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(3) 職務満足
 重回帰分析の結果、職務満足にはMSW自身のスキルと職場環境が影響していることが明らかとなった。スキルとしては、がんのEOLケアにおける専門的役割(心理的サポート、患者・家族と医療スタッフとの関係調整、死の不安を表出された時の準備)が関係していた。また、“新たな介入・援助方法を検討、導入するべきである”と考えているほど満足度が低いことも判った。職場環境としては、組織上の位置付けが事務部門であるより診療・技術部門である方が業務内容に対する満足度は高く、ホスピス・緩和ケア病棟兼任MSWより専任MSWの方が満足度は高いことから、その方がより専門的援助が可能であると言える。
 
2. 考察
 がんのEOLケアにおいて、MSWが関わる割合は少なく、特に一般病院では、役割が充分に認識されていないことが明らかとなった。
また、がんのEOLケアの専門的役割について、MSWは“心理的サポート”、“患者・家族と医療スタッフとの関係調整”については、先行研究と同様に重要性が認識しているが、“遺族ケア”についての共通認識はできていないことが判明した。さらに、MSWはがんのEOLケアの専門的役割を充分に果たしていないことも実証された。そして、職務満足にMSW自身のスキルと職場環境が影響し、満足度が高いほど専門的役割を担っていることも明らかとなった。
 以上の本研究結果から、MSW自身および他の医療スタッフにがんのEOLケアの専門的役割を認知させるために、ソーシャルワークの資格基盤の上に、さらに認定資格を設ける等の高度な専門性の確立の必要性が実証されたと言える。また、MSW自身が専門的役割を理解し、スキルアップするために、がんのEOLケアの専門的役割を担うことができる教育プログラムの開発が必要と考えられる。そして、専門的な援助を行うために、診療・技術部門への位置付けや、ホスピス・緩和ケア病棟を有する機関では専任MSWを配置する等、職場環境の改善が重要であると思われる。
 これらの改善・発展によって、それぞれの専門職が質の高い専門的援助を行うことが可能となり、ひいては患者・家族への医療サービスの質が向上すると推察される。







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