第3回緩和医療教育国際調査委員会の議事録
日時: |
平成15年1月12日、13日 |
ところ: |
三光荘(岡山市) |
参加者: |
斎藤 武 |
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佐藤英俊 |
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加藤恒夫 |
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斎藤信也 |
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伴 信太郎 |
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吉田素文 |
テーマ: |
1. カリキュラムアンケート調査方法の検討 |
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2. 英訳文の検討 |
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3. 緩和ケア医学部卒前教育用カリキュラムの完成 |
〔議事〕
(1)アンケートの配分は緩和ケア教育を実施しているかどうかから、まず調査し、実施している所には抽出された大項目をどのように教育しているのかを質問することとした。
(2)調査対象は、これまでに接触したアジア・パシフィックの大学関連の人達、及び3月のAPHCで接触の人達。
(3)完全な調査を期待するよりは、少しずつ充実した意見交換としてゆく。
(4)前回抽出されたカリキュラムの大項目についての教育項目が完成された。
【Asia-Pacific Hospice ConferenceおよびAsia Pacific Hospice Network総会に参加して】
期日: |
平成15年3月5日―8日 |
場所: |
大阪国際会議場 |
目的: |
(1) |
作成された本委員会のカリキュラムを参加者と討論し、国際的に通用するカリキュラムとして成長させる |
(2) |
今後の比較研究・アンケート調査の連絡網を整備する |
結果: |
本委員会の今年度の最期の役割として、まず作成されたカリキュラムを海外の専門家と討論し、内容を点検した。多くの専門化達は、日本ではじめてのカリキュラムの作成に高い評価を与えてくれるとともに、それが、現実に使用され、実用に供するものであるかどうかを検証するようアドバイスされた。
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[4]国内の医学部・医科大学のシラバスの調査研究
国内の各地の医学部、もしくは医科大学における緩和医療のシラバスの比較研究は、本研究委員である斎藤 信也委員を中心に行われた。その結果は別添の通りである。結論は日本の大学における緩和ケア(医療)教育はとても不十分である。緩和ケアが今後の卒後研修の改革のテーマとして掲げられており、既に蔑ろにできない医療の一分野として認められているからには、より真剣な教育は方法の開発が求められている。
【 医学部における緩和ケア教育−我が国の現状− 】
〔はじめに〕
我が国においても、緩和ケアの教育、就中、医学部の学部教育におけるその重要性は認識されるようになってきている。しかし一方で、従来のキュア(cure)を目指すbiomedical modelによる医学教育から、患者のケア(care)に重点を置く緩和医療の考え方への転換がスムーズに行われているとは言い難い面もある。そこで今回、我が国の医学部における緩和ケア教育の現状について、調査を行ったので報告する。
〔対象と方法〕
平成13年度版全国医学部長・附属病院長会議刊の「全国医学教育カリキュラム」のアンケートに対し、緩和ケアについての教育を実施していると答えた大学医学部、医科大学に対し、シラバス(講義要綱)の送付を依頼し、それを収集し、その内容を比較検討した。
〔結 果〕
全国80医学部中、緩和ケアの教育を実施していると回答したのは19大学であった。そのうち13大学からシラバスの提供を受けた。
13大学中、緩和ケア教育が必修であるものが11校、選択が2校であった。講義時間は、平均3.6(1−7)時間であった。対象学年は、4年生が最も多く7校、次いで6年生が3校であった。また1年生への講義もあった。担当診療科は、麻酔科が3、精神科が3、内科が3などであった。講義の中での授業項目としては、疼痛緩和、死生学、在宅ケア、安楽死、生命倫理学、サイコオンコロジーなどについて触れられていた。
〔結 論〕
自己申告という限定はつくが、自校は緩和ケア教育を行っていると明確に答えたのは、約25%の大学に過ぎなかった。そうした中でも、緩和医療学教室等のこれを専門とする診療科が授業を担当している例は1校もなく、各講座の枠内で講義を行っている所も少なくなかった。
我が国の医学部教育における緩和ケア教育の充実のためには、一定時間以上(8時間)の授業数と統一性のあるカリキュラムの必要性が有ると考えられた。
[5]まとめ
今回の研究は、時間の関係で当初予定されていた研究項目の一つ、「アジアにおける緩和医療のシラバスの比較」まで進めることが出来なかったが、日本ではじめての「医学部学生用緩和医療カリキュラム」が作成されたことは、とても意義深いことと思われる。また、それが英訳され、アジア・パシフィックをはじめ世界に発信されようとしていることは、逆に、国際的な視野から日本の緩和ケア(医療)の教育の質が見つめられ、かつ問われることを意味する。そのような意味で、本研究は日本の緩和ケア(医療)の発展のために大きく寄与したものと思われる。
緩和医療をはじめ、それぞれの医療は、背景にある人々の生活文化と融合してこそ生きて
くるものであり、今後、このカリキュラムが日本各地の大学で使用され、さらに発展するよう期待したい。
[6]参考文献
1. "Medical Curriculum Booklet" University of Southampton School of Medicine
2. "ONCOLOGY AND PALLIATIVE CARE WORKBOOK" Univ. of Bristol Medical School, MB ChB PROGRAMME Year 5: 2000/2001
3. 「授業時間割 専攻教育科目教育目標」九州大学医学部(平成13年度)
4. 「ターミナルケアの教育」日本医学教育学会大会抄録、医学教育24(5): 324-327, 1993
5. "The Canadian Palliative Care Curriculum" Dr. Neil Macdonald for The Canadian Committee on Palliative Care Education, 1991
6. "Palliative Care Curriculum for Asia" Draft Version, pp1-15
7. "Australasian Undergraduate Medical Palliative Care Curriculum" Australia and New Zealand Society of Palliative Medicine(ANZSPM)Undergraduate Curriculum Group
8. "National Undergraduate Multidisciplinary Palliative Care Curriculum for Health Professionals. Introductory Discussion Document Drafted for the Commonwealth Department of Health and Ageing"
9. 「医学教育モデル・コア・カリキュラム 医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議編 21世紀における医学・歯学教育の改善方策について(別冊)」H13
10. 「ホスピス・緩和ケア教育カリキュラム(多職種用)」全国ホスピス・緩和ケア病棟連絡協議会 教育研修専門委員会 2001年
11. "Palliative Medicine Curriculum" Association for Palliative Medicine of Great Britain and Ireland
12. SHORT NOTE ON MEDICAL UNDERGRADATE CURRICULUM IN PALLIATIVE MEDICINE/CARE IN SINGAPORE
13. 「医学総合講義『ターミナルケア』」九州大学医学部 平成14年度授業時間割抜粋 p208
14. 新たな医師臨床研修制度の在り方について(案)pp1-10
15. Career Structure in Palliative Care -Training & Accreditation- (Taiwan Experience) Enoch Y.L. Lai R.Ph., MD
III−2 研究成果
1. 緩和ケアカリキュラム 医学部用
2. A curriculum of palliative medicine for medical students in Japan The first draft
3. Undergraduate medical palliative care education : status report in Japan
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