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實範『病中修行記』
(1)自分で命を縮めることはよくない。信仰をより深めるための医薬使用はよい。
(2)自分自身の寿命をさとったら一心に菩提の行をおこなうこと。
(3)臨終時は特に不動明王を念ずべきである。
(4)すでに起こした惑業執着は除かねばならない。
(5)諸の悪業は起こさないようにしなければならない。
(6)阿弥陀仏の四種法身の依正を念ずべきである。
(7)阿弥陀仏の四種曼荼羅の相を念ずべきである。
(8)身・口・意の三密をしっかりと持すべきである。
◆看取る人 なし ◆死にゆく人 (1)・(2)・(3)・(4)・(5)・(6)・(7)・(8)
◆臨終期間(平生を含む) (1)・(2)・(3)・(4)・(5)・(6)・(7)・(8)
◆臨終(命終)時  (3)・(6)・(7)・(8) ◆臨終(命終)後 なし
 
良忠『看病御用心』
(1)看取りの場を設営荘厳し病人を安置し、五色の糸を仏像と病人の手にかける。
(2)焼香散華をしながら病人から目を離さないこと。
(3)酒肉五辛を食べた人や妻子を病人に近づけてはいけない。
(4)看病人は3人がちょうどよいが、場合によっては4〜5人でもよい。
(5)延命の為の加持祈祷・祓い・灸治はよくないが、称名の為の苦痛緩和はよい。
(6)どんな重病でも妄念を起こしてはならず称名念仏をすること。
(7)病人の飲食物等の願いに対しては配慮をしつつ制止すること。
(8)死後のことについては事前に尋ねてよく聞いておくこと。
(9)重病人の大小便や痰の際は寝たままさせてもよい。病床は常に清潔に。
(10)重病人の大小便や痰の際は屏風や障子を本尊との間に置く。ただ急の時はその必要は無い。紙に水を浸して病人の咽喉をときどき潤すこと。
(11)病人のわがままにも親切に対処すること。
(12)病人は夢を見たら内容を看病人に話し、言わない時は看病人から尋ねること。
(13)見仏聞法・離苦解脱を願うなら一心に念仏を勧めること。
(14)弥陀の本願を信じ、弥陀の来迎を信じて念仏を勧めること。
(15)念仏の功徳によって弥陀の来迎を待つのが臨終用心の趣旨である。
(16)病人に苦痛があっても耳元で聞こえるように念仏をすべきこと。
(17)苦痛で意識がなくなっても看病人は見捨ててはいけない。
(18)重病人の息が絶える刹那を看病人はしっかり見届けること。
(19)臨終時は病人の向きを変えたり動かしてはいけない。臨終後は2〜4時間の念仏を継続すること。
◆看取る人 (1)・(2)・(3)・(4)・(5)・(6)・(7)・(8)・(9)・(10)・(11)・(12)・(13)・(14)・(15)・(16)・(17)・(18)・(19) ◆死にゆく人 (6)・(12)・(15)
◆臨終期間(平生を含む) (1)・(2)・(3)・(4)・(5)・(6)・(7)・(8)・(9)・(10)・(11)・(12)・(13)・(14)・(15)・(16)・(17)
◆臨終(命終)時 (18)・(19) ◆臨終(命終)後 (19)
 
可円『臨終用心』
(1)看病人は病人の気持ちに逆らわないように配慮すべきこと。
(2)病人は看病人を有り難く思うだけでなく、御礼の言葉を口に出していうこと。
(3)酒肉五辛を食べた人は臨終の場に行ってはならない。また入れてもいけない。
(4)いよいよ臨終という時には加持祈祷やへたな慰めは無用である。
(5)延命の為の薬の使用は不可。ただし臨終時の正念維持の為なら止むを得ないが、人参等の強い薬は不可。
(6)病人は死を恐れるあまり、生を貪ってはならない。
(7)末期の水は不必要である。
(8)死にゆく者の耳元では大声で念仏を唱えてはならない。
(9)死にゆく者の眼を閉じたり、枕をはずしたりしてはならない。
(10)未だかすかに息があるにもかかわらず、泣いたりしてはならない。
(11)臨終時の看取り人は称名と看病と雑用の3人でよい。静かに念仏し、五色の糸や本尊、頭北面西や香花燈明などについては形式にとらわれないこと。
(12)臨終後に死者を頭北面西にしたり、すぐに手足を曲げて納棺してはならない。
(13)死者は二日間はアーラヤ識が残存しているので葬送儀礼は急いではならない。
◆看取る人 (1)・(3)・(4)・(5)・(7)・(8)・(9)・(11)・(12)・(13)
◆死にゆく人 (2)・(5)・(6)
◆臨終前(平生を含む) (1)・(2)・(3)・(4)・(5)・(6)
◆臨終(命終)時 (7)・(8)・(9)・(10)・(11) ◆臨終(命終)後 (12)・(13)
 
 このように、内容の分類分析を各書について出来得るかぎり行なった結果、おのずから特徴的・傾向的事柄が浮かび上がってきた。







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