4、チーム構成診療科における今後の課題:
1)臨床心理療法士:現在までの問題点として、・外来診療時間の長期化:医師、看護師との3人でアセスメントを行うため、包括的に診ることが可能である一方、診療時間が長期化している。継続的なフォローが必要か否かの判断が主観的/評価ツールが欠如している。現在のところ、緩和ケア病棟入院患者については100%継続フォローを行っており、その他の患者(外来、他科依頼)については、心理療法士がそのアセスメントの結果継続サポートの需要を認識、当該患者との合意の上で双方が必要とみなした期間フォローを行っている。終診時期についても明確な基準が現在のところない。
(1)将来の方向性として:・評価ツールの検討、定期的なフィードバックを元に、より効率的な時間配分、「いつどのような症例の際に依頼を出したらいいのか」という質問が病棟から出てくることがあるので、院内教育プログラムのような形で心理社会的アセスメントやアプローチのワークショップなどを開き、依頼しやすくなるようなチャンネル作りを行う、悲嘆フォロー、緩和ケアサポートグループを立ち上げること。
(2)医師−看護師−コメディカル(あるいは医師−看護師のみ)がピラミッド形で連係していく運営方法から、各専門職種が患者/家族に総体的に関わるmultidisciplinary teamという多職種チーム、そしてもう一歩進んでそのチーム内でのコミュニケーションに重点をおいたinterdisciplinary teamという多職種チームという運営方法に変わっている。開院前から緩和ケアコアメンバーの一員としての診療科/病棟運営(病棟の運営マニュアル作成や基準手順作りなど)に関わり、またスタッフ教育に関わったことで、「医師/看護師以外の視点」「多職種チームで仕事をしていくということ」という経験及び基盤作りができたのではないかと思われる。
2)リハビリテーションの訓練効果の評価方法の開発
Yoshiokaら(Am J Rehabil Med 94)は、ホスピス入院中の終末期患者のうち、ADLに障害のあった239名に対して、Barthel Indexの移乗、移動項目で評価し、リハビリテーション開始時のスコアが12.4、ADL訓練行い到達した最高スコアが19.9点であったことを報告した。緩和医療におけるリハビリテーションの効果を示したのはこの報告が唯一であり、緩和医療におけるADL評価の標準的な評価尺度はいまだ存在せず、訓練効果の評価も不明確である。麻痺性疾患や整形疾患のADL評価については、機能的自立度評価法(Functional independence measure: FIM)やバーテルインデックス(Barthelindex)が世界の標準になっている。これらの評価尺度を用いて、ADLはできる能力があるが、全身状態が不良のため動ける時間や頻度が限られている患者についてはうまく評価できない可能性がある。一方、活動性の指標であるPerformance status(PS)やKarnofsky scaleはその逆である。今後は、ADLと活動性をうまくあわせた悪性腫瘍の能力低下を評価する尺度を検討する必要がある。また、能力低下(Handicap)レベルの評価尺度も重要である。簡便かつ有用なQOL評価尺度の開発も待たれる。
(1)包括医療の問題;緩和ケア病棟では一般に包括医療が行われるため、理学・作業・言語聴覚療法の診療報酬を算定することができない。また、現在の基準ではリハビリテーション科専門医やPT、OT、STといった療法士は必須構成員として謳われていないため、あくまでサービスでリハビリテーション治療を提供することになる。このことは、緩和ケア医療において、リハビリテーション分野からの盛り上がりがいまひとつである大きな要因である。
(2)また、療法士の数の問題も大きい。がんセンターやがん専門病院では、リハビリテーション科を標榜科として掲げ、複数の療法士のいる病院は当院のほかない。一般病棟においてもリハビリテーションのニーズは高く、療法士の数が限られているため緩和ケア病棟患者に十分に訓練を行えないというジレンマに陥りがちである。多職種チーム内での意思統一のためのカンファレンスにも十分に参加できず、効果的かつ効率的な訓練が行えないことも危惧される。
今後は、がんセンターやがん専門病院および緩和ケア病棟におけるリハビリテーションの必要性を客観的な訓練効果をもとに訴えていく必要があると考える。
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