規模が大幅に縮小し、大部分が国家経済貿易委員会監督下の「局」に改組された。1998年末には、中央直属企業が旧主管部門から正式に切り離され、国家経済貿易委員会の管轄に移された。国家経済貿易委員会は全産業政策的見地から企業を行政上監督するが、経営には直接参与しないとされている。
 造船産業政策という見地からの企業の監督については、国防科学技術工業委員会が所管する。中央直属の国有企業の経営者人事に関しては1998年7月に設置された共産党の大型企業工作委員会(以下「中央工委」と略す)が、国務院人事部と共同で管轄し、国有資本の運営状況など財務に関しては財政部が所管する。
 具体的には、CSSC、CSICの総経理、副総経理、党書記は、国務院人事部を事務局に中央工委と相談し最終的に首相が任命する。国防科学技術工業委員会に直接の人事権があるわけではないとみられる。
 また、国家重点企業であるCSSC・CSICの発展計画、資金・投資計画、軍事品の生産、賄賂に対する規律検査などは各々国務院各部門により管理され、国防科学技術工業委員会のCSSC・CSICに対する権限は、いわゆる造船政策に関するものに限られる。
 
 このように、従来、第六機械工業部が事実上、一手に掌握していた中央直属の造船国有企業の監督権を、現在は、造船産業の見地=国防委、全産業的見地=経貿委、人事=人事部・中央工委、財務=財政部という4者が分担して行使するという複雑な体制(4者による共管体制)が成立している。
 いずれにせよ4者が、中央直属企業の経営に経常的に関与することは難しく、この改革は、事実上、企業側の経営権を大幅に拡張し、共産党、政府の役割はもっぱら事後モニタリングに限定されるとみられている。
 
 交通部、水産部、国防部、地方政府の所管する国有企業(国家重点企業を除く)については、それぞれ交通部、水産部、国防部、地方政府が、それぞれの行政監督上の権限を持ち、国防科学技術工業委員会の権限が、造船政策に限られるのは、CSSC・CSICに対する場合と同じである。
 
図7 中国の管理体系
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注)
地方所轄企業は、例えば、産業政策については、国家経済貿易委員会の管理を受けるが、ここでは、国防科学技術工業委員会(造船政策)の管理の流れのみを記入してある。







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