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平成14年度(2002年)研究報告

 事業名 医学医療に関する研究助成
 団体名 笹川保健財団  


平成15年3月1日
 
平成14年度笹川医学医療研究財団
研究報告書
 
研究課題
医学・看護学系基礎教育における在宅ホスピス・緩和ケアの実践的教育に関する研究
 
所属機関・職 ホームケアクリニック川越・院長
研究代表者氏名 川越 厚 
 
 本研究は、医学教育、看護学教育の中にホスピスケア、特に在宅ホスピスケアの合理的なカリキュラムをいかに位置付け、実践すべきかを検討したものである。特にわが国において、まだまだ揺籃期にある在宅ホスピスケアの実際を大学教育の中でどのように教えて行くべきかは大変難しい問題である。幸いなことに、われわれは今回の実習を含めて過去3回、在宅ホスピスケアに関する医学生と看護学生の共同実習を行なっており、今回の研究フィールドとしてこの実習を用いることができた。
 本研究で学生教育のために用いた方法はSE(Simulation exercise)であるが、当院における実習では実際に在宅末期がん患者に直接接することができるため、われわれの実習ではCase method法を用いた。詳細は報告書に記してあるので割愛するが、本法は極めて教育効果の高い教育方法であり、学生の満足度も高いと考えられる。
 現在、わが国においては在宅ホスピスケアの実践はまだまだ例が少ないが、実践を行なう医療機関が増加すれば、今回の研究で得られた効果的な実習方法・知見を用いることによって、ホスピスケア特に在宅ホスピスケアの学生教育はますます深まり普及するものと思われる。
 なお今回の研究では、平成13年度笹川医学医療研究財団より助成を受けて作成した「末期がんの方の在宅ケアデータベース」についても、利用状況、マスコミの反応、メンテナンスの状況などを合わせて報告した。
 
ホームケアクリニック川越院長 川越 厚
 
1. 研究の目的
 20年有余の歴史を持つわが国のホスピス・緩和ケアは、施設ホスピス(=緩和ケア病棟)を中心に誕生し発展してきた。施設に偏重してきたわが国のホスピス・緩和ケアは、いま歴史的な過度期、見直しの重要な時期にさしかかっている。新たな方向性を示し、問題解決の鍵を握っているのは在宅ホスピス・緩和ケアである。在宅ホスピス・緩和ケアは「家で過ごしたい、家で死にたい」多くの患者の希望を成就し、より多くの人に平等かつ経済的な負担(利用者、財源を負担する国や地方自治体など)が少ない形で、サービスを提供するものである。この意味から、在宅ホスピス・緩和ケアは多くの国民が必要とする医療であり、国も政策的に取り組むべき課題であると考えられる。在宅ホスピス・緩和ケアを普及するためには政策的な誘導とともに、サービス提供主体である医療者側でも多くの課題を解決する必要がある。課題としてはたとえば、(1)在宅ホスピス・緩和ケアの基準を明確にし、利用者によくわかる形でホスピス・緩和ケアを提供する医療機関のサービス内容を明示すること、(2)施設ホスピスと比較して遅れている在宅ホスピスの普及のために、さまざまな社会資源の力を結集すること、(3)在宅ホスピス・緩和ケアを担う医療者を計画的に育成すること、(4)施設(これは必ずしも施設ホスピスに限らない)と在宅とを一つにしたホスピス・緩和ケアを提供するシステムを開発すること、などがあげられる。上記課題の(1)は、平成13年度の財団法人笹川医学医療研究財団の助成研究により、ある程度の芽を育てることができた。すなわち、平成13年度末までに、「末期がん患者の在宅ケアを担う医療機関のデータベース」の作成、インターネット上での公開などの作業が終了している。しかしながら、このデータベースの登録医療機関数はまだ充分とは言えず、地域による偏りも大きい。また、このデータベースは一般の方々がいつでも利用できることに大きな意味を持つことから、引き続き運営・管理していく必要がある。さらに、このデータベース登録医療機関のネットワークは、在宅ホスピスケアの普及のために大いに利用する価値がある。
 今年度われわれが新たに取り組もうとしているのは、上記課題の(3)である。具体的には、将来の医療を担う医学生、看護学生に対して、在宅ホスピス・緩和ケアをどのような形で教えて行くのが適当なのか、ということを研究課題として明らかにすることである。医学生、看護学生の基礎教育におけるホスピス・緩和ケア教育は、文部科学省および厚生労働省が示したカリキュラムの中には位置付けられていない。しかし、その重要性を認識した多くの大学が独自にカリキュラムを作成し、緩和医療学、ターミナルケア論、などの科目名で実際の講義を行っている。また、独立した科目として立てることができない教育機関も少なくなく、このようなところでは、外科学、麻酔科学、公衆衛生学、がん看護学、成人看護学・在宅看護論などの科目の一部として教授されているのが現状である。このようにして行われている学部教育は、いまだ模索の段階と言ってもよい。ホスピス・緩和ケアに関する教育実践を評価し論述した文献は少なく、またその評価対象もほとんどのものが学内で行われる講義・演習にとどまっている。さらに演習の内容も「施設ホスピスの見学が学習効果をあげている」という程度の報告しかなく、ホスピス・緩和ケアを実習単位として位置付けている報告はごくわずかである。教育方法に関しては、伝統的な教授方法である講義による知識伝達を行うよりも、学生が主体的に課題をみつけ学習する方法がより効果的教育方法であると言われている。以上の観点を踏まえ、在宅ホスピス・緩和ケアの実習教育モデル作成を目指している本研究では、(1)PBL(problem−based learning)、IBL(inquiary−based learning)、SE(simulation exercise)などの教育方法に基づいた教育カリキュラムを作成し、(2)その妥当性、有用性を検討し、最終的には(3)在宅ホスピス・緩和ケアの実地教育モデルを提唱したいと考えている。さらに、平成13年度の助成研究で作成した「末期がん患者の在宅ケアを実施している医療機関のデータベース」に登録されている医療機関に、この教育モデルの妥当性や有用性についての検討を依頼し、より多くの意見が反映された教育モデルを提唱すると共に、依頼先の医療機関にも学生実習の重要性への理解を広めることを目指す。学部学生を対象としたこの実習教育モデルは現任教育にも応用可能なので、ひろく在宅ホスピス・緩和ケア教育の基礎固めにつながっていき、ひいてはわが国における明日のホスピス・緩和ケアを誕生させる礎となることを本研究は目的としている。
 
 ホスピス・緩和ケア教育は、(1)基礎教育として医学教育・看護学教育の中で行われているもの、(2)現任教育あるいは卒後教育と呼びon the job trainingとして行われているもの、(3)現任教育ではあるが資格認定があるもの、の3つに分類することができる。(1)の基礎教育におけるホスピス・緩和ケア教育は、文部科学省および厚生労働省が示したカリキュラムの中には位置付けられてはいないが、その重要性を認識した各大学が独自の形でカリキュラムに導入している。したがって科目名もさまざまで、緩和医療学、ターミナルケア論、などの科目名となっている。また独立した科目として立てることができず、外科学、麻酔科学、公衆衛生学、がん看護学、成人看護学・在宅看護論などの、科目の一部として教授されている場合もある。大学における以上のような教育のいくつかは、ホスピス・緩和ケアに関する教育実践報告としてまとめられ報告されているものの、教育実践を評価し論述した文献は少ない。また教育実践報告も学内で行われる講義・演習にとどまっており、演習では施設ホスピス見学を実施し学習効果をあげているという報告があるものの、ホスピス・緩和ケアを実習単位として位置付けている報告はごくわずかである。
 2001年度の大学病院の医学部・看護学部における緩和ケア教育の現状としては、黒子による報告がある1)。緩和ケア教育の講義は医学部においては94%、看護学部では97%で行われた。講義方法は、医学部・看護学部とも講義が主体であるが、医学部では事例検討、実習、グループワーク、ロールプレイ、ビデオ学習が取り入れられており、看護学部ではグループワーク、ビデオ学習が特徴的であり、他、事例検討、実習、ロールプレイが行われていた。
 聖路加看護大学は、4年次で行われる総合実習にターミナルケア実習と在宅ホスピス・緩和ケア実習を組み込んでおり、2週間の在宅ホスピス・緩和ケア実習プログラムの効果が報告されている。 教育方法に関しては、伝統的な教授方法である講義による知識伝達より、学生が主体的に課題をみつけ学習する方法がより効果的教育方法であるという報告がなされている。PBL(problem−based learning)、IBL(inquiary−based learning)、SE(simulation exercise)などの方法をとりいれた実践報告や教育効果を測定した文献もある。PBLの提唱者であるDonald Woodsは、学習が向上するのは学生が主体的な場合や学生同士が協力する場合、そして学習計画の一部を自分でつくる場合であると述べている。またケースメソッドは、先に理論や知識や方法を提示し適用例として現場を見るのではなく、現場の問題にぶつかり、それに対する対処の中で必要な知識や理論や方法を獲得するという教育方法である。SEを導入した実習については、帝京大学医学部公衆衛生学実習の方法が報告されている1)、2)。SEはケースメソッドとpaper patientの両者を統合した教育方法で、地域の模擬的な状況をsimulated caseとして学生に提示し、少グループに分かれた学生が議論し調べる中で学ぶ実習形式である。  (2)のon the job trainingでは、緩和ケア病棟で行われている教育内容が報告されている。スタッフ教育用と研修生用2種類のプログラムが紹介されている。またホスピス緩和ケア連絡協議会は多職種用のホスピス・緩和ケア教育カリキュラムを作成し、現任教育のコアカリキュラムとして提示している。(3)の資格が取得できる現任教育は、日本看護協会がおこなっているホスピス・緩和ケア認定看護師、大学院教育によるがん看護専門看護師、地域看護専門看護師などである。2002年現在、ホスピス・緩和ケア認定看護師は44名誕生しており、そのうち在宅領域で活動しているものは4名であると報告されている。ホスピス・緩和ケアの実習に関しては実践報告もわずかであり、教育効果について検討された文献もない。基礎教育および現任教育におけるホスピス・緩和ケアの実習モデルを作成しその妥当性と実用性を検討することは今後の課題である。
 
参考文献
1)黒子幸一:大学病院の医学部・看護学部における緩和ケア教育の現状調査と提言, 日本ホスピス緩和ケア研究振興財団 調査・研究報告書 第1号, pp1-13, 2002.
2)矢野栄二、 田宮菜奈子、 長谷川友紀:摸擬演習(Simulation Exercise : SE)による公衆衛生教育. 日本公衆衛生雑誌 1998, 45(3):270-278.
3)矢野栄二、 田宮菜奈子、 村田勝敬:学生参加型の衛生学公衆衛生学教育−Student Facilitatorを用いた試み. 日本公衆衛生雑誌1999, 46(8):644-649.







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