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2.4 地方政府による発展目標
 省・市の地方政府によっては、独自に船舶工業の5ヶ年計画をつくっているところがある。山東省のように、船舶工業は、必ずしもハイテク産業ではないが、その雇用吸収力の大きさに魅力を感じるということで積極的に外資を誘致している地方政府もある。
 
2.4.1. 山東省
(1)「山東省国民経済及び社会発展に関する第10次5ヶ年計画要綱」
 山東省は10大伝統産業を改革し、設備製造業を振興し、優良な柱となる産業とするため技術導入と自主創造を結び付ける。国内に需要がある、または輸入品に代替しうる汎用設備、船舶製造、環境設備など8種類の製品を重点に発展させる。
 
(2)「山東省船舶工業発展のための座談会」
 現在山東省の建造能力は90万DWTで、省別では、中国第4位である。
 2002年4月に開催された「山東省船舶工業発展のための座談会」では、「2001年から2005年の第10次5ヶ年計画の期間に山東省の船舶工業を重点的に発展させる」として、その発展計画が明確化された。
 具体的には、第10次5ヶ年計画で、山東省は遠洋船、特種船、大型漁船、舶用製品の4製品を発展の中心とする。山東半島の南北に2大造船基地・注)を、魯西南に河川船舶用造船基地を建設し、重点的に6大企業を育成し、船舶工業を大幅に発展させる。
 2005年末に、山東省にある2つの大型集団企業・注)が中国のベスト10に入り、省全体では、建造能力180万トン、建造量150万トン、輸出額12億ドルとなることを目指す。
注)北海造船廠と煙台RAFFEL造船廠と思われる。
 
i)山東省南方基地:
 青島、日照を中心に、青島北海船廠を核として、青島霊山船業株式公司、青島船廠を中堅企業として、海西湾の近代的造船・修繕基地により構成される大型造船基地の建設工事を重点的に進める。5,000〜10,000DWTの船舶、コンテナ船、LPG船、海洋工事船、艦船、レジャー艇、全閉囲型FRP救命艇、海洋プラットホーム等の高技術特殊船、高付加価値船を重点的に発展させる。大型液化ガス船、LNG船、1万DWT級のフェリー・貨客船及び大型鉄鋼構造物製品の開発、建造を行い、大型船、特殊船の修繕及び船舶の改造能力をアップする。
 
ii)山東省北方基地:
 烟台、威海を中心に、烟台莱佛士船業有限公司を核として、山東威海船廠、山東黄海造船有限公司を中堅企業として、中・小の造船専業企業の再編を行い、国内一流の船舶建造基地、漁船を専門とする設計・研究・製造・修理の基地をつくる。
 海洋作業船(全旋回・位置保持システムを含む)、サプライ・ベッセル、高速船、豪華レジャー船、高速レジャー船等を重点的に発展させるとともに、漁船、油槽船、ばら積船等の在来船の改良、低温・高鮮度保持の可能な冷蔵運搬船、イカ釣り・マグロ延縄等のための新型漁船、遠洋漁船等の開発を実施する。
 
iii)河川船舶用造船基地:
 済寧を中心に、”南水北調”に伴う運河建設プロジェクトの機会をとらえ、大運河水系の周辺地域にあるというメリットを生かして、国内一流の内陸河川用船舶の設計、開発、製造基地をつくる。高性能の内陸河川用貨物船、新型レジャー船を重点的に開発・建造する。
 
iv)舶用工業:
 舶用工業メーカーを重点的に発展させる。特に性能の高い船舶用中厚鋼板、舶用ディーゼル機関、舶用発電システム、舶用ボイラー、艤装設備、通信設備、航路標識、錨鎖、揚錨器などの製品を発展させる。舶用ケーブル、舶用化学工業、計測機器・メーター、舶用金具などの製品を発展させる。
(出所:中国船舶報2002年4月23日)
 
2.4.2.江蘇省
(1)江蘇省の第10次5ヶ年計画
 2001年に作成された「江蘇省の国民経済と社会発展に関する第10次5ヶ年計画要綱」では、船舶製造業について具体的な計画は、何も触れられていない。
 江蘇省は加工産業の非常に発達している省であり、省政府としては、「科学技術先導型の産業」、即ち、現在でも比較的進んでいる電子・情報・バイオ・新薬・新材料に重点を置き、先端技術産業向け工業団地の開発を重点的に行い、これら先端技術の産業の発展を促進しようとしているとみられる。
 
(2)全国船舶工業業界管理工作会議(2001年4月)
 2001年4月に開催された全国船舶工業業界管理工作会議で、江蘇省政府の副秘書長韓慶華氏は、「江蘇省政府は、江蘇省船舶工業の発展のための会議を開催して、船舶工業集団の戦略を実施しよう。第10次5ヶ年計画の期間に省レベルの船舶工業集団を組織しよう」と提案したが、具体的な省レベルの船舶工業の計画はない。
 
(3)南通市、江陰市
 江蘇省の主要な船舶工業基地である南通市、江陰市には、船舶工業に関連する第10次5ヶ年計画がある。
 
i)南通市:
 南通市の作成した「南通市の第10次5ヶ年計画−海洋経済発展のための企画書」における船舶工業の目標は次の通りである。
「国内一流の大型船舶建造基地と世界一流の遠洋船舶修繕基地の完成を目標に、舶用品の生産能力・レベルを高め、関連産業の発展を促進する。
 第10次五5ヶ年計画末の2005年までに、南通の船舶工業生産額50億元(約750億円)、舶用製品の売上高5億元(約75億円)を達成し中国最大の船舶工業基地の一つになる。
 新造船では、南通中遠川崎船舶工程有限公司を核に、造船業の発展に全力をあげ、造船能力を60万トンにあげる。大型コンテナ船、超大型油槽船、RO/RO船、化学薬品運搬船、大型浮ドック、特殊作業船、大馬力船など先端技術、高付加価値の大型船舶を重点的に発展させる。高速船、レジャー船、超大型バージ、新技術の設備を有する遠洋漁船・FPR漁船、大型遠洋船舶の改造、特殊塗装などの新しい開発プロジェクトを進める。
 高南通天通高速船公司、南通漁輪廠、東東漁輪総廠、東東港船廠、海門FPR船廠等の企業は、生産力を強化する。
 船舶修繕では、南通遠洋船務工程有限公司を中心に修繕業務を発展させ、「第10次5ヶ年計画」の2001年から2005年の間に1万DWT級の遠洋船舶の修繕を年に250隻以上行う。
 積極的に船舶の解撤業を発展させ、船舶の解体能力を年間20万トンに到達させる。
 舶用ディーゼル機関、発電システム、空調機械、ハッチカバー、塗料、溶接棒等の舶用部品を中心に、関連企業の技術改良を加速、舶用部品の生産能力を上げる。」
(出所:中国船舶報2002年11月1日)
 
ii)江陰市
 「江陰市の国民経済と社会発展に関する第10次5ヶ年計画及び2010年に向けての目標に関する要綱」では、船舶修繕業の発展目標について、次の通り書かれている。
「長江村、澄西船廠、楊子江船廠を主体に船舶の解体、修繕、建造の基地を形成する。
 積極的に海外の先進技術及び設備を導入し、特色のあるサービスを提供できる修理・改造基地を建設し、近代的造船モデルである船体建造、艤装、塗装の三つの生産ラインを完成させる。
 幾つかの近代的船舶解撤企業を設立し、一定規模を持つ船舶解撤基地を建設する。
 先端技術、高付加価値の特殊船、港湾用機械、舶用製品などを開発し、港湾工業の速やかな発展を促進する。」
(出所:中国船舶報2002年11月1日)
 
2.4.3.福建省
(1)「福建省の国民経済と社会発展に関する第、10次5ヶ年計画要綱」等
 福建省は、「福建省国民経済及び社会発展に関する第10次5ヶ年計画要綱」の中で「機械工業では、交通運輸設備、工事用機械、電気機械製造などの機械装置産業を重点的に発展させ、自動車、電気器具、船舶の建造・修理、航空機の修繕等を育成・強化する」としている。
 
(2)「福建省の機械工業の発展に関する第10次5ヶ年計画要綱」
 福建省は、船舶工業を「機械工業」の一つとして扱っており、2001年3月・福建省発展計画委員会、福建省経済貿易委員会機械・電子工業弁公室が制定した「福建省の機械工業の発展に関する第10次5ヶ年計画要綱」でも交通運輸機械の分野で、自動車、船舶の建造・修繕及び航空機の修繕の重点的発展があげられている。
 船舶工業については、「省の実情に即して船舶工業を発展させ、福建省を海洋経済大省とする」というのが戦略目標であり、具体的には次の通り。
 
「2001年から2005年の第10次5ヶ年計画の期間は、引き続き船舶工業の規模を拡大し、建造量を増やし、投資力を強化し、発展のスピードを加速するという戦略方針を実施する。
 2005年までに、福建省船舶集団公司を中心に、地方企業の再編・構造改革を行い、企業配置の合理化、規模の適正化、専業化を一体とした生産構造体制をつくる。
 福建省の船舶工業の総生産高を50億元(約750億円)に、新造船の生産高を60万DTWに到達させ、今後数年間は、福州、アモイの船舶修造基地の建設を持続的・加速的に進める。
 多様な資本形態により、福州地域の3.5万DTWコンテナ船及び大出力の曳船などの輸出船生産基地を強化・発展させ、アモイ地域の10万DTW船舶の建造・修繕工場を完成させ、泉州闘尾の20万DTW国家級大型船舶建造・修繕基地を建設し、地方の船舶修繕業とともに協調的に発展させる。」







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