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喜・涙・笑 ふれあい活動奮戦記
単なる労働力の提供ではなく心と心のつながりを大切にした活動を展開していきたい
鳥取たすけあい(鳥取県)
 
鳥取たすけあい
 「重度の障害を抱えたことで、“歩けず、動けず”となり、ベッドから窓を見て暮らす毎日。自分自身を社会のお荷物のように感じ、まったく外部との接触を絶った生活を何年も送ってきました。それがこの活動を始めてからは、ボランティアの助けを借りて車イスで県や市が主催する会合にも行けば、講演にも出かける。ときには、さわやか福祉財団の事務所を訪ねるといった“いたずら”もしてるんですよ(笑)。今の私は周りのぬくもりが支えで、自分一人ではない大勢の心やさしき人たちによって生かされていると実感しています。いろんな人とふれあって、そして自分にできることをすることがどんなに大切かを、学んだように思います
 
 こう語るのは、「烏取たすけあい」の代表を務める小柴千鶴さん(56歳)。27歳のときに全身の筋肉が衰える難病・筋ジストロフィーを発症。現在は一人では寝返りもできない状態だというが、深い苦しみを乗り起えて、積極的に今を生きようとする姿がまぶしい。
 
気兼ねなく生活したいとの思いから会を設立
 小柴さんが「鳥取たすけあい」を立ち上げようと思い立ったのは、障害者としての自らが抱える切実な“思い”がきっかけだという。
 「障害者や体の弱った高齢者が在宅で生活していくためには多くの方々の介助や介護が不可欠ですが、公共の福祉サービスは、24時間365日対応とはほど遠いものだし、欲しいときに欲しいサービスが受けられる状況ではないんです。たとえば私の場合、転んでも一人では起きられないのですが、そういうときには、“起こしに来てほしい”と友人や知人に助けを求めるしかありませんでした。でも相手にも都合がありますから、そうそういつもという訳にもいかない。そんなことから折に触れ、どうにかして、人に気兼ねしないで生きていくことはできないものかと考えるようになったんです」
 そんな中で知ったのが、市民同士が助け合い、対等の立場でサービスの交流を行う市民参加型の団体の存在。「私が求めているのはコレだ」と感じた小柴さんは、勇気を奮ってさわやか福祉財団に電話を入れ、自らの身体状況を話した上で、市民団体設立のリーダーを養成する財団主催の「リーダー研修会」への参加の可否を尋ねた。
 「てっきり断られるものと思ったら、“ぜひ参加してください”と快く受け入れてもらえた。俗にいう、障害者としての生活を送っているうちに、健常者と障害者との立場の違いを思い知らされ、障害者は暗く、おとなしく生活し、自己表現もしてはいけない・・・。そんなふうに思い込み、いじけてもいましたから、このひと言によって“ああ、こんな私でも外に出ていいんだ”と背中を押され、心の中にできた大きな壁を取り除いてもらえたように思います」
 学生ボランティアに介添えを頼んで参加したリーダー研修会では、出席者たちのパワーに圧倒され、熱意に感動。そしてついには、自らにかかわるヘルパーやボランティア仲間とともに、1996年4月より、助け合い活動を開始したのである。
 「普通、こうした会のリーダーは元気な方がやるものなのでしょうが、障害を持っているからこそ自分の目線で語れる良さもあると思い、チャレンジすることにしました。といっても私にできることといえば、事務所を自宅に置いて電話番をし、会員の都合に合わせてサービス活動の依頼を取り次ぐことぐらいなんですけどね」
 本人は謙虚にこう話すが、介護や介助の仕方から活動そのものに対する悩みまで、会員のよろず相談窓口にもなっているよう。たとえ体の自由は利かなくても、小柴さんの存在は会の精神的な支柱でもあるのだ。







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