4.3 投資ガイドライン
中国での投資にあたっては合弁会社にせよ、独資会社にせよ認可が必要となる。その認可にあたっての基準が「外国企業投資方向指導規定」(投資ガイドライン)及び「外国企業投資産業指導目録」(投資リスト)である。
この投資ガイドラインについて、中国は加盟時の交渉でWTOと整合するよう修正すると約束しており、2002年に入って修正が行なわれ、「外国企業投資方向指導規定」(新投資ガイドライン)が2002年2月11日に公布、「外国企業投資産業指導目録」(新投資リスト)が2002年3月11日に公布され、2002年4月1日から施行された。
4.3.1 新投資ガイドライン
主な改正内容は次のとおりである。
1) |
投資対象業種毎に、奨励、許可、制限、禁止の4つに分類する基準を設けたのは同じであるが、旧ガイドラインでは制限類をさらに制限類(甲)、制限類(乙)に分類し認可手続き等に差を設けていたのが撤廃された。 |
2) |
製品全部を直接輸出する許可類外国企業投資を奨励類外国企業投資とみなす等輸出を奨励する規定が設けられた。 |
3) |
中西部地区への投資奨励規定が設けられた。 |
4) |
国務院業界管理部門の審査許可の規定がなくなる等許認可手続きの一部が簡素化された。 |
4.3.2 新投資リスト
新目録では371の産業を「奨励類」、「許可類」、「制限類」、「禁止類」の4類に分け、うち「奨励」類を従来の186から262に拡大した。制限類は、これまでの「甲」「乙」分類を廃止したうえで対象を112から75に削減している。
なお、投資リストの「奨励類」「制限類」、「禁止類」に記載されていない外国企業投資は「許可類」となる。(投資ガイドライン第四条)
4.4 造船・舶用工業への投資
造船・舶用工業では、次の投資が「奨励類」の製造業の中で交通運輸設備製造業に分類されている。
(新投資リスト)(抄)
<奨励類」 三 製造業 (十八)交通運輸設備製造業>
15 |
舶用低速ディーゼル機関のクランクシャフトの設計及び製造 |
16 |
特殊船、高性能船の修理・設計及び製造(中国側が相対的にマジョリティ) |
17 |
舶用中高速ディーゼル機関、補機、無線通信、航海設備及び同部品の設計及び製造(中国側が相対的にマジョリティ) |
18 |
FRP漁船、レジャー艇の製造 |
「奨励類」に属し、技術を譲渡する投資プロジェクトについては、投資総額の枠内で輸入する自社用設備は関税と輸入時の増値税がこれまで同様免除される(「外商投資プロジェクトで免税を認めない輸入商品目録」記載の品目を除く。)ただし、船舶の輸入については特殊船舶を含め特別な事情がある場合を除き免税としないとされている。(「外国企業投資産業指導目録」関係の問題に関する税関総署の通知 署税発[2002]81号)
(参考)
2002年4月1日以前の「外国投資産業指導目録(旧目録)」では船舶工業(中国が株式を支配するまたは主導的地位を占める)として「特殊船、高性能船、3.5万トン以上の船舶の修理・設計及び製造」と「舶用ディーゼルエンジン、補機、無線通信、航海援助設備及び同部品の設計及び製造」が制限類(乙)であげられていた。旧投資リストでは、奨励類及び制限類(乙)のプロジェクトについて輸入時の関税及び増値税が、免除されていたことから制限類(乙)に該当する船舶工業も、関税及び増値税が免税となっていた。新目録では奨励類に記載されているなど投資を奨励する内容になっている他、投資ガイドラインにあるように認可手続きも緩和された。
「特殊船、高性能船の修理・設計及び製造」「舶用中高速ディーゼル機関、補機、無線通信、航海設備及び備品の設計及び製造」については制限類から奨励類にかわったものの、優遇措置は新旧リストで基本的に同じであり、「中国が株式を支配するまたは主導的地位を占める」というマジョリティ条項は依然残っている。特殊船・高性能船の定義は明確になっていないが、特殊船・高性能船以外であれば、外資がマジョリティをとって造船所を建造できる余地は残されているといえる。
(参考)
「高性能船」(「中国国防科技名刺大辞典」より)
高速・高耐侯性船で、具体的には、水中翼船・エアクッション艇・高速双胴船・ウエーブピアサなどを指す。
「特殊船」(中国船舶工業総合経済研究所の専門家意見)
高性能・高付加価値船を言う。大型コンテナ船・大型タンカー等と異なり、一般に小型である。具体的には、作業船、海洋探査船等がある。
(参考)
外国企業が中国国内に技術譲渡することで得た収益に対する営業税・所得税(許可制)の免除制度もある。
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