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2. 褥創ケア基準の策定
 平成15年2月より褥創ケア基準の策定に着手した。その基本方針としては、褥創発症のハイリスク状態の患者がケアの対象となることから、リスクアセスメントと予防ケアに重点をおく・患者の苦痛緩和に焦点を当てたケア目標の設定に挙げた。そして、
1)K式スケールによるリスクアセスメントとスタンダードのケア基準(自力体位変換不可に対して・骨突出に対して・ズレに対して・栄養状態が悪いことに対して・足部の冷感に対して・スキンケア・アクシデント予防・その他についてそれぞれ基準となるケアの提示)と個別ケアプランを記載できる記録用紙の作成。
2)創傷のモニタリング(DESIGNを用いた、褥創経過記録用紙の作成)
3)体圧分散寝具・用具の選択と使用基準・寝具管理手順の作成。
4)創傷ケアの具体的な方法
5)ケア目標設定についての考え方(治癒を目標としにくい状況での目標設定として、感染予防・痛みのコントロール・周辺皮膚の損傷予防・処置の苦痛の軽減・出血予防など)
を検討した。
 これらの基準検討にあたっては、褥創ケアに先駆的・組織的に取り組んでいるK大学病院の褥創対策チームの活動を見学させて頂き、具体的なケア内容・教育内容を参考にさせていただいた。しかし、ピースハウス病院褥創ケア基準の作成には、まだ充分な検討が不足しており、また、導入・活用するには、現場スタッフに対するアセスメント方略の教育をはじめとする課題が残っている。
 
III 今後の課題
1. 今回実施した終末期がん患者の褥創発症の実態調査ではカルテ調査による後ろ向き調査の為データの抽出に限界があった。今後、新しい褥創ケア基準にのっとったケアを展開しながら、ピースハウス病院における褥創発症の実態を追跡する必要がある。あわせて、国内のホスピス・緩和ケア病棟における実態を把握する調査に拡大できるよう調査内容を吟味し、また、ケア基準を1施設のみのものとせず、多施設で実態を踏まえた検討を行い、終末期がん患者に対する褥創ケアの質向上につなげる必要がある。
2. 実態調査項目としては、栄養状態の捉え方や症状マネジメントに使用される薬剤との関連を捉える項目、経口水分摂取量やバイタルサイン・身体計測等患者への負担が少ない方法で客観的に身体状況が捉えられる項目を検討する必要がある。
3. 今回実施した実態調査からは、褥創が発症の有無と予防から褥創発症後までに受けていたケア内容との関連を見ることが出来なかったため、今後、ケア基準にのっとったケアの展開により、その関連を明らかにすることが出来れば、更にケアの改善につなげることができると考える。
4. そのためにも、スタッフへの教育を含めた、ケア基準の策定と実施・評価を前向き調査とあわせて計画実施する必要がある。
 
IV 研究の成果等の公表予定
 本研究のうち、「終末期患者における褥創発症の実態」については、2003年6月に開催される第8回日本緩和医療学会で発表予定である。
 
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