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平成14年度(2002年)研究報告

 事業名 医学医療に関する研究助成
 団体名 笹川保健財団  


【 2002APHNアジア・パシフィックホスピスカンファレンス報告書 】
 今回の第3回APHN年次総会ならびにカンファレンスは、2002年5月2日から4日まで、マレーシア、Kota Kinabaluで開催された。参加者は、日本から4名のほか、台湾、香港、マレーシア、インドネシア、ヴェトナム、パキスタン、ニュ−ジーランド、オーストラリア、などアジア全域に渡っていた。
 加藤は、アジア・パシフィック地域における卒前医学教育の現状調査研究の前段調査を目的として、本会議に出席し、協力者の獲得にあたった。
 
(1)結果
 当初の計画のsyllabusの収集は可能か?
結論:難しいというより、意味があまり無い
理由:
1)接触が出来た人達は、何らかの形で大学教育に関与している人達ばかりだが、全ての人達はその大学のsyllabusを見たことが無いか、もしくは、syllabusという言葉さえ知らない人も中にはいた。
2)非英語圏においては(台湾、ヴェトナム、インドネシア、マレーシアなど)、医学教育は母国語で行われており、syllabusが手に入ったとしても解析が出来ない(教育材料は、英語と母国語の双方で行われている場合もある)。
(2)今後の調査研究の方向
 syllabusの分析という当初の方法は、あくまでも客観性を求めての提起だったが、それが難しい以上、客観性には少し劣ることが予測されるが、調査質問表を開発しそれを送付し回答を求めるのが良いと思われる。
方法:
1)対象は今回の会議で接触できた人達、及びその人達から紹介を受けたAPHNに参加している人達(この条件は、緩和医療教育に関心があるという意味で回答の客観性を維持する上での最小限の方法と思われる)
2)送付及び回答方法はE-mailにて行う。
3)syllabusは可能な限り収集し参考にする。
(3)今回の訪問でとりわけ印象的だったこと
(1)緩和医療がアジア・パシフィック諸国で確実に根付いており、かつ早い速度で普及していること
(2)その裏づけとして、それぞれの国の学会独自であれ、医学会全体での動きであれ、
1)緩和医療の認定制度が確実に増えているという事実
2)教育が主ではあるが、確実にトレーニングプログラムが開発されている
3)カリキュラムが開発されている(それらは主として研修医から一般内科医を対象としたものであるが)
4)卒前教育のカリキュラムが開発されつつある(個別の大学レベルではなく、国内の団体レベルの推薦項目として)
*これらの進歩は、特に、緩和医療が国家単位で一つの推進団体が存在する国に目立っているように思われる。英国の影響下にあるオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、香港などは当然のことと思われるが、中でも台湾の独自の進歩が目覚しい。
*緩和医療の医学生への教育は、APHNのメンバーにとってはとても興味のある分野であるが、まだ教育方法の開発は充分ではなく、ましてや、その国際比較はなされていない。その意味でもこの研究はとても意義あるものと思われる。
*今回多くの人達の協力により、各国のカリキュラムが入手できた。それらは
1)アジア・パシフィック地域ホスピス緩和ケアカリキュラム(試案)(参考文献6
2)オーストラリア緩和ケアカリキュラム(参考文献7
3)National Undergraduate Multidisciplinary Palliative Care Curriculum for Health Professionals(参考文献8
4)ONCOLOGY AND PALLIATIVE CARE WORKBOOK(参考文献2
5)SHORT NOTE ON MEDICAL UNDERGRADATE CURRICULUM IN PALLIATIVE MEDICINE/CARE IN SINGAPORE(参考文献12
6)Career Structure in Palliative Care -Training & Accreditation- (Taiwan Experience)(参考文献15
 
[3]研究の調整およびモデル緩和ケアカリキュラムの作成
 上記の調査に基づき、緩和ケアカリキュラムの調査表の作成に先立ち、我々自身の緩和ケアの概念を整理し、我々自身のモデルカリキュラムを作成することが重要であるとの結論に達した(調査者が緩和ケアの概念と教育内容に関わる知識をもっていないと調査表そのものが作成できない)。
 
第2回緩和医療教育国際調査委員会議事録
日時:平成14年10月26日、27日
ところ:三光荘(岡山市)
参加者
斎藤 武〔東京女子医科大学 糖尿病センター〕
佐藤英俊〔佐賀医科大学 麻酔・蘇生科〕
的場和子〔介護老人保健施設たいよう〕
加藤恒夫〔かとう内科並木通り診療所〕
斎藤信也〔岡山大学大学院医歯学総合研究科 腫瘍外科〕
伴 信太郎〔名古屋大学医学部附属病院 総合診療部〕
吉田素文〔東京医科歯科大学 全国共同利用施設 医歯学教育システム研究センター〕
 
テーマ:「アジア・パシフィックの緩和医療教育の実態調査について」
〔議事1〕
 加藤より、2002年5月にマレーシア・コタキナバルで開催された、アジア・パシフィック・ホスピスネットワークの会議および現地で収集した情報が報告された。
 その結果、
(1)当初予定されていた、シラバスを収集し比較検討することは、以下の理由により困難であることが確認された。
1)それぞれの国の社会・経済的発展に伴い、医学教育が母国語でなされるようになっている。
2)教育が、シラバスが構成できるほどに体系化できているところが少ない。
(2)この状況のもと、研究目的と調査方法が再確認された。
1)アンケート作りの過程そのものが日本の緩和医療教育の現状を点検する作業となる。
2)アンケートを作るためには、日本の現状のニーズに応じたカリキュラムの概要を持っておく必要がある。
3)調査過程を通じて、アジア各国の緩和ケアにかかわる人達との交流が深められる。
4)それらの結果、日本から独自のカリキュラムを発信することが可能となる。
 
〔議事2〕
 次いで本研究委員会が、この作業に取り組む意義が再度討議され、下記の通り確認された。
1)医療と「死」のかかわりが様々な局面で問題となっているが、医師が変わらなければ、医療の現場も変えられない。
2)「死」にかかわる問題への知識や対処方法が、今日の日本の医学教育ではほとんどなされていない。
3)カリキュラムの調査およびアンケート作成の過程は、日本の緩和医療教育の実態を検証することである。
4)また、緩和医療は全人的教育とチーム医療を必要とし、今その教育を考察することは卒後研修の変革の時期と一致しており、医学医療の変革のチャンスともなる。
5)本研究委員会が医学教育の問題を国際比較として取り上げることは、その意味で極
めて重要な国民のための役割と考えられる。
 
〔議事3〕
 更に、会はワークショップに移った。そして、5月以降集められた世界の既存の緩和医療カリキュラムや、カリキュラム開発、チーム医療などの先行文献を参考にしつつ、日本で取り上げられるべきカリキュラムの大項目がアンケート項目の骨子として抽出された。
 それらは次回までに各自により再度検討される。そして、それぞれの大項目の教育内容・方法を問う調査票は次回に検討・完成することとした。
 抽出された大項目は以下の通りである。
 
1)緩和ケアの概念 2)症状マネッジメント
3)チームアプローチ 4)コミュニケーション
5)スピリチュアリティ 6)在宅ケア
7)家族のケア 8)他科とのかかわり
9)代替・補完療法 10)ケアする人のケア
11)倫理 12)サービスの供給システム
 
〔追記〕
 今回の討論は、緩和ケアの専門医、緩和ケアを専門的に経験した高齢者ケアの担当医と開業一般医、医療現場でたましいのケアに従事しつつ現代医療の欠点を知る牧師兼カウンセラー、大学病院の腫瘍外科医、医学教育専門家らにより議論されたものである。各委員からは、それぞれの現場の視点から、医学教育の持つ課題が述べられ、大項目作りに反映されている。それらは、医学教育現場でのスピリチュアルな問題の取扱いについて、緩和医療と腫瘍学のかかわりについて、高齢者ケアと死の問題について、そして地域社会の中でのケア(在宅ケア)などである。また教育担当委員からは教育内容や方法にかかわる実践的なアドバイスが多数寄せられた。今後は検討作業の中に、必要に応じて他職種にも加わってもらう予定である(抽出された大項目は、今後は本アンケート調査とは別に、態度・技術・知識の小項目を検討・付加し、カリキュラム作りの骨子として役立てる)。







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