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温かみのあるサービスをモットーに活動を展開
 そんな同会の活動は、設立の経緯に象徴されるように、「空いている時間を利用して、みんなが気兼ねなくできることで助け合う」が基本で、現在は1か月に100時間程度の利用があるという。多いのは、お年寄りや障害者の通院や買い物といった外出の手伝い、掃除や洗濯などの家事援助だが、「ペーパードライバーなので助手席で運転を指導してほしい」「体調を崩したので7段のひな飾りを片付けてほしい」といった、日常の困り事にも快く対応している。
 「最初は手助けを頼むのに少なからず抵抗感を持っていた方も、一度サービスを利用すると電話1本で気楽に頼めるシステムの良さがわかるのか、繰り返し利用される方も多い。“困り事が少し減っただけでも、落ち込んでいた気持ちが少し明るくなった”という声を聞くと、本当にうれしいですね」
 また「介護保険対応のサービスだと、毎回違うヘルパーだし、時間単位で決められたことをこなすだけなので人間味が感じられない。でも、「鳥取たすけあい」なら決まった人を派遣してくれるし、何よりやさしさや思いやりがある」といった声も聞かれるそうだ。
 「私自身、排泄介助の最中に、ヘルパーさんから“時間ですから帰らせてもらいます”と言われたことがあり、本当に悔しく、情けない思いをしました。その一方で、純粋な心を持ったボランティアとの出会いで、心が救われたことも一度や二度ではない。人は汚れでは死ぬことはありません。でも温かなふれあいがないと、心が沈んで、体も元気を失っていくことになる。だからこそ私たちの会では、単なる労働力の提供ではなく、心と心のつながりを大切にしたサービスを提供していきたいんです」
 
たすけあい説明風景
 
ボランティア説明会
 
さわやか福祉財団が福岡で開催した「リーダー研修会」に参加
声を上げることで課題を解決していきたい
 会が設立されて丸6年。背伸びをすることなく、できることをコツコツと楽しみながら行ってきた同会だが、この間に、「声を上げることの重要さ」を痛感したとも小柴さんは言う。
 「行政の壁に跳ね返されて、悔しい思いをしたことも何度もあります。でも3年目くらいから、だんだんと行政にもモノを言える状況になってきました。言うはタダだし、言わなければ状況は何も変わらないのですから、まずはぶつかってみるに限る。そうすることで思いがけずいい方向に向くこともあるし、見えてくる課題もありますからね」
 あるシンポジウムにパネリストとして参加したときなどは、「IT(情報通信技術)が進んだ社会だからこそ、障害者にもできる仕事がたくさんある」という話をしたところ、県障害福祉課から会議などの録音テープを文書化するテープ起こしの依頼が入り、それをきっかけに仲間に呼びかけをして、仕事依頼の受け皿として小規模作業所をつくることもできた。これも小柴さんの発言や姿を通して職員が障害者の実態を知り、関心を持つようになった成果である。
 「今の我が家は、この作業所と事務所を兼ねているので、毎日大勢の人たちが出入りしています。そういう意味では、この場が、障害者と健常者をつなぐステーション的な役割になればいいなとも思っています。福祉とは頭で理解するものではなく、自分とは違う人と日ごろから接する中で、自然と学びとっていくものですからね」
 最後に今後の展望を伺うと、「必要なところに手が行くのが一番の幸せ。一人でできることは限られているけれど、多くの人が集まればいい知恵もわくでしょうから、みんなで頑張っていきたいですね」と、屈託のない明るい声が返ってきた。助けられる側の気持ちが代弁できる貴重な存在として、今後もますますの活躍を期待したい。
 
鳥取たすけあいの足となって活躍する車
 
事務局スタッフ送別会。右端が小柴さん
 
地元鳥取で開催した「1日リーダー研修会」から
 
 鳥取県鳥取市に本拠地を置く「鳥取たすけあい」は、高齢化が進み、家族が少なくなっていく中、お互いが助け合い、対等の立場で、さまざまなサービスの交流を行いながら、生きていく地域社会を目指している会員制の市民組織。主なサービス内容は、高齢者や障害者の介助や介護、送迎・移送サービス、洗濯や食事づくり等の家事援助、産前産後の手伝い・子守など。会員になるには、出資金2万円(退会時に返還)が必要。サービスはチケット制で、1時間6点とし、30分ごとに区切って、会が発行するサービスチケットを活動した会員に渡す。チケットを受け取った会員は、点数が200点になった時点で現金で受け取るか、時間を預託するかを選べる(そのうち2割は事務費に充当)。(→連絡先は最終頁)
 
1994年9月
さわやか福祉財団主催のリーダー研修会(大阪)に参加
1995年11月
同リーダー研修会(福岡)に参加
1996年2月
勉強会を開催
4月
鳥取たすけあい設立
10月
配食サービスを開始
1997年1月
リフトカー導入(日本財団より助成)、送迎サービスを開始
2001年9月
全国ボランティアフェスティバルに参加
2002年1月
身体障害者のための小規模作業所開設







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