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喜・涙・笑 ふれあい活動奮戦記
安心して暮らせる高知を目標に心の部分を大切にした支援サービスを提供していきたい
NPO法人地域サポートの会 さわやか高知(高知県)
 
NPO法人地域サポートの会 さわやか高知
「この活動を始めて9年目になりますが、忘れられない出来事のひとつに、団体設立5周年記念のイベントがあります。実は私、このイベント開催の20日ほど前、準備に追われている最中に、ボランティア中の事故で背骨を骨折してしまいましてね。入院は拒んで首から腰までのギブスをつけて仕事を続けたものの、思うように動けず途方に暮れていたところ、スタッフやボランティアの方々が交渉事から各種手配までさまざまな形で力を貸してくれたんです。おかげで、無事開催にこぎ着けたばかりか、大成功を収めることまでできました。このときほど、皆さんのやさしさが身に染みたことはありませんし、絆や交流も深まりました。そして、こうした素晴らしい仲間とともに活動できる幸せ、それが何物にも替えがたい宝物であることに、改めて気づかされたんですよ」
 
 こう語るのは、「さわやか高知」の代表を務める片岡朝美さん。日だまりのように温かく、芯はしっかりしていて、何があってもめげない。土佐の方言でいう「はちきん」をまさに地でいく女性である。
 
さわやかレクリエーション。ホテルの庭園で全員集合
できることから始めようと市民活動としてのボランティアを開始
 片岡さんが思いを同じくする仲間5人と活動を始めたのは、今から10年ほど前のこと。「当時、高知県の新知事として橋本大二郎知事が就任したんですが、草の根の声を聞いてくださるということで、市民からの陳情が知事の元に殺到しましてね。その現状を見聞きするにつれ、何だか、同じ高知県民として恥ずかしい思いでいっぱいになってしまって・・・。それで、自分たちの住む地域のことは、何もかも行政頼みにするのではなく、できることは自分たちでしなければ、と考えるようになったんです。そうしないと、まちの、高知県の将来に夢を持つことはできないと」
 ぐずぐず言わずにまずは行動ありき。その市民活動の実践として最初に取り組んだのは、高知県初の美術館落成祝いのための寄付金集め。そして、その過程で地域が抱える問題点の市場調査を併せて行ったところ、介護の苦労や将来への不安を口にする人が多く、高齢化の問題が深刻であることに気づかされたのだという。
 「どうすればみんなが安心して生活できるようになるんだろう・・・。そんなことを話し合っているときに、たまたま新聞広告でさわやか福祉財団の存在を知りましてね。さっそくリーダー研修会に参加したことから、地域住民がお互いに参加し、助け合っていける社会を自分たちの手でもつくりたいと思うようになり、有償ボランティア団体の設立に踏み切ることにしたんです」
 立ち上げに必要な資金はバザーなどをして何とか集め、1994年4月、高知市を拠点として「さわやか高知」は船出を遂げた。
 
「知事ご夫妻も制服のエプロンを身につけ、座を盛り上げてくれました・・・」
 
高齢者・障害者の生き生きファッションショー(設立5周年記念事業)
利用者の視点に立った活動で精神面のサポートを重視
 それから8年余り。「できる時に、できることを、無理せず、楽しく」をモットーに助け合い活動を実践。スタート時点では20名ほどだった会員も、現在では利用会員が210名、協力会員が195名となり、活動時間も年間で1万5000時間以上と、着実に助け合いの輪を広げてきた同会。
 「活動内容は大きく分けて、家事援助、身体介助、送迎・移送の3つになりますが、このうちもっとも需要が高いのはリハビリや透析のための通院や、障害者の通学といった移送サービスです。これは、自分一人では移動が難しい方にとって、日常生活を営むのに欠かせないものとなっていますが、私たちはそれだけではなく、こもり切りのお年寄りの外出支援など、生活の質を高めるためのお手伝いにも力を入れているんですよ」
 たとえば墓参りに行く、親しい人の臨終の場に駆け付ける、孫の結婚式に出席する際のお手伝い等々。また、「週に1度、どこかに連れてってほしい」との依頼を受け、観劇に出かけたり、いっしょにお寿司を食べに行ったり、花見やドライブを楽しむなど、さまざまなレクリエーションの機会を提供しているケースもあるという。
 「高知県の場合、子どもが県外に在住し、高齢者の一人暮らしや夫婦2人だけという世帯がとても多いんです。皆さん口にこそ出さないけれど、接していると寂しさがひしひしと伝わってきます。きっと、不自由をしているからサービスを受けたいというだけではなく、一つの行為を通じて生まれる人と人とのつながり。そういう温かなふれあいに飢えているんでしょうね」
 だからこそ、同会では精神面のサポートを重視していると語る片岡さん。こうした一人ひとりの思いを汲み、生活や価値観を大切にする姿勢が、利用者に喜ばれ、たくさんの人たちが気持ちよく集える仕組みづくりへとつながっていったのだろう。







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