近年QOLはがん患者ケアのアウトカムとして注目されてきた。当初は、身体的側面によってのみ患者のトータルなQOLを評価しようとしてきたが、1980年代以降QOLは複数領域を持つものとして認識されるようになった。しかし、がん患者や死に至る病を持つ患者のQOLを考えるとき、スピリチュアルな領域をQOLの1領域として認めていこうという考えが広まった。現在は、スピリチュアルな領域はQOLを構成する複数領域の中で、特に死にゆく人、がん患者にとっては重要な役割を持つべきであると認識されるようになった。

　しかしながら、スピリチュアリティの構成概念はいまだ統一されたものは見られない。従来は、スピリチュアリティが宗教性と同一に考えられていたが、現段階では、スピリチュアリティは宗教性を含むより広い概念として定義されている。そしてスピリチュアリティは、人生の意味や目的、生きる意味、また病気の意味といった、人間の根源にかかわる領域であり、それは個人、他者、神とのつながりという関係性や、人生においてその個人が最も価値をおく信条、そして希望と深くかかわっているといわれる。スピリチュアリティについてはぼんやりとその実態が見えつつあるが、スピリチュアリティが何を意味しているのか、その下位概念は何であるか−その探索は今後のQOL研究の重要な領域となることは間違いない。スピリチュアリティを明らかにする作業と同時に、スピリチュアルニーズを満たすケア、つまりスピリチュアルケアについても考えていかなければならない。

　他者との関係、神との関係、個人の信条などが、内的な強さや自分自身を受け入れる力と何らかの関係を持っているとすれば、信頼関係や無条件の受容といったものは、スピリチュアルケアに1つのヒントを与えてくれるだろう。

　終末期にある患者にとって、スピリチュアリティは全体的QOLに大きな影響を与える部分である。QOLはスピリチュアルな側面を含むホーリスティックな評価であるが、スピリチュアルな良好さがQOLと部分が関係を持っているかについては今後の研究が望まれるところである。そして今後の研究に於いては対象がガンなどの病をもつ人であることを考慮し、臨床現場での質的研究においても量的実証研究においても、倫理的に十分配慮された研究でなければならない。