日本財団 図書館


3、リハビリテーション科:
1)診療科診断名、程度、回復予測の程度などの患者の背景:2002年9月〜12月までの4か月で25名の依頼があり、主病名はいずれも悪性腫瘍多発転移であった。
 一方、障害病名は廃用による四肢筋力低下および関節拘縮(9名)、リンパ性もしくは静脈性浮腫(5名)、併発した脳血管障害などによる運動障害(4名)、脊椎・脊髄転移による麻痺(2名)、体幹・下肢の疼痛(2名)、頭頚部癌による嚥下障害(2名)腕神経叢への腫瘍の浸潤による上肢麻痺(1名)であった。
2)治療方法と治療効果の評価:25名の依頼患者に対して、上記の訓練目的に応じて、32件の訓練処方がなされた。その内容は以下に示すとおりである。
 PT(17件)、ADL訓練および指導(移乗、移動、歩行):11件、浮腫への対応:2件、免荷杖歩行の習得:1件、座位バランス訓練:1件、関節可動域訓練:1件、ホームプログラムの指導:1件。OT(10件)、 浮腫への対応:6件、在宅準備へのアドバイス:1件、 ADL訓練:3件。ST(5件)、嚥下障害および構音障害への対応 5件。リハビリテーション治療の個々の評価内容は多岐にわたるが、全体としての帰結評価として活動性やADL評価を用いるのが一般的である。ADL面へのアプローチを行ったPT11件、OT3件では、リハビリテーションの介入により、各患者とも一時的には活動性やADLの改善が得られた。その理由は、訓練で筋力などの運動能力が向上したというより、残存機能がより効率よく使えるようになったためと考えられる。すなわち、・杖や手すりなどの福祉機器の利用により、安全に1人でできるADLが増えたこと。・薬剤の調整や起居動作のコツを指導することで、痛みなく動作が可能となったこと。などによるのだろう。また、ADLが改善し、活動性が増加することで、心理的にも良い効果が得られ、相乗作用をもたらしたことも考えられる。浮腫への対応を行ったPT2件、OT6件では、弾性ストッキングやリンパドレナージにより、上下肢の周径の低下もしくは痛み、しびれ、冷感などの症状の緩和が得られた。重度の浮腫や痛みをともなう場合には弾性ストッキングの装着が困難であるが、リンパドレナージにより症状の緩和を図ることができた。嚥下障害および構音障害への対応を行ったST5件では、ビデオ嚥下造影検査や嚥下機能の評価および指導により、安全に経口摂取可能となり、誤嚥性肺炎や窒息の予防ができた。食べたいという患者のニーズと誤嚥・窒息のリスクとの兼ね合いが難しく、患者、家族に十分説明し、うまく折り合いをつけながら必要があった。
 
4、歯科口腔外科:
1)患者背景:対象患者28名の性差は、男性19名、女性9名で年齢は、男性が33歳から83歳(平均66.8歳)、女性が54歳から89歳(平均71.9歳)であった。
2)緩和病棟入院患者における介入:129名の入院患者のうち28名(21.7%)に患者自身、もしくは医師、看護師、家族から口腔内の何らかのトラブルにより歯科専門的介入の依頼があった。この口腔内トラブルのあった28名の内訳は、使用している義歯不適合もしくは歯牙欠損があるも義歯を持っておらず、経口摂取に問題を生じていたものがもっとも多く8名(28.6%)、次に口腔乾燥を強く感じたためにやはり、食欲不振、口腔内疼痛を訴えて口腔ケアの依頼されたもの6名(21.4%)、また歯槽膿漏で歯に動揺があり痛みを訴えたもの5名(17.9%)、口腔がんの終末期のガーゼ交換処置3名(10.7%)口腔内不衛生に対する口腔清掃依頼3名(10.7%)、クラウンなどの補綴物脱離1名(3.6%)その他3名(10.7%)であった。
 28名のうち病室へ往診して処置、ならびに口腔ケア介入をおこなったのは、21名(75%)で、病室から車椅子もしくは徒歩で、歯科外来に来て処置をおこなったのは7名(25%)であった。この28名の入院期間は、最短4日、最長で140日(中央値は22.5日、平均値は58.1日)であり、16名が死亡退院し、残り12名は一時退院を達成することができている。
 歯科の介入の回数は1名の患者あたり3.2回(最短1回から最高42回)であった。具体的な処置内容(1名の患者に対し重複処置あり)は、口腔内清掃、ブラッシング指導、口腔ケア指導等の処置(歯槽膿漏処置含む)がもっとも多く14名(50.0%)、義歯調整、作成が12名(42.8%)、抜歯などの観血処置は3名(10.7%)、その他3名(10.7%)であった。
 
5、WOCケアチーム:
WOCケアチームがケアに介入した緩和医療科の患者は27名で、うち男性15名、女性12名であった。介入したケアの種類は、18名(67%)が褥瘡ケア、6名(22%)がストーマケア、3名(11%)がPEGケアであった。これら患者の褥として、以下の状況が考えられた。
 1)疼痛・呼吸困難・倦怠感などで患者の活動性(ベッドから離れて活動すること)と可動性(ベッドの上で動くこと)などが低下し、組織への圧縮応力が増した。2)悪液質や栄養障害、活動性・可動性の低下などで脂肪や筋肉など骨周囲の組織の量が減少し、骨の突出度が高くなり、圧縮応力が増した。3)低栄養、低酸素などで皮膚と皮下組織の耐久性が低下した。4)せん妄、不穏などでベッドとの間にずれと摩擦が起き、せん断応力と引っ張り応力が増した。5)褥瘡の程度と状況は、ほとんどがグレード2の軽症であった。軽症に抑えられている理由には以下のことが考えられた。6)圧分散寝具が有効に用いられた。その結果、患者の骨突起部にかかる圧縮応力を抑え、引っ張り応力とせん断応力が減少した。6)緩和ケアチームの褥瘡に対する関心と知識が高かった。褥瘡発生の危険性、あるいは発生を認めれば、すぐにWOCナースに連絡ができるシステムがあった。
 褥瘡の予後、(1)ほとんどの褥瘡が改善あるいは治癒した。(2)せん妄、不穏などで、ベッド上の摩擦とずれを起こした患者の褥瘡の予後は悪かった。(3)自発性があり、移動や体位、動作などについて患者自身の意志のある患者の褥瘡の予後は悪かった。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION