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(2)パワートリム操作
i)ボートの航走姿勢(トリム)
(1)適正な航走姿勢
 プレーニング状態ではバウが上がり、船底と水面の角度が2・389図のように3°〜5°となるのが適正な航走姿勢である。
 
2・389図 適正な航走姿勢
 
(2)バウの沈み過ぎ
 ロワーユニットを過度にトリムダウンすると、2・390図のようにプレーニング状態ではバウが沈む。この状態では“バウステアリング”と呼ばれるオーバステアリング傾向が見られ一方向の操舵力が大きくなる。著しくトリムダウンさせるとボートは左に傾く。
(3)バウの上がり過ぎ
 ロワーユニットを過度にトリムアップすると、2・391図のようにプレーニング状態ではバウが上がり過ぎて、ヨーイング(船首が左右に振れる)とピッチングが発生する。プレーニングが困難となり、前項と逆方向への操舵力が大きくなる。
 
2・390図 バウの沈み過ぎ
 
2・391図 バウの上がり過ぎ
 
ii)ステアリングの偏向
 2・392図に示すようにプロペラシャフトが水面と平行時(プロペラシャフトが水面と殆ど平衡の状態)では、右回りプロペラの下方へ働く翼(右側)と上方向に働く翼(左側)のピッチがほとんど等しくなる。しかし、上下位置における翼に働く水圧の違いによって、ボートが左へ傾き、ステアリングを左に取られるが、この偏向の程度は大きなものではない。
 2・393図に示すようにトリムダウン時(ロワーユニットがトリムダウンされた状態)では、右回りプロペラの下方へ働く翼(右側)のピッチは左側に比べて大きくなり、右側のスラストも大きくなる。このアンバランスによってロワユニットの後部が右に振られ2・394図のようにボートが右旋回する偏向が生じる。
 
2・392図 標準時
 
2・393図 トリムダウン時
 
2・394図 右旋回偏向
 
 2・395図に示すようにトリムアップ時(ロワーユニットがトリムアップされた状態)では、前項の逆の現象によってボートは左旋回する偏向が生じる。
 
2・395図 トリムアップ時
 
iii)トリムタブの調整
 ステアリングを左に取られる場合には2・396図のようにトリムタブの後部を左へ移動させるとトリムタブは水圧を受けてドライブユニットを右に動かす。これはステアリングを右に切るのと同じ効果を生み、プロペラ推力の方向をわずかに変えボートは直進することになる。但し、トリムタブにかかる水圧を利用しているため、2・397図に示すように3,500rpmで直進するように調整すると、4,000rpmでは水圧が強くなりボートは右に旋回し、逆に3,000rpmでは水圧が弱くなるため左へ旋回する。従って、トリムタブの調整は最も使用頻度の高い回転速度に合わせて行うことが重要である。
 
2・396図 トリムタブの調整
 
2・397図 回転速度と旋回傾向
5)トリム角度の調整
 船外機のトリム角度とは、トランサム面から船外機がどれだけ外側または内側に位置しているかの角度のことを言う。この角度は前述のようにボートの走行姿勢に多大な影響を与える重要な事柄の一つで、トップスピードに影響したり、ハンドル操作の良否を決めたりする。2・398図に示す(1)はトリム範囲を示す。
 
2・398図 トリム範囲
 
2・399図 チルトピン
 
2・400図 標準的な位置
 
 この角度を決める方法として、2・399図に示すようにチルトピンを差替えて決めるもの、油圧を利用してスイッチ操作で行うものなどがある。ボートのトランザムボードには一般的に角度(約12°)がついており、この角度はボートによって異なるため、ボートと船外機の組合わせによってトリム角度を調整する必要がある。据付時の作業としては走行時にキャビテーションプレートが2・400図のように水面と平行になるような標準的な位置にセットする。







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