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14. ターミナルケアにおける医療ソーシャルワーク
― 急性期病院及びホスピス・緩和ケア病棟における医療ソーシャルワーカーの現状調査及び今後について―
 
大阪大学大学院 人間科学研究科臨床死生学研究室・博士前期課程 本家裕子
 
I 研究の目的・方法
1. 背景
 医療技術の進歩・高度化により、疾病の早期発見・早期治療も進み、がんは慢性病として位置付けられるようになってきている。加えて、少子・高齢社会の到来、生活水準の向上や生活意識の変化に伴う医療への意識の変化、生活環境の変化に伴う疾病構造の変化からも、患者・家族の心理的・社会的問題の解決が重要視されている。したがって、社会福祉の立場から患者・家族の抱える心理的・社会的・経済的問題の解決・調整を援助し、社会復帰を図る医療ソーシャルワーカー(Medical Social Worker;MSW)の専門的介入の必要性が高まっていると言える。
 がんの終末期(End-of-Life;EOL)ケアにおいてMSWが果たしている、また果たすべき役割は何であるかについて、国内外の先行研究を概観したところ、心理的・社会的サポートのなかでも特に“心理的サポート”、“患者・家族と医療スタッフの関係調整”、“遺族ケア”という3つの役割が示唆された。しかし、日本ではMSWは他の医療スタッフからの認知も不充分であり、ホスピス・緩和ケア病棟のMSWでさえも、本来の機能を果たしていないことが明らかとなっている。したがって、一般病院ではさらに不充分な援助しかできていないと考えられる。このような状況において、MSWは専門性の主張も困難であり、理想と現実のギャップに苦悩し、現状に満足していないと推測される。
 
2. 目的
 がんのEOLケアにおけるMSWの必要性・重要性を検証し、その望ましいあり方を模索し、MSWによるより良い末期がん患者支援のための提言を行うことを目的とする。そのために、全国のMSWに対して質問紙調査を行い、(1)がんのEOLケアにおけるMSWの業務の現状、(2)患者・家族に対する“心理的サポート”、“患者・家族と医療スタッフとの関係調整機能”、“遺族ケア”に対する認識を中心とした、MSWのがんのEOLケアに対する認識、(3)MSWの職務満足度の実態の3点について明らかにすることを試みた。







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