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平成14年度(2002年)研究報告

 事業名 医学医療に関する研究助成
 団体名 笹川保健財団  


28. 緩和医療における症状緩和と予後予測に関する研究
筑波メディカルセンター病院 総合診療科・診療科長
茨城県地域がんセンター 緩和ケア病棟・医師 木澤義之
 
緩和医療における症状緩和と予後予測に関する研究
筑波メディカルセンター病院
総合診療科診療科長、緩和ケア病棟 木澤義之
【共同研究者】
久永 貴之(筑波メディカルセンター病院総合診療科 医師)
前野 哲博(筑波大学附属病院卒後臨床研修部 講師)
 
I. 研究の目的、方法
(1)研究の目的
(1)ホスピス・緩和医療を受ける患者の予後予測方法について検討する
(2)緩和医療を受ける患者がどのような薬物によってどのような疼痛管理を受けているかその実態を明らかにする
研究の必要性
 ホスピス・緩和ケアにおいて正確な予後予測をすることは非常に重要である。残された時間の長さが明らかになることによって、本人や家族は残された時間をいかに有益に利用するか考えることができる。また、医学的見地から考えれば、予後の長さを知ることは疼痛、呼吸困難、せん妄、悪液質など終末期に遭遇するさまざまな病態や疾患に対して不必要な治療や検査を避け、必要な検査や治療を行うことにつながり、また有効な治療、検査方法の開発研究に寄与する重要な因子と考えられる。予後予測に関する研究はMaltoni(1995, Cancer75: 2613-2622, 1999, JPSM)Morita、 (Support Care Cancer 1999; 7: 128-133)、Rosenthal(1993, Palliat Med 7: 199-204)らによって行われている。本研究はこれらの予後因子スケールの中からMoritaらによって有用性が証明されているPPI(Palliative Prognostic Index)を用いて緩和ケアのサービスを行った患者の予後予測を行いその有用性について再検討を行うほか、この予後予測とは盲目性を維持して臨床医による予後予測を行い、臨床医の予後予測の有用性を検証する。
 また、2002年に本邦ではフェンタニルの貼付剤が発売され、がん性疼痛のオピオイド治療の選択肢が増加し、オピオイドローテーションがより積極的に行われるようになった。オピオイドローテーションや疼痛管理に関する疫学調査は国内外で行われているが、フェンタニル貼付剤発売後、国内でのオピオイドローテーションに関する系統的調査は行われていない。また、欧米では多くのオピオイドローテーションについての研究があるが、欧米はメサドンやオキシコドン、ペチジンなどオピオイドに多くの選択肢があり、欧米の研究結果を直接日本国内で臨床に適用することが難しい状況にある。治療の選択肢が変化した現在、我々は緩和ケア病棟における疼痛管理の実態、つまりNSAIDs、オピオイド、鎮痛補助薬がどのように使用されているかを明らかにするとともに、オピオイドローテーションがどのような理由で行われて、どのような効用があるかを検討する。この研究を通して、現状に即し、より適正な鎮痛薬使用のあり方を考察できるものと考えられる。
(2)研究の方法
◎緩和医療における予後予測に関する研究
◆研究の対象:筑波メディカルセンター病院緩和ケア病棟および緩和ケアチームに2002年10月1日から2003年1月31日までに入院した患者
◆研究方法;前向き観察研究。2002年10月1日から2003年1月31日までに筑波メディカルセンター病院緩和ケア病棟および緩和ケアチームに入院した患者に対して、サービス開始時に先行研究で作成され、有効性が検討されているPPI(Palliative Prognostic Index)、およびこれとは盲目性を保った上で主治医による予後予測を行う。患者の死亡時に実際の予後、PPIによる予測、主治医の予測を比較検討し有効な予後予測方法について検討を行う。
 
◎緩和医療における疼痛管理とオピオイドローテーションに関する研究
◆研究の対象:2002年4月1日から2003年1月31日の9ヶ月間に筑波メディカルセンター病院緩和ケア病棟に入院し、すでに死亡された患者。
◆研究方法:対象患者のRetrospective chart review を行い、各種鎮痛薬の使用量、使用方法、鎮痛補助約の使用方法、使用量、使用理由、フェンタニル貼付剤の使用状況、オピオイドローテーションの理由とその効果などを調査し、疼痛管理の実態、オピオイドローテーションの実態を明らかにする。
II. 研究の内容
◎緩和医療における予後予測に関する研究
 66名の患者が集積された。PPIによる予後予測は的中率26名(39.4%)、実際より長く予想した例20名(30.3%)、実際より短く予想した例14名(21.2%)、不明6名であった。一方臨床医の予測は的中率24名(36.4%)、実際より長く予想した例27名(40.9%)、実際より短く予想した例10名(15.2%)、不明5名であった。
◎緩和医療における疼痛管理とオピオイドローテーションに関する研究
 120例の患者が集積された。患者の性別は女性33名、男性87名。がんの原発部位は肺がん34名、大腸・直腸がん25名、胃がん15名、食道がん8名、肝細胞がん6名、腎がん5名、膵臓がん5名、脳腫瘍3名、胆のう胆管がん3名、前立腺がん2名、乳がん2名、膀胱がん2名、精査中1名、その他9名であった。疼痛治療の現状はNSAIDsの使用があった患者が98名、ない患者が22名であった。患者が緩和ケア病棟で初めて使ったオピオイドは、オピオイド使用がなかったものが18名、レペタンが1名、コデインが9名、モルヒネ経口が42名、モルヒネ持続皮下注は29名、フェンタニルパッチが12名、フェンタニル持続皮下注が5名であった。オピオイド使用がなかったものが20名、モルヒネ経口が4名、モルヒネ持続皮下注は39名、フェンタニルパッチが22名、フェンタニル持続皮下注が29名、モルヒネとフェンタニルの併用が3名であった。オピオイドローテーションはほとんどモルヒネからフェンタニルへの変更が行われ、ローテーションの理由は傾眠・せん妄21名、嘔気10名、経口不可6名、便秘2名、在宅移行のため1名、その他2名であった。フェンタニルパッチの張り替え間隔は全員3日ごとであった。神経因性疼痛を合併する患者は16名で、鎮痛補助薬の使用状況はトリプタノール11名、リボトリール5名、ケタラール6名で2剤併用が3名、3剤併用が2名で行われていた。
 
III. 研究の成果
◎緩和医療における予後予測に関する研究
 本研究においてPPIの的中率は39.4%で、その有用性に疑問がもたれた。その理由として第一に、先行研究との患者層の違い、セッティングの違いが予想される。また、本研究ではPPIの記入を初診時に行っており、先行研究と異なる可能性がある。(先行研究はこの点に言及していない)また緩和医療においては標準的治療が確立されておらず、施設間の治療方針の相違などが影響している可能性がある。本研究で、PPIの予後予測に対する操作特性は当該施設のセッティング、患者層、評価方法や時期、治療方針などに左右される可能性があり、その汎用性に疑問があることが明らかとなった。
 また臨床医の予後予測の的中率は36.4%で、臨床医の予後予測は必ずしも正確とはいえず、臨床医は実際の予後を長く予想する傾向(40.9%)がみられた。
 
◎緩和医療における疼痛管理とオピオイドローテーションに関する研究
 本研究は後ろ向き研究でありリコールバイアスが想定される。
 疼痛治療の現状はNSAIDsの使用があった患者が98名(81.7%)、患者が緩和ケア病棟で初めて使ったオピオイドは、オピオイド使用がなかったものが18名、レペタンが1名、コデインが9名、モルヒネ経口および持続皮下注が71名(59.2%)、フェンタニルパッチ及び持続皮下注が17名(14.2%)コデイン9名(7.5%)、オピオイド使用なし18名(15%)であった。最後まで使用していたオピオイドはモルヒネ経口が4名(3.3%)、モルヒネ持続皮下注は39名(32.5%)、フェンタニルパッチが22名(18.3%)、フェンタニル持続皮下注が29名(24.2%)、オピオイド使用無しが20名(16.7%)モルヒネとフェンタニルの併用が3名であった。フェンタニルの使用が全体の54.3%を占め、オピオイド使用の大半を占めた。また持続皮下注射がオピオイド使用の72.3%を占め、終末期のがん疼痛治療において持続皮下注は必要不可欠な治療手段と考えられた。オピオイドローテーションはほとんどモルヒネからフェンタニルへの変更として行われ、ローテーションの理由は傾眠・せん妄、嘔気、便秘などモルヒネの副作用によるものが73.5%を占めた。フェンタニルパッチの張り替え頻度は先行研究によれば数%が2日間隔になるとの報告であったが対象患者ではすべて3日間隔であった。神経因性疼痛を合併する患者は16名で13.3%にみられ、その約3分の1(31.3%)に鎮痛補助薬の多剤併用療法が必要であった。
 
IV. 今後の課題
◎緩和医療における予後予測に関する研究
 本研究で、PPIの予後予測に対する操作特性は当該施設のセッティング、患者層、評価方法や時期、治療方針などに左右される可能性があり、その汎用性に疑問が持たれることが明らかとなった。ただし本研究は症例数66例と小規模な研究であり、今後はさらなる症例の集積および多施設での検討が望まれる。またPPIの有用性は疾患による選択性や年齢、患者背景に左右される可能性があり、どのような条件下でPPIは有用で、どのような場合は有用性が低いか検討することが必要である。
 
◎緩和医療における疼痛管理とオピオイドローテーションに関する研究
 本研究を通して、がん性疼痛治療におけるフェンタニルおよび持続皮下注射の重要性が明らかとなった。今後はオピオイドの副作用に対してのオピオイドローテーションに関する前向き研究を行い、オピオイドローテーションの意義と効果について検討が必要であると考えられる。
 
V. 研究の成果等公表予定
 第26回日本プライマリケア学会札幌大会(緩和医療における予後予測に関する研究)及び第8回日本緩和医療学会総会(緩和医療における疼痛管理とオピオイドローテーションに関する研究)で発表し、国内外の学術雑誌への投稿を予定している。







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