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情報誌「さぁ、言おう」 2002年8月号

 事業名 高齢者のためのボランティア普及啓発活動
 団体名 さわやか福祉財団 注目度注目度5


グループホームの窓辺で
ホームから自宅に通う
ゴンペイが待っている
 「おはようございます。朝食の用意ができました」
 7時半に館内に流れるアナウンスとともにOさん(73歳)の1日は始まる。「これがぼくの目覚ましでね。特別の用事でもなければ、たいてい7時半まで寝てるなあ」
 自室の洗面台で顔を洗って、階下の食堂に下りて行くころには、もう他の入居者は朝食を食べ始めている。メニューはお粥かパンに副菜や常備菜など3〜4品。ホームの経営者の奥さんが用意してくれる朝食は、温かくておいしい。
 「一人暮らしじゃこうはいかないなと思うのは食事のときだね」
 食堂のテレビでNHKの朝の連続ドラマを見終わると8時半。それから自室に戻って一服し、出かける準備をする。
 Oさんが毎日出かける先は、ホームから4キロほど山あいにある自宅だ。家には誰もいないが、犬のゴンペイがOさんを待っている。朝、ゴンペイを犬小屋から放ってやり、夕方また犬小屋に連れ戻す。この日課のために、4キロの道を軽トラックで往復する。
 ゴンペイの餌は、ホームの奥さんが前日の残飯を取り分けておいてくれる。Oさんが提げていた餌箱をのぞいたら、焼き魚の食べ残しがぎっしり入っていた。
 「ほんとに大助かりですよ。そうでもなきゃ、とても飼ってはいられないもの」
 軽トラックに乗せてもらって一緒にご自宅を訪ねると、ゴンペイはしっぽを振って待っていた。
定年後に始めた田舎暮らし
 Oさんの自宅は大きな山桜や竹林に囲まれた山里にある。隣家は見えず、カッコーの鳴き声が間近に聞こえる。ここに居を構えたのは、郷里での35年間の教員生活を終えた60歳の初夏。定年後は田舎暮らしとボランティアで生きようと、以前からの計画で郷里の家をたたんで妻とともに引っ越してきた。
 インドのヒンズー教では、人生を「学生(がくしょう)期」「家住(かじゅう)期」「林住(りんじゅう)期」「遊行(ゆぎょう)期」の4つに区切り、けじめをつけて生きることを説いているが、静かな山里の生活はまさにOさん夫婦の「林住期」そのものだった。体を動かすことが好きなOさんは、山林に銀杏の苗木を植え、畑を耕し、田んぼをつくり、炭を焼いて自然と親しむ暮らしを楽しんできた。
 夫婦で取り組んだボランティアは、海外の途上国で開発援助に従事する青年たちを側面から支援すること。自宅の近くに私費を投じて合宿所をつくり、青年たちにサバイバル体験の実地研修を行ってきた。
 そうした暮らしを10年送ったのち、Oさんはグループホームに入居した。その前年に妻を脳梗塞で亡くし、自身も無理がたたって心臓病を患い、いよいよ独りの生活が限界に達したからだった。
妻の死後、ホームに入居
 「家内に死なれて日が経つにつれ、一人ぼっちの寂しさというか、人間の孤独ということが実感として迫ってきてね。しーんと静まりかえった家に一人で眠るとき、それから黙々と飯を食べるときもね」
 寂しさを振り払うように山仕事に精を出し、青年期に登った山を縦走し、郷里に帰省し、旅行会に参加し・・・、と目一杯動き回っているうちに心筋梗塞を発症して長期入院。退院後の一人暮らしは無理と、知人の勧めで入居したのがこのホームだった。
 「ぼくの家からこんなに近いところにホームがあったなんて。手を合わせて感謝しましたよ。ホームにいれば食事の心配はしなくていいし、安全は確保される。娘たちが一番安心したと思いますよ」
 妻が元気だったころから、自分たちで暮らせなくなったら有料老人ホームに入ると決めていた。娘たちにもそう話していたし、大手の有料老人ホームに体験入居してみたこともある。そこは設備も立派で、いろんなクラブ活動があって印象は悪くはなかったが、入居したいとまでは思えなかったという。
 「クラブ活動だけじゃつまらんもの。やっぱり仕事ができるうちは仕事していたいんだ」ホームに入居して健康を取り戻したOさんは、それからというもの毎日自宅に通って、農作業を再開。炭を焼く日は朝の6時半に窯に火を入れるため、ホームの朝食前に自宅まで1往復するそうだ。
グループホームが地域にあれば
 住み慣れた地域にふれあい型のグループホームがあれば、Oさんのように一人になっても今までの居場所を捨てずに、しかも安心して暮らすことができる。自宅のある集落では隣人と立ち話をし、ホームに戻れば経営者の奥さんが「お帰りなさい」と迎えてくれるOさんの1日を見て、これはグループホームに暮らす一つの理想形なのではないかと思った。
 もちろん、それが叶うのは経済的な裏付けがあつてのこと。ホームでの生活費と自宅の維持費という二重の出費を賄える人ということになるのだろう。教員生活35年のOさんの年金でもラクではないという。
 初めのころは朝から夕方まで自宅にいて、昼食は自分でつくっていたが、だんだん昼食もホームに帰って食べることが多くなった。
 「そうなると不思議なもので、仮の宿だと思っていたホームのほうが自分の家のように思えてきてね。要するに、人間って三度三度ご飯を食べて眠るところが自分の家なんだろうね」
 それを住み慣れた地域の中で手に入れたOさんは幸せだと思う。
 
ふれあい型グループホームで暮らすには、お金はどれくらいかかるの?
 ふれあい型グループホームは、一人になった高齢者が食事などの生活支援を受けながら仲間と暮らす小規模施設。個室と共用スペースをもち、身体が不自由になっても生活できるようバリアフリー対応になっていればなおよい。こうした施設を一から建設しようとすれば、土地の取得、建築費、内装費、什器費などかなりの初期投資を必要とするため、入居時に入居分担金などの名目で一時金の支払いを求めるところもある。
 一時金の額は、それが生涯にわたる利用権の取得か、所有権を伴う分譲か、あるいは賃貸借による入居かによって異なってくるが、300〜400万円、1000万円というところもある。ただし、一般的に入居金には償還期間が設けられていて、入居月数によって返金される返還金制度があるので、説明を求めるとよいだろう。
 ふれあい型グループホームの本質は高齢者が共に暮らすというソフトの部分にあるので、建物は既存の寮やアパートなどの再利用で一向に構わない。そういうケースでは初期投資がない分、一時金の額もごく少額に抑えられる。いかに廉価な、あるいは一時金のかからないグループホームを増やしていくかが今後の課題であろう。
 入居金は安いけれど月額利用料は高めであったり、また逆のケースもあるので、まず月額の総費用をパンフレットなどで確かめておこう。毎月支払う費用は各ホームによって異なる。建物面積や居室面積、設備、人員の配置等各ホームにはそれぞれ特色があり、費用の原価はさまざまな積算によって出来上がっているためで、まずホームを見て、居住性を体験して、費用について納得することが必要だ。
 月額利用料は平均的なところで14〜15万円。たとえば、あるホームの生活費は1人月額13万6000円。この内訳は、食費3万円、家賃7万円、全体の家事契約2万円、共益費1万6000円となっている。共益費とは共有スペースの光熱費や設備の維持管理、地域交流費などだ。
 その他、病院に通院、入院した際の医療費や、外部の介護サービスを利用した場合の介護費は基本的に個人が支払うので、月額利用料プラス数万円を必要経費と考えておくとよいだろう。







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