介護保険ではカバーできないサービスに力を入れていきたい
また利用者だけではなく、協力者も楽しみながら活動に参加している様子も窺われる。
たとえば、ある70代の一人暮らしの男性。することもなく、日がな家に閉じこもる生活を送っていたが、片岡さんが「一緒にボランティアをやってみませんか」と誘ってからは、だんだんと友人も増え、今ではお年寄りを病院へ連れて行ったり、子どもの送り迎えをする送迎の仕事を生きがいのようにしている。そうかと思えば、休日になると病院への送迎を中心に、草むしりや側溝の掃除などに励むサラリーマングループもいる。彼らは、「仕事、仕事の毎日でしたが、お年寄りの気持ちにふれ、手助けの大切さがわかったような気がする」と活動のやりがいを話す。
「協力会員は現在、下は高校生から上は82歳までいますが、それぞれの人が今までの経験を生かしながら活動し、その体験の中から生きがいを見つけてくれている。そういう姿に触れられるのは、とてもうれしいことですね。今後は子育て支援にも力を入れるなど、若いお母さんたちのお手伝いもさせていただくことで、会員の輪をさらに広げていきたいと考えています」
このように、同会では、設立時から変わらぬボランタリーを基本とした市民活動を行っており、その理念を貫くために、法人格は取得しても介護保険サービス事業には参入しないとの方針を取っている。
「私たちはお金儲けのためではなく、助け合える地域社会づくりのためにこの会を立ち上げたわけですから、介護保険事業は専門のサービス事業所にお任せすればいい。その代わりに、介護保険の認定からはずれた人々の支援や、人間らしい生活を送るために保険では対応できないサービスに力を入れていくことで、住み分けをしようと考えました。それによってニーズが減ってもそれはそれでいいと思っていましたが、蓋を開けてみると、当初は混乱からか逆に利用者が増えたくらい。その後も、在宅介護支援センターからの依頼で、週5日の支援のうち介護保険で3日まかなうので、残りの2日はうちに頼みたいといったケースや、30分刻みの介護保険サービスではなく、時間に追われず手伝ってもらいたいといったケースなども多く、ニーズや支援内容にそれほどの大きな変化は見られませんでした」
介護保険でまかないきれない部分は山ほどある。共に連携させて活動するか枠外のみで活動するか、その判断は団体により様々だが、さわやか高知は明確に方向を定めた。この地に播かれたやさしさとふれあいの芽をさらに育くんでいくためにも、ますますの活躍を期待せずにはいられない。
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車イス専用車による通院介助(上)と移送サービス
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介護研修風景
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毎年1月に高知大丸前で行うチャリティーバザー
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代筆のお手伝い
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さわやかレクリエーション。ブーゲンビリアの下でメロンやスイカを食べながら楽しい1日 |
高知県高知市に本拠地をおく「さわやか高知」は、市民一人ひとりの価値観を大切に、有償(非営利)による「助けあいの市民組織」の活動を通じて、市民が安心して生活できるふれあい社会の構築を目的として設立されたNPO法人。主な支援サービス内容は、(1)食事、買い物、掃除などの家事、(2)外出、通院、送迎、お年寄りや障害者の介助、(3)薬取り、役所への書類提出、代筆などの代行、(4)日常、保健、福祉の相談など。正会員になるには入会金500円、年会費3000円(学生1000円)が必要で、サービスの利用料は1時間600円。活動に対する謝礼金は同480円(120円は事務経費)。( →連絡先は最終頁)
1994年 |
4月 |
「さわやか高知」設立 |
1996年 |
3月 |
日本財団より車イス専用車を寄贈され、移送サービスを開始 |
1998年 |
2月 |
独立事務所を持つ |
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5月 |
設立5周年記念イベントとして、「高齢者・障害者の生き生きファッションショー」を開催 |
2000年 |
2月 |
介護保険直前フォーラムを開催 |
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6月 |
NPO法人格を取得 |
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NTTテルウェルより委託を受け、2級ホームヘルパーの養成研修を実施 |
2001年 |
11月 |
法人化1周年記念イベントとして、小中学生を対象に「高齢者に対するメッセージ募集」を行い、表彰式を開催 |
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