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表III−2 3年間のSC(1995−97):主要分野別テーマおよびケースの概要
主要分野
テーマ
ケース
学生の立場 患者および対象となる状況
地域保健
肺がんの疫学・保健指導
住民検診の評価
都市部保健所長
保健所長
農村部保健所長
保健所管内の死因の集積
老人保健法基本審査とがん検診の評価
新しい検診事業の提言
母子保健
障害児出生における対応
幼児虐待症候群
産科医・小児科医
外科医
36歳初産婦、低出生体重児・ダウン症候群
頻回に外傷で受診する3歳児
栄養指導
保健所の栄養相談活動
マヒ患者の食事指導
病院での栄養相談活動
保健所医師
一般病院医師
一般病院医師
52歳NIDDM男性
83歳脳卒中後嚥下困難女性
50歳境界型糖尿病男性
精神保健
一般病院での精神科診療
精神障害者と社会復帰
外科当直医
精神科医師
急性錯乱状態で自傷した外国人女性
21歳女子大生−緊張興奮状態、自傷行為
産業保健
職場の健康管理と勤務管理
いわゆる過労死
中小企業の産業保健
会社産業医
会社産業医
開業医(兼産業医)
55歳大企業男性−脳梗塞後の配置転換
42歳出版社勤務男性−突然死
小規模自動車工場の労働衛生管理
老人保健
寝たきり老人のケア・マネジメント
老人保健関連制度・法規
寝たきり老人の地域ケア
ケア・マネージャ
医学部学生
開業医
マヒ患者の退院計画−介護保険
71歳男性−長期入院患者の退院
81歳女性−脳梗塞再発、引き取られ老人
歯科口腔保健
学校保健と口腔の健康
生涯歯科保健の観点から
糖尿病患者の口腔ケア
学校医
開業医
開業医
10歳う蝕女子
80歳ねたきり女性−訪問歯科診療
50歳男性−う蝕の多い糖尿病患者
在宅ケア
在宅ターミナルケア
医療処置を要す老人のケア
難病の在宅ケア
勤務医
勤務医
大学病院医師
75歳女性胃全摘後再発−在宅IVH
77歳女性経管栄養と特養入所受入れ
39歳女性ALSで呼吸困難−在宅人工呼吸器
臓器移植
慢性腎不全と臓器移植
臓器移植と医療倫理
医療政策立案者
救急医師
臓器移植か透析か−医療経済的試算
10歳女児−交通事故にて脳死
国際保健
途上国における保健問題
新任のPHC医師 フィリピンの母子保健
感染症
感染防止とAIDS教育
産業医 職員がAIDSに感染した時の対応
 
表III−3 SCの実例
 
難病の在宅ケアー担当教官は、大学病院MSWおよび教室スタッフ1名
〈GIO〉
1. 難病患者の地域ケアの現状と延命治療の実際を理解する。
2. 難病患者の地域ケアにはチームアプローチが不可欠であることを認識し、その中での医師の果たすべき役割を認識する。
3. 長期的ケアが必要なケースの治療方針決定おける社会医学的視の必要性を理解する。
〈SBO〉
1. 主な難病の地域での患者数の概要を把握できる。
2. ALSで人工呼吸器を装着している実際の割合を挙げられる。
3. ALSで人工呼吸器を装着して在宅生活をおくるために必要な資源を人的・物的・さらに経済的に列挙し、かつ配置も考慮した社会資源マップを書くことができる。
4. 延命治療を実施する場合の、各種選択肢を挙げることができ、その各々の利点および欠点を、種々の立場の視点から列挙することができる。
 
<設定>
 あなたは、帝京大学病院の神経内科の医師(助手)で、病棟内のことはかなりまかされている。卒後2年目の研修医と一緒にこの患者を担当してきた。
 
<ケース>
39歳女性。夫、娘11歳と3人家族。
主訴:呼吸困難
現病歴:
32歳 全身の倦怠感および右手首の脱力にて発症。大学病院で精査した結果、ALSと診断された。
33−38歳 徐々に歩行困難、燕下障害が進行。経管栄養となる。
39歳 呼吸困難進行。往診医からの紹介にて帝京大学病院受診となる。
 来院時の血液ガスデータ;PO2 46.6、PCO2 90.8、HCO3 48.6、PH 7.337 O2sat76.7%
入院後経過:
 当初、本人はできるだけ気管切開せずに過ごしたいと希望していた。本人の希望があり、陰圧式人工呼吸器の適応を麻酔科に相談したが、舌根沈下等により適応がないと判断され、気管切開が不可避となった。あなたは、気管切開の必要性を患者に話さなければならなくなった。
 
<設問>
Q1. どのように患者に話したらよいか。気管切開後の患者に対し、どんな配慮が必要か。
 
 患者も納得し、気管切開を実施した。しかしその後も、あまり血液ガスデータは改善せず、2ヵ月後、呼吸不全悪化。延命のためには、人工呼吸器の装着が不可避となった。
 
Q2. 人工呼吸器装着による問題点を列挙せよ。
Q3. 主治医として、今後の方針はどうするか。どんな選択肢があるか。
 
 人工呼吸器を装着した。血液ガスデータはPO2 97、PCO2 60に改善した。全身状態は安定し、本人は退院を希望している。
 
Q4. 退院前までに整えておくべきことを、「医療」と「福祉」およびそれぞれにおける「人」と「物」について具体的に列挙せよ。また、人においては、大学内・外をわけよ。その後、その「人」と「物」を整えるために必要な資金および調達法を考えよ。
Q5. 往診医・訪問看護婦などに引き継ぐ時のポイントは何か。
Q6. 在宅ケアのための、地域の社会資源についてどのように情報収集したらよいか。
Q7. この患者における社会資源マップを書いてみよ。
 
表III−4 SE期間中の経過例(表3のSCおける実施例)
日程 方略
(Learning Strategies)
対応するSBO
(表3)
実施内容
1日目
(午後のみ)
グループ全体討論
スモールグループ討論
アイスブレイク
4
自己紹介
自由討論(2人一組)
2日目
(午後のみ)
ロールプレイ
グループ全体討論
ディベイティング
グループ全体討論(自習による推定過程を含む)
4
4
ロールプレイ(医師・患者に扮して)
ロールプレイに対する相互の意見交換
4 「人工呼吸器装着による延命支持派」VS「慎重派」(医局会議を模して)
1、2 全国の現状:予想と気付き
(主要難病の現状・ALS死亡者中の呼吸器非装着割合を各自推定→実データの提示)
2日目後半 自習 3 学外調査
3日目前半     (福祉事務所訪問・インターネット情報収集等)
3日目
(全日)
グループ全体討論
 
臨床実習
自習
3
 
3、4
1、2、3、4
社会資源マップ作成
(各自調査結果の統合)
ケース本人へのインタビュー*
発表会の準備
4日目
(全日)
全体発表会 1、2、3、4 学生自身によるプレゼンテーション
発表内容:
ビデオによる患者インタビューの説明
ロールプレイ・医局会議・MSWと患者の会話
社会資源のまとめ(OHPを用いて)
難病のケアの現状を説明
*SCの患者本人の参加を得たのは、これが初めてであったが、まずSCに基いた討論や概念整理をした後に、実際の患者に直接インタビューできたことにより、理解が深まったと思われる。これを、SC討論後の現場訪問等に置き換えて実施した例もある。   







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