8.2 中国の舶用工業に与える影響
WTO加盟に伴い中国市場が更に開放され、関税が更に引き下げられ、船主、設計部門、造船所が自由に外国の舶用製品を利用できるようになることは中国舶用企業に大きな影響を与える。
WTO加盟後は、国が海外舶用製品の輸入に制約を加えることは望めないと思われ、価格・品質の面で中国製品を凌ぐ外国の同種の製品が、中国市場に入り、中国国産製品のシェアを低下させ、一部中国地元企業を撤退させる等、中国の舶用メーカーは、「外国製品」の直接の打撃を受けることになろう。
8.2.1 関税・非関税措置の影響
関税引き下げにより中国の舶用メーカーは大きな打撃を受けるとみられる。
近年、中国舶用メーカーの設計開発能力不足などが原因で、中国製舶用製品の利用率は年々低下しており、関連企業の経営状況は悪化し、赤字も拡大している。
このような状況の中での舶用製品の関税引き下げと非関税措置の取消しは、海外舶用製品の輸入増大をもたらし、一部の国産製品の市場シェアを奪うことになろう。
特に船舶用の電子機器類は、海外製品が技術的に優れていることに加え、軽量小型で運送も容易なことから輸入量が大幅に増える可能性がある。材料調達では、舶用メーカーもメリットを受けるが、それ以上にデメリットが大きいと思われる。
(参考)暫定税率の影響
「暫定税率」とは、中国国内メーカーの生産コストをダウンさせるため、中国国内企業が供給できない或は国産品が技術、品質基準を満たすことができない一部の原材料、関連部品の輸入に際し、現行税率より低い税率を適用することである。
中国上海税関及び対外経済貿易機会電子司輸入処によると、暫定税率は、一般に公布されているものと内部通達によるものがある。
一般に公布されているものは、「税関輸入税則目録」の「暫定税率表」に掲載されている。
現在、中国造船業に必要な各種舶用設備を含む数十種類の重要設備・部品を対象に、1%の暫定税率が実施されている。この税率は「内部通達」によるものであり、「特定の製品について、中国遠洋運輸公司(COSCO)、中国海運(CHINA SHIPPING)等の特定の船主に対し、通達により実施されている税率」とされている。
この政策は、造船業のコストダウン、競争力の強化には有利であるが、輸入品の価格を大幅に下げることになるため、中国舶用企業の競争意欲をそぐことになる危険性も有る。
8.2.2 投資(外国企業の参入)
WTO加盟に伴う投資環境の改善・中国新造船市場の拡大につれ、海外の舶用メーカーの中国への進出は加速すると思われる。
より多くの外国企業が中国沿海地域を中心に、独立資本あるいは合弁の企業を設立するようになり中国企業と直接競合するようになる。
舶用製品の場合、中高速機関等にマジョリティ条項は残っているが、ローテク製品を含め幅広い製品・分野で外国企業の100%独資会社が設立可能なことも、中国進出の判断を容易にする一因になろう。
外国企業は技術、品質、規模、資金、知名度、アフターサービス等の点で優位にあり、中国の舶用メーカーは厳しい立場におかれることになる。
外国からの技術導入が進まない中国の地元舶用メーカーはこれまで以上に厳しい競争にさらされることになろう。
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