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特集 新しいふれあい社会を考える
こんな地域通貨はどうですか?
助け合いも地域振興もまるごと“フジ通貨”で
 
 世の中不景気である。年金はカットされ、給料も削減、リストラも激しい。増税もさらに進むだろう。と、こう思い返すと新年早々何とも暗い気分だ。しかし嘆いてばかりでも始まらない。これからは良くも悪くもすべて行政頼みでは立ち行かない時代。残るは市民の力。ならばと、『さぁ、言おう』では、新年号特集として、我々市民の力で社会を明るく変えていく仕組みを力強く提案しよう。題して“こんな地域通貨はどうですか―?”
 
「最近、あちこちで地域通貨って聞くよね。知り合いも気軽な助け合いの一環でボランティアとして始めたらしいんだ」
「それに地域経済の活性化にも役立つんだろう?この前、ぜひ推進しようなんて、役場の人と商店会の会長さんが話してたよ。期待したいね、今、不景気だし」
「ただ逆に地域に影響を与えるくらい広めようとしたら、実際のお金と区別がつかなくなって、それこそ財務省が黙ってないよ」
「本当に心おきなく広めるためにはそろそろしっかりとルールづくりが必要ということか。せっかく市民が自分たちで頑張ろうっていうんだから、自治体や国はそこをよく理解して支援してほしいよね。何かいい案はないのかな?」
「それが“フジ通貨”だよ」
おらが町の『フジ通貨』
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地域通貨「フジ」構想 循環の仕組み
 
新しいふれあい社会づくりはみんなの手で
 架空の町フジ町では、住民に、さびれつつある町の商店街で大いに買い物をしてもらい、また、食料品は町の農産物を買ってほしいと考えている。高齢化が進む中、住民相互間の助け合いももっとしてほしいし、河川の清掃などのボランティア活動もしてほしい。さらに、リサイクル運動も進めたいと願っている。
 それらの願いを、あまり税金を使わず、地域通貨を使うことで一挙に実現することとした。
 まず、町と住民有志は、NPO法人FUJI(フジ)を設立し、代表には、町の信用金庫の理事長を選んだ。FUJIは、可愛いウサギを印刷した地域通貨フジを発行する。一つは青色の200フジ・30分券であり、もう一つは赤色の400フジ・1時間券である。住民は、FUJIに180円払って200青フジ券1枚を、また、400円払って400赤フジ券1枚を受領できる(図参照)。
 
地域経済の活性化 図A
 FUJIは、支援したい地元商店や農家などをフジ取扱事業者に指定する。住民は、取扱事業者の200円相当の商品やサービスを、200青フジ券で購入できる。つまり、20円安く買えることになる。
 取扱事業者は、FUJIに200青フジ券を渡すと、180円を受領できる。つまり、20円値引きして売ったことになる。
 住民は、FUJIから購入した青フジ券だけでなく、後述するように、助け合いやボランティア活動、リサイクル品販売などによって入手した青フジ券によって、取扱事業者の商品やサービスを買うこともできる。
 
青フジ券による助け合い 図C
 住民は、手元の青フジ券を、住民相互の助け合いに使うこともできる。助け合い活動に参加したい住民は、FUJIに、自分ができる活動を登録する。たとえば、保育園児の送迎と預かり(ただし、2時間以内)、高齢初心者に対するパソコン指導、買い物代行、車イスによる外出補助など。誰でも20や30の人助け能力を持っている。
 助けてほしいときは、そのリストを見て直接頼んでもよいし、FUJIの担当者に仲介してもらってもよい。2時間助けてもらったときは、青フジ券4枚を渡すことになる。
 
赤フジ券による助け合い 図D
 重い要介護状態になって、人助けをするのは難しいが援助は欲しいという人には、赤フジ券を使ってもらう。車による送迎や役所の手続き代行など、介護保険ではやってもらえないサービスを頼み、1時間について赤フジ券1枚を渡す。赤フジ券を得た人は、それを貯めておき、将来自分や家族が要介護状態になったときなどに、これを使ってサービスを頼む。ただ、長期間保持せず、青フジ券2枚分として青フジ券による助け合いに使ってもよいし、赤フジ券で取扱事業者から商品やサービスを購入したり、リサイクル品を購入したりしてもよい。
 400赤フジ券を入手した取扱事業者は、これをFUJIに渡すと、360円を受領できる。差の40円分は、赤フジ券による助け合いの仲介作業を担当しているFUJIに対し寄付したことになる。
 青フジ券は、循環を促すため、3年に1度、色を変える(古いものを無効にする)が、赤フジ券の効力は、無限とする。
 
リサイクル運動 図E
 住民は、FUJIにリサイクル品を寄付するか販売委託をする。品物は、円でもフジでも売ることができる。委託品が売れたときは、FUJIは、その半額相当分を、青フジ券で委託者に渡す。







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