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2.3. CSSC・CSICの発展目標
 政府による民用船舶工業の第10次5ヶ年計画の前提になるものとして、2001年に2大造船国有集団もそれぞれの第10次5ヶ年計画をまとめている。報道されている主な内容は、次の通り。
・中国船舶工業集団は、2005年までに世界の造船グループのトップ5に、2010年までに世界のトップ3に入る。
・中国船舶重工集団公司は、2005年までに建造量を220万トンに拡大し、建造量及び販売額は2000年の2倍にする。
・2010年までに、中国の船舶工業を国際的な競争力をもつ一群の大型造修繕基地と国際的な影響力を持つブランド製品を有するものとし、その総合的実力を世界の造船強国に匹敵するものとする。
 
2.3.1 中国船舶工業集団公司(CSSC)の第10次5ヶ年計画
 中国船舶工業集団公司の第10次5ヶ年計画要綱での基本的考え方は、次のとおり。
・船舶を主として、多角的経営を行い、軍に住み人民に尽くし、資本を運営し、価値を高め、国内に軸足を置き、世界に向かう。
・経済効果を高め、資産価値増大の実現を中心に、軍用業務をつかみ、構造調整を進め、科学技術を促進し、対外協力を進め、企業改革を推進し、企業管理を深化させ、資本運営を強化し、人材育成を加速し、集団公司の建設を主たる業務として、管理レベルの高い、競争能力のある特大大型企業集団にする。
 
(1)発展
・2001年〜2002年の2年間は、調整・回復期として低下を食い止める。2003年〜2005年の3年間は発展期として過去最高のレベルとする。中国船舶工業集団は2005年までに世界の造船グループのトップ5に、2010年までにトップ3に入る。
(建造能力等)
・総量を増大する。建造能力を400万トンに、建造量を年300万トンに増加し、年成長率を16%とする。エンジンの製造能力を150万馬力程度に、製造量を120万馬力とし、年成長率を13%とする。
(売上高)
・売上高は250億元(約3,800億円)とし、4億元(約60億円)程度の利潤を実現する。年成長率は15%とする。配当者利益を現在より25%増やし、2005年までに売上高で全国トップ50位に入る。
(2)構造調整
(大規模化・大企業化)
・「鋭い中核、えり抜かれた精度」を有する軍事用工業技術生産システムを形成する。
独自の特色を有する国際競争力のある造船基地を4つ形成する。
競争力をもつ造船専業の集団企業を2〜3社育成する。一群の「専業化しており、精鋭で、特色のある、新しい中小企業集団」を育成し、生産能力の後れた企業を淘汰し、長期的に欠損・債務超過の状態にあり、黒字転換の見込みのない企業を市場から撤退させる。
(企業改革)
・改革をさらに進める。親会社が規範的に運営する集団公司の運営システムを完備し、資産再構築と構造調整を組み合わせて、多くの基幹企業を、法人制度を核とした公司へと改編し、経営方式の転換を図り、科学合理的な競争システム、イノベーションシステムに刷新し、人材開発システムと資産分配システムを形成する。
人材の育成も進める。30名ほどの集団公司幹部、300名ほどの各廠で1級の高級経営管理をできる人材、3,000名程度の技術管理者、30,000人程度の高中級の熟練技術者を育成する。
(3)技術開発
・技術開発を加速する。科学研究院の示す改革改編を実現し、集団公司に「船舶工程技術中心(造船技術センター)」「先進製造技術中心(先進製造技術センター)」を設立する。企業を中心に、科学技術と生産を緊密に結合させたイノベーションの体系を形成する。
造船技術の全体的レベルを3〜4級まで引き上げ、「分割建造モデル」から「集中建造モデル」への転換を図る。
超大型船、ハイテク船の設計の核となる部分と建造技術を習得し、低中速ディーゼル機関、補機など主要な舶用製品の製造技術を発展させ、造船効率を高める。
(4)最近の動き
 2002年11月の第十六回党大会の後に開催されたCSSC幹部会で、陳総経理は「今後20年は中国造船業発展のとき」として更に明確な長期目標を示している。主なものは次のとおり。
・2005年に世界のベスト5、2010年に世界のベスト3に、共産党設立100周年にあたる2021年に、世界NO.1の造船集団になる。(5・3・1計画)
・傘下の造船企業を集約し、5大造船基地をつくる。核となる企業は次のとおり。
外高橋造船有限責任公司
滬東中華造船集団有限公司
江南集団造船有限公司
上海船廠と澄西船廠を統合してできる新会社
広州造船公司(仮称)
 
2.3.2 中国船舶重工集団(CSIC)の第10次5ヶ年計画
 中国船舶重工集団公司の第10次5ヶ年計画要綱での基本的考え方は以下のとおり。
「市場に根ざし、船舶を核に、多角経営を展開し、科学技術のイノベーションを行い、効率を旨とする経営方針を堅持し、市場の動向をもとに方向付けを行い、競争力を動力として、改革を以って発展を促し、刷新によって向上を図り、集団公司の全体的な実力を発展強化させ、造船・船舶修理企業を強化し、一群の精鋭として優良ブランドを有する小巨人型の専門企業化を図る。資産経営力を強化し、資産の優良化・リストラを加速させ、資産経営と生産経営の二つの手段を用いて、集団公司の資産増大を図る。」
(1)発展
 民用船舶の設計、建造において、世界の先進レベルと同等、あるいはそれに近いレベルとなり、高付加価値船の建造比率を向上させ、中国船舶工業を強固に発展させ、国際的な造船業における地位に新しい貢献をする。
(建造能力)
 2005年までに建造能力を300万トン、建造量を220万トンと2000年の2倍にまで拡大し、非船舶の生産額を40%以上にまで引き上げ、新技術の経済成長に対する貢献率を40%以上にまで引き上げる。
(2)構造改革
(企業改革・集団化等)
 第10次5ヶ年計画末までに、基本的に集団公司の親会社の体制改革を完了する。多くの基幹企業で、現代的企業制度を確立し、市場競争に適応した、発展する可能性のある企業群を再構築し、比較的整った高いレベルのイノベーションシステムを持つようにする。
 2〜3の国際競争力のある造修繕基地、有名ブランドとなる製品をつくる。
 5年間の努力により中船重工集団公司を、船舶を主とする多角経営の、資産優良の多元的な資本構成の真の国際的な大型企業に育てる。
(経営)
 2005年(第10次5ヶ年計画末)までに、中船重工集団の経営状況を、一段上のレベルに引き上げる。売上収入、付加価値、工業総生産、外貨獲得額など主要な経営指標を2000年(第9次5ヶ年計画末)の2倍とする。
(平均給与)
 グループメンバー企業の従業員の給与平均を当地の中等収入のレベル以上に高める。
(3)技術開発
 民用ハイテク製品の開発に努力し、産業化を実現し、生産全体における非船舶製品の比率を向上させる。
 
2.3.3 旧中国船舶工業総公司時代との比較
 行政面からも業界管理を担い、全国船舶工業発展のための企画を担当していた中国船舶工業総公司が二つに分割され、それぞれの集団公司が独立した経済利益を有し、相互に競争する公司へと変化したことで、第10次5ヶ年計画における発展戦略も、これまでと異なるものとなった。
 二大集団は、船舶工業総公司時代の政府部門の経営モデルから脱して、企業化という方向に向かっている。
 二大集団は内部体制を企業化の方向で発展させ、企業管理、利潤追求を強化し、現代的企業制度を確立しようとしている。内部の専業化と分担を進め、これまでの企業、事業単位の職能に対して調整を進め、内部の集中購買、集中設計の強化などにより企業効率を高め、企業化の歩みを大きく加速させようとしている。
 
2.3.4 二大集団の比
 中国船舶工業総公司の基礎の上に誕生した2社は、それぞ特色を有しており発展戦略も若干異なる部分がある。
 中国船舶工業集団(CSSC)は設立以来、民用船舶の生産量が比較的多く、目標でも民用船舶の建造量で2005年までに世界のトップ5に、2010年までにトップ3に入ることを目標に掲げた。
 中国船舶重工集団(CSIC)は軍用面の生産が比較的多いため、発展でも軍用工業製品提供者の地位の保持と同時に、中国民用船舶工業の主要な力となることを目標としている。
 二大集団は各々がもともと有している強みをさらに強固にするとともに、相手が強みを持つ領域にも参入しようとしている。中国船舶重工集団は民用品の生産能力を、中国船舶工業集団は軍需面の競争力を強化しようとしており、双方の関係は全面的な競争へと発展しつつある。







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