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7 非関税措置
 物の輸出入については税率以外にもWTOで多くの約束がある。
 
7.1 アンチダンピング協定等
 WTOには「アンチダンピング協定」及び「補助金及び相殺措置に関する規定」がある。中国も1997年に制定した「アンチダンピング及び反補助金条例」をWTOに対応して改正、2002年1月1日から新しいアンチダンピング及び反補助金条例を施行している1
 
 改正条例はWTO 注)の「アンチダンピング協定」等と整合している。
 
7.2 非関税措置(輸入数量割当)
 WTOで問題になる非関税措置の一つに輸入数量割り当て等の輸入制限があり、中国も一部製品について輸入割当を行なっているが、これらについては2005年1月1日前に廃止される予定である。移行期においても毎年輸入額を増やすとされている。
 
 輸入数量以外の非関税措置として入札を求めている製品がある。これは、中国国内に一定の技術力があるメーカーが存在する製品について、入札という方法により外国製品と同等の条件で競争・参入する機会を与えようとしているものと思われるが、かかる入札制度についても、2005年1月1日前(船舶は2004年1月1日前)に廃止される予定である。
 
1 参考文献JETRO発行「中国経済」2002年2月号「中国におけるアンチダンピング・補助金相殺制度の新たな進展及び課題」
 
7.2.1 現状
 「機械・電子製品の輸入管理方法」により、2002年1月1日から機械・電子製品は次のように分類されている。
 
(1)第1類
 第1類は、第1項目と第2項目に分けられる
第1項目は、輸入に際し、割当量のある製品で、5種類(76関税番号)である。
第2項目は、「特定製品」と呼ばれるものであり、17種類(42関税番号)である。
輸入量の制限はないが、輸入に際しては、国際入札が用いられる。
 
(2)第2類
 許可証はいるが、自動的に許可される機械・電子製品である。
 
(3)第3類
 完全に自由化されており、許可証の必要ない機械・電気製品である。
 
 現在(2002年10月)、船舶は、「特定製品」として管理されており、うち油槽船、貨物船と貨客船、タグボート・押船、浚渫船の四種類の船舶が特定製品に指定されている。舶用ディーゼル機関等舶用製品も一部含まれている。これらの製品を輸入しようとする場合、輸入企業は国際入札の方式をとって購入する。輸入企業は、輸入前に対外経済貿易合作部に「機械・電子製品輸入許可証」を申請、「輸入許可証」をもって、税関で通関手続きを行なう。
 
7.2.2 自由化
 冷蔵船、漁船・加工船その他の船舶が2001年1月に既に特定製品から外されており、残りの油槽船、貨物船と貨客船、タグボート・押船、浚渫船に対する輸入制限も2004年1月1日前に廃止される。
 舶用製品も、2004年1月1日からは輸入制限を受けない。
 
 対外経済貿易合作部は、最近、中国のWTO加盟に関する法律公文書を発布した。この中で中国はWTO加盟に関する議定書の中で承諾したように、2004年1月1日から、油槽船(プロダクト・タンカー、油タンカー)、LPG船、LNG船、貨物船及び貨客船(コンテナ船、Ro/Ro船、ばら積み貨物船、専用多目的船等)、曳船及び押船、浚渫船の輸入制限を廃止するとしている。同時に機械・電子製品ではディーゼル・エンジン(出力が14kW以上、132.39kW(180馬力)以下の圧燃式ピストン内燃機関)、デジタル制御旋盤、プラズマ・ガス切断機及びその他の電子、イオンを用いて各種の材料をイオン・アーク処理する加工旋盤、デジタル制御盤などの輸入制限が取り消される。
 
(参考)根拠法令
 中国は、1984年1月に国務院が公布した「中華人民共和国輸入貨物許可制度暫定条例」、対外経済貿易部(対外経済貿易省)と税関総署が共同で公布した「中華人民共和国輸入貨物許可制度暫定条例実施細則」により輸入貨物を許可証で管理してきた。
 
 1994年1月に対外経済貿易合作部(対外経済貿易合作省)、国家経済貿易委員会が共同で公布した「メカトロニクス製品輸入管理の暫定方法」、国務院が公布した「特定製品輸入管理実施細則」や「中華人民共和国輸出入貿易管理措置(1998)」も、中国における輸入製品に対し管理を実施する根拠となっていた。
 
(参考)中華人民共和国輸出入貿易管理措置(1998)
 「政府は、メカトロニクス製品に対し輸入量管理以外の管理を実施する。即ち、国内で技術を開発、又は導入したが、工業生産が未だ初期段階にあり、かつ、今後発展を加速させる必要があるメカトロニクス製品を特定製品リストに載せ、公開入札を実施する。政府機電輸出入弁公室は、落札結果に基づき輸入証明証を交付し、税関が確認する。」
 
表6 特定製品(船舶関係)に対する輸入入札の廃止スケジュール
税番号 製品 取消すスケジュール
84089092 ディーゼル・エンジン(出力が14kW以上、132.39kW(180馬力)以下の圧燃式ピストン内燃機関) 2004年
84431990 プラズマ・ガス切断機(プラズマ・アーク切断機) 2004年
84569910 デジタル制御電子加工旋盤(放電処理を用いるデジタル制御加工旋盤) 2004年
84569990 その他電子、イオンなどを用いて各種の材料をイオン・アークで処理する加工旋盤 2004年
84571010 立型加工センター 2004年
82571020 横型加工センター 2004年
84571030 門型加工センター 2004年
84571090 その他加工センター 2004年
84581100 デジタル制御横型旋盤 2004年
84714991 集散型制御システム(システム形式の分散型生産過程制御設備) 2004年
89012011 10万重量トン以下のプロダクトタンカー 2004年
89012012 10万重量トンを超え30万重量トン以下のプロダクトタンカー 2004年
89012013 30万重量トンを超えるプロダクトタンカー 2004年
89012021 15万重量トン以下の原油タンカー 2004年
89012022 15万重量トンを超え30万重量トン以下の原油タンカー 2004年
89012023 30万重量トンを超える原油タンカー 2004年
89012031 容積2万立方メートル以下の液化石油ガス運搬船 2004年
89012032 容積2万立方メートルを超える液化石油ガス運搬船 2004年
89012041 容積2万立方メートル以下の液化天然ガス運搬船 2004年
89012042 容積2万立方メートル超の液化天然ガス運搬船 2004年
89012090 その他の液体貨物運搬船 2004年
89013000 冷蔵船(8901.20の船舶を除く) 加盟時
89019021 6000TEU以下のコンテナ船 2004年
89019022 6000TEUを超えるコンテナ船 2004年
89019031 12万重量トン以下のRo/Ro船 2004年
89019032 22万重量トンを超えるRo/Ro船 2004年
89019041 15万重量トン以下のばら積船 2004年
89019042 15万重量トン超30万重量トン以下のばら積船 2004年
89019043 30万重量トンを超えるばら積船 2004年
89019050 多目的船 2004年
89019080 その他の貨物船と貨客船 2004年
89020010 漁船、加工船、その他漁獲物の加工、貯蔵船舶 加盟時
89040000 タグボート、押船 2004年
89051000 浚渫船 2004年
(議定書附録3により)







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