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《特別養護老人ホームと老人保健施設での実態と現在での結論》
 特別養護老人ホーム2ケ所と老人保健施設2ケ所を見学させて頂いた。
1)一つ目の老人保健施設はわが国の最初の老人保健施設7モデル施設の中の一番目。「老人保健施設そのものが、これからターミナルの場所となり得るかの検討課題である」という全国老人保健施設協会の立場をお聞きした。一般病院併設である。
2)ふたつ目の老人保健施設は、古い大規模な精神病院と一般病院に併設された老人保健施設であるが、この8年間の間に8例のホスピスケアを行っていた。在宅と施設を何度も行き来して、家族の希望として最後の場所として、老人保健施設を選んだケースとの事。
 ここで特筆することは、併設の病院の当直医には死亡確認をしてもらうだけということである。まさに、在宅死の延長である。このスタイルがわが国の施設でのホスピスケアとなる可能性もある。
3)一つ目の特別養護老人ホームは創設者である施設長の父親が80歳であるが、内科医として特養に隣接して住んでおり、その兄も内科医で、近所で開業している、そういう条件の特別養護老人ホームである。
 彼等の協力でこの特別養護老人ホームでは治療の為の入院はあってもほとんどの人がこの施設で死を迎えている。
4)ふたつ目の特養は8km程離れたところにある急性期の病院を母体とした特別養護老人ホームであったが、この3年間の間に1人のターミナルを経験したという。
 この4つの施設が、私達が知りえる限りターミナルケアに取り組んでいるという施設であった。
 
《やはり病院のタイプのナーシングホーム》
 24時間常時医師がいて、看護師がある程度常駐している。
 医療つきナーシングホームすなわち療養型施設というのは世界中に日本にしかないものである。
 この施設が本来の役割を十分果たしていればこれほど老人病院バッシングは続いていないであろう。それでもこの20年間の間に老人病院は進化したのである。
 多くの事が老人病院でおこった。その事柄が今一般病院の中で形を少し変え再現しつつあるのが現状である。
 老人保健施設や特別養護老人ホームで特に単独施設の場合、医師の数、看護師の数の問題、ケアワーカーの身体疾患についての教育、特に死に関しての教育などの多くの問題が残っている。
 結論としては、ハードは老人保健施設なみで、人員配置は平成14年度限りで介護保険制度上なくなってしまった利用者対看護介護スタッフ2:1の配置基準で医師が必ず24時間1人常駐しているという条件が必要と思われる。
 今後、施設で在宅の延長として安らかに死を迎えるにはさらに多くの条件整備が必要であろう。例えば、死亡診断書のルールをどうするか。現在は死亡前24時間以内に診察した場合のみに発行できるが介護保険施設の種別によっては厳密にその条件をクリアーできないこともある。また、大きくはターミナルケアの基盤として介護者の教育も含めた緩和ケアチームの普及や、デーケン神父の提唱される国民全体の死の準備教育も必要であろう。多くの死が医療と関わることによって、より穏やかな苦痛の少ない、家族も納得できるものになりつつあるのであるから、この多くの条件については次の研究の課題となろう。







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