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(3)舶用工業の遅れ
 ここ数年、中国の舶用工業は効率化、小型化、省エネルギー、安全、環境などの技術進歩に追いつけず競争力を低下させつつある。
 一方で、中国の造船所の建造する船舶は、VLCC、大型コンテナ船など、より大型・高付加価値の船へと移りつつあり、高出力低速ディーゼル機関、自動化設備、電子・通信設備、航海計器などより高いレベルの舶用製品が求められるようになっている。(表7)
 この結果、中国建造船に搭載される舶用設備の国産化率は年々低下する状況にあり、1995年の43.3%が、2000年には40%を割り込み、現在は30%にも満たない造船所もあるとみられる(表8)。舶用工業の弱さは大量の外貨流出、建造工期の遅延など中国船舶工業の国際競争力にも影響する。
 
表7 中国建造船の大型化
  万GT 隻数 平均トン数(G/T)
1990年 37 72 5,100
1995年 95 128 7,400
2001年 412 183 23,000
出所:ロイド統計
 
表8 舶用製品の地域別割合
  中国製 日本製 欧州製
バルクキャリヤ 20〜27% 35〜40% 38〜40%
コンテナ船 22% 48% 30%
注)
主機・鋼材を除く
出所:
JETRO上海舶用機械部のヒヤリングによる
 
(4)まだまだ低い技術力
 2001年の中国の船舶輸出を船種別にみると、コンテナ船、プロダクトキャリヤ、LPG船等もあるが、ばら積み船が39%と番多い。VLCC、5,600TEU大型コンテナ船の建造、LNG船の受注等多くの船種について中国は実績を重ねつつあるが(図5)、建造船の品質(技術レベル)でみたとき、「船種にもよるが、中国建造の船舶は1990年代の先進造船国並みのレベルである」というのが、中国の自己評価である。新船型等の自己開発能力、製造技術についてもまだまだ日韓と大きな差がある。(表9)
 
図5 中国輸出船の船種(2001年)
(拡大画面:22KB)
出所:TradeWinds(2002年11月29日)
 
表9 中国が最近新たに建造した船種の例
船型 建造年度 初製造メーカー 国際先進国との比較
5.2万トン大ハッチ多目的コンテナ船 1996 大連新船重工 90年代半ばのレベル
7.3万トンバラ積船 1996 江南造船 90年代半ばのレベル
15万トン・スエズ型タンカー 1997 大連新船重工 90年代半ばのレベル
4.6万トン化学薬品プロダクト・タンカー 1997 大連造船廠 90年代のレベル
11万トンプロダクト・タンカー 1998 大連新船重工 90年代末のレベル
16,500m2半冷式液化ガス船 1998 江南造船 90年代半ばのレベル
22,000m2エチレン液化ガス船 1999 江南造船 90年代半ばのレベル
7.08万トン・セルフローディング・バラ積船 1999 江南造船 90年代半ばのレベル
1,021TEU高速ハッチレスコンテナ船 1999 江南造船 90年代末のレベル
1,700TEUコンテナ船 1999 東中華 90年代末のレベル
5,400TEUコンテナ船 2001 南通中遠川崎船舶工程有限公司 90年代末のレベル
高速RO/RO 2001 広州広船国際股有限公司 90年代末のレベル
15万トンFPSO 2001 大連新船重工 90年代末のレベル
5,618TEUコンテナ船 2002 東中華 90年代末のレベル
VLCC 2002 大連新船重工
出所:
「中国船舶報」2000年5月19日、2002年4月1日等







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