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平成14年度(2002年)研究報告

 事業名 医学医療に関する研究助成
 団体名 笹川保健財団  


5. 英国ホスピスの特徴/一般病棟とホスピスの比較
国立がんセンター 東病院・看護師 寳田真希
 
研修期間
平成15年2月3日〜平成15年2月28日 20日間
研修先
North London Hospice 47 Woodcide Avenue, N12 8TF
 
1・研修課題・計画
(1)ホスピスのシステムについて。医師、看護師、薬剤師、チャプレンなどのスタッフの数。スタッフそれぞれの役割について。
(2)症状マネジメントについて。
 疼痛のある患者に対してどのような薬剤を使用しているのか。
 疼痛のある患者に対する看護師の介入方法。
 症状マネジメントの際の看護師のアセスメント。
(3)モルヒネを使用することを拒否する患者に対する教育の方法。
(4)スピリチュアルケア。
 宗教についての考え方。
 宗教的習慣と死生観が緩和ケアに与える影響。
(5)ホームケア。
 ホスピスとホームケアの関連。
 
2・研修で学んだこと
(1)ノースロンドンホスピスの紹介
 ノースロンドンホスピスは1992年、9月17日に建てられた。
 ノースロンドンホスピスには、病棟に常勤、非常勤を含めて約38名の看護師(Registered Nurse とAssistant Nurse 含めて)がいる。常勤の医師は1名、そのほかシニアが2人いる。カウンセラーは常勤1名、非常勤1名。デイケアナース2名。理学療法士1名。コミュニティチームナース10人、ソーシャルワーカーが約3人。チャプレンはクリスチャン、仏教、ユダヤ教など様々な宗教家がいる。300人のボランティアが働く。
 入所できる患者は、Barnet、Enfield、Haringeyの3つの地区に住む住民である。ベッドは、全部で18床ある。内、個室は10床、4人部屋が2つ。
 患者が入所する目的は4つのカテゴリーがある。(1)ターミナルケア(2)症状マネジメント(3)レスパイトケア(介護者の休養のための患者ケア)(4)リハビリテーションの4つである。レスパイトケアは、約1〜2週間の予約となっている。
 
(2)pain management
 ナースは医師の指示にしたがって患者に鎮痛薬を投与する。鎮痛剤に関する知識は、一通り学んでいるので持っているはずである。しかし、私自身、研修前は経験的に知っているというレベルであった。「この薬の効果がないようなので、麻薬なら効果があるかもしれない」、という浅い考え方である。患者の痛みの訴え、日常の活動の程度、表情、どこの部位か、患者の疾患からみてどんな種類の疼痛か、骨転移痛、神経因性疼痛などが考えられる、といった深いアセスメントが非常に大切である。聖路加病院にはペインコントロールナースが緩和ケア病棟に配属されており、医師、薬剤師と連携して各病棟を週一度まわっていた。そして、疼痛コントロールの不良な患者のベッドサイドに行き、状況を把握したり、薬剤が患者に薬についての説明をしている。また、ナースに、「さっき薬を飲んだばかりだから我慢して」といった対応はしないこと、痛みがあることをわかってあげることなどをアドバイスしている。疼痛に苦しむ患者には、鎮痛剤の投与のみでは対応できないこと、精神、身体的、社会的苦痛、スピリチュアルペインといったトータルペインとして包括的に、まさに、全人的に患者に向き合わないと難しいと実感した。
 また、WHO方式の三段階ラダーに沿って行おうとしても、患者が薬に対して自分の考えを持っており、拒否する場合など、臨床では難しい場合がある。ノースロンドンホスピスのcommunity nurseに質問したところ、「一度でよいので試してみて、と言い続ける。しかし、しつこいと、嫌われてしまうから優しく言う。特に高齢の患者ではその傾向が強い。また、一度使用してみて効果がなかったからもう使用したくない、と拒否する患者もいる。」と答えてくれた。臨床では、患者さんは人間でありその人の生きてきた過程があり、考えを持っている。それに対して看護はいかにその人を尊重して安楽に過ごせるようになるかを工夫する事であると思う。
 「痛みを自分のコントロールできる範疇で行いたいと希望している人はペインマネジメントの指示にあまり従わない事が明らかになっています。患者がどのようなペインマネジメントに関する意見をもっているかをきちんと伝え主体的に参加できるように働きかける。」1)このことから、ペインマネジメントをする場合には、患者の意見を聞いてから一緒に考えていく姿勢が大切である。医療者の指示に従わない患者を、「頑固だから」という一言で片付けない事が大切である。
 また、モルヒネを拒否する患者はイギリスでも同様に問題となっている。その場合、患者の意見を尊重して、フェンタネストなど別の薬剤を使用することもあるとのこと。やはり、患者がどのような考えを持っているのかを聞くことが大切である。
 「ホスピス入院時6割に疼痛がある。主訴の第一位であり半数以上。鎮痛薬が使用されているにもかかわらず、徐痛が不十分である」2)という研究結果があるように、患者は疼痛に苦しんでいることから、積極的に徐痛を図っていくことが大切である。
 また、イギリスではDiamolphine というモルヒネと同種類の薬剤がある。注射薬でありモルヒネよりも強く、効果が早い。モルヒネ製剤を経口で使用できなくなったときに、持続皮下注射で投与する。(シリンジドライバーという)
 
(3)チーム医療
 緩和ケア病棟、ホスピスにおいて医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、ボランティアが患者の情報を共有し、それぞれの役割を担っている。一般病棟で働いている私には、とても理想的な医療体制に見える。このチーム医療が一般病棟でも実現できると良いと考える。しかし、一般病棟には患者の数に対しての看護師の数も少なく、一人一人に費やす時間は少なく、いかに効率よく多くの患者をケアするかということに重点が置かれる。一方、一般病棟にもターミナルステージの患者がおり、治療をしている患者と同時進行でケアをする必要がある。一般病棟で亡くなりつつある患者は、緩和ケア病棟への入院を待っている、または、緩和ケアを知らずにそのまま継続して入院している状態があると思う。そういう患者に対して、一般病棟と緩和ケア病棟でのケアに違いがあり過ぎることは決して良くない。現状で改善できる点はないか考えてみた。
 看護師として改善するべきだと考える点は、「疼痛や他の症状マネジメントの知識」を持つ事、そして医師に対して根拠を持って患者の状態を報告できるようになることが大切だと考える。この根拠については、Evidence based nursing practiceが重要視されている。症状マネジメントの知識についても根拠をもって説明できるように努力していきたい。
 また、医師も緩和ケアに対する知識を持つと、看護師と共に効率よく症状マネジメントができると思う。イギリスでは1987年に緩和医療が専門科として認められた。2)日本ではレジデントの医師が順番に各科をまわるから緩和ケア病棟のある病院ならば、医師も緩和医療を学ぶ。しかし、一時期の間しかいないし、緩和ケア病棟以外の科が専門となる場合が多いから医師の間での知識が定着しにくいのかもしれない。
 ホスピスでは医師と看護師とソーシャルワーカー、理学療法士が亡くなった患者についての症例カンファレンスを開き、各自が考えを述べる。これも、一般病棟では見られないことである。医師同士、看護師同士でのカンファレンスは開いているが、一緒に症例カンファレンスを行う事はほとんどない。あったとしても、医師からの患者の病状説明を看護師が聞く形式が多いと思う。一般病棟では手術や検査などが多く、カンファレンスを持つ時間も限られている。しかし、医師、看護師といった異なる職種がそれぞれ色々な視点を持っているし、話し合う事が滞っていた問題を解決することにもつながるはずだ。以前、私の所属する病棟で、疼痛に苦しみ希死念慮をもつ患者の症例について外科医と精神科医と看護師でカンファレンスを開いた。そのカンファレンスで、鎮痛剤を定期的に使う事、外泊をすすめること、痛みについてどのように問いかけるとよいのかというスタンスなどについて決定し、実行した。結果として患者は、疼痛はまだあると言っていたが、表情も明るくなり一度退院して手術に備える事になった。







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