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平成14年度(2002年)研究報告

 事業名 医学医療に関する研究助成
 団体名 笹川保健財団  


25. 痴呆性高齢者のターミナルケアを介護保険施設で行うためには
医療法人社団充会 上川病院・理事長 吉岡 充
 
《上川病院の症例の検討》
 資料Iが当院での2001、2002年死亡退院の中から選んだ症例である。
 
 資料II(3症例)では当院での痴呆老人の終末期医療ケアーの変化、進化を示している。
 痴呆老人という自己決定をほとんどできない状態で入院されている方々の最後の時をどうしてあげれば良いのかということは結局家族と私達医療ケアーチームとの話し合いで決めていくことが多いわけである。私達は痴呆老人の最後の時をよりホスピスケア、緩和ケアーにしていく模索をし続けてきた。その結果が資料Iである。
 これがわが国における痴呆老人のホスピスケアの一つの基準となっている様に思える。いろいろ痴呆に伴う問題行動をもつ痴呆老人が入院して5つの基本的ケアー(下記図1)と向精神薬等の少量、頻回変更投与等でおだやかになり、人間らしさをとりもどしていきそれでも、身体合併症や事故や老化によって、死を迎えていくわけである。
 病院や施設であるからには専門家集団がかかわるわけであるから在宅よりもよりよいものでなくてはならないことは当然のことである。
 
図1
 
<私達の検討の結果I>
 痴呆老人には大きな3つのリスクがあると結論がでた。
1番目は転倒である。
 認知能力障害も含め危険を回避しにくい痴呆の人は痴呆でない人に比べ転倒の可能性が高い。
 当然大腿骨骨折を主とした骨折、これを機会にADLが下がるケースもあるわけである。頭部打撲の場合は、頻度は少ないにしても頭蓋内の出血も生ずる可能性もある。時には死亡することもある。ただこれはどこにいても起き得る事故である。
 在宅等で家族やヘルパー達が一日中1:1で対応していても起きることがある。
2番目は誤嚥である。
 嚥下機能の低下と認知機能があいまって誤嚥はたいへんに多い。
 誤嚥性肺炎等を少しで少なくする目的の1つに口腔ケアーがあることはよく知られていることである。時には異食による窒息事故もある。だだ食べ続けるということはたいへん重要のことで食べてもらう、食べさせる技術が痴呆ケアーのおける大きなポイントである。
3番目は抑制である。
 転倒、転落防止、安全対策や治療の遂行、あるいはケアーする側の都合にかつて当然の様になされていた抑制(身体拘束)が最悪の場合、抑制死を招くことがあるのである。
 
抑制死
図2
(拡大画面:16KB)
 
 最近は精神科領域において、身体拘束といわゆるエコノミー症候群(肺塞栓症)との因果関係も報告され始めている。
 これらのリスクを入院患者の家族と病院のチーム全体が話し合い同意やコンセンサスを得て、当院では長い間抑制のない自由に暮らしてもらう療養生活を提案してきた。
 この事は、現在普遍化しつつある。
 そして、終末期をどうすごすかという時を考えてみれば多くのことが明らかになってくるわけだ。
 
<私達の討議の結果II>
 痴呆老人に対する医師、医療の役割は何か
(1)痴呆の診断
 痴呆なのか、痴呆でないのか、痴呆ならどういう疾患なのか予後、予測を含めて重要なことである。
 わが国において大分診断は正確なものになりつつある様である。勿論、死後の解剖所見等で最後の診断がつくケースも多いわけではある。
 
(2)合併症の予防と診断と治療
 それでなくても高齢者の無熱性肺炎はよく知られていることである。
 唯一呼吸が早く、レントゲンをとったら肺炎であったということもある。物言わぬ、言えぬ、痴呆老人は痛みの訴え等も明確でない事が多い。骨折の有無も整形外科専門医でないと診断できない事もある。身体合併症の発見も注意深く普段との相違を見つける観察の目が必要であるし、その治療は治療を受ける痴呆老人が目的の意味を理解していないことも多く、いくつかの工夫や技術を要することも多い。
 
(3)問題行動等の意味と説明
 特に家族に対してであるが、何故この人はこういった行動をとるのか、何故家に帰りたがるのか、その家はどの家なのか、何故夕方になると大声をだすのか、これら痴呆に伴う症状についての説明は、当面の間、医師がいる時は医師が行った方が良いのであろう。
 
(4)痴呆リハビリテーションの処方
 例えば、院内のグル−プホームケアーの様なアクティビティ治療のプログラム処方
 
(5)ケアーによって軽快しない問題行動に対する処方
 向精神薬(メジャー、マイナートランキライザー、睡眠導入剤、抗うつ剤 等)を薬剤による化学的抑制にならない様に少量、頻回に変更する。当院では医師の診察は勿論の事、看護師が中心となってその副作用、眠気、歩行状態、身体の傾き、血圧の低下、食事の摂食情況、特に燕下障害、不随意運動、等について、24時間こまめにチェックし、副作用が大きな問題とならない様に歯止めをかけている。特に睡眠導入剤投与は毎晩変更している人が常に数名はいる。
 
(6)抗痴呆薬としての塩酸ドネペジル等の投与
 入院適応となった痴呆の段階では少ないがそれでも早期アルツハイマー病の患者の3割位に、36週間位の効果が見られている。
 
<私達の討議の結果III>
(1)ターミナルが突然くるわけではない
 起きる、食べる、排泄、清潔、アクティビティという5つのケアーの徹底のあとに、食べられなくなる、身体合併症を生ずる、あるいは事故等の経過も含めターミナルに近づくわけである。
 
(2)ターミナルの期間
(15症例の表参照)
 最後の時の治療の期間をみると、下記の様になる。15番目の症例は乳癌の痛みが問題になった時からカウントしている。この15番目の症例を除くと平均38日、含めると60日間となる。この期間の治療はあくまでの単なる延命ではなく、痛みや苦痛を少なくし、自由と尊厳を大切にし、人間らしくあり続けるために行うわけである。
 西洋では、肺炎の痴呆老人に抗生物質の経口投与はするが非経口時に血管内に静注することはあまり無い。
 わが国では定額医療の中でも、老人保健施設でもある程度までは行われているのが現状である。
 
症例1 43日 症例6 40日 症例11 29日
2 24日 7 57日 12 57日
3 58日 8 65日 13 2日
4 42日 9 66日 14 27日
5 17日 10 5日 15 約1年
 
(3)ホスピスケアと療養環境
 やはり個室が望ましいのではなく、必要である。プライバシーや家族との別れの場として、ある程度の広さの個室が必要であろう。
 
(4)家族との話し合い
 個別性も多く、状態もさまざまである。家族の患者への思いや知識や他の感情、社会的な要因もある。
 当院では、入院後、2〜3週間の時に家族全員に出席してもらい、時には本人も混じえカンファレンスを行うことにしている。ターミナルの時もこの延長で多くの家族と、できれば同時に話しあって行く。情報もできるだけ解りやすく説明する。一度決めたことが絶対ではなく、変更もその都度あり得ることをお互いに確認しあっていく。







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