3)パワーチルト式
中型機種の一部にパワーチルト装置が取り付けられている。パワーチルト装置の構成部品と操作方法を 2・376図に示す。
パワーチルトはチルト機能(チルトアップとダウン)のみを持つ装置である。航走中にこの装置を作動させてトリムアップ使用とすると、チルトシリンダ下部の圧力が上昇してシリンダが破損する恐れがある。これを防ぐためにアップリリーフバルブ2が設けられ、最高圧力を制限している。
(1)チルトアップ(2・377図)
チルトアップ操作を行うと、モータが右回転(モータシャフトから見て)してオイルはギヤポンプからメインバルブを経てチルトシリンダ下部に送り込まれ、チルトシリンダが伸びてドライブユニットをチルトアップさせる。シリンダ上部のオイルはメインバルブを経てギヤポンプに供給される。しかしポンプに戻るオイル量は吐出量よりも少ないので、この不足分はリザーバから供給される。
ドライブユニットが完全にチルトアップされると、チルトシリンダの下部の圧力は上昇するが、アップリリーフバルブ1が開くことによって規定圧力以下に保たれる。
(2)チルトダウン(2・378図)
チルトダウン操作を行うと、モータが逆回転してオイルはギヤポンプからメインバルブを経てチルトシリンダ上部に送り込まれ、チルトシリンダが縮んでドライブユニットをチルトダウンさせる。シリンダ下部のオイルはメインバルブを経てギヤポンプに供給される。しかしポンプに戻るオイル量は吐出量より多いので、この過剰分はアップリリーフバルブ1を通ってリザーバに送られる。
ドライブユニットが完全にチルトダウンされると、チルトシリンダ上部の圧力は上昇するが、ダウンリリーフバルブが開くことによって規定圧以下に保たれる。
(3)マニュアルバルブ操作(2・379図)
通常マニュアルバルブは完全にねじ込まれ閉じている。マニュアルバルブをゆるめて開くと、チルトシリンダ上部と下部の回路が連結され、ドライブユニットを手動でチルトアップ、ダウンできる。また両方の回路はリザーバにも連結されるので、チルトシリンダ上部と下部のオイル量の差はリザーバとのオイルの流れによって補われる。
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2・377図 チルトアップ
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2・378図 チルトダウン
(4)障害物へ衝突時(2・380図)
ドライブユニットが水中障害物に衝突すると、チルトシリンダ上部の圧力上昇によってチルトピンに内蔵されているアブソーババルブが開いて、オイルがチルトピンとフリーピストン間に移動することによって衝撃を緩衝し、ドライブユニットが跳ね上がる。水中障害物を乗り越えると、前進スラスト反力によって押され、オイルはチルトピンに内蔵されているチェックバルブを通ってチルトシリンダ上部に戻り、ドライブユニットは元の位置に下がる。
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2・379図 マニュアルバルブ操作
2・380図 障害物へ衝突時
4)パワートリム&チルト式
中型及び大型機種にはパワートリム&チルト装置が取り付けられている。パワートリムの作動は航走中にドライブユニットのトリム角を変えることである。これでプロペラスラストの方向を変えてボートの姿勢を最適な角度に保ち、最高の航走性能を発揮させることができる。
パワーチルトの作動は係留、魚釣、運搬時等の停止中にドライブユニットをチルトアップ、ダウンさせることである。また、アイドリング運転であれば、チルトアップした状態で浅瀬航走を行うことができる。
パワートリム&チルト装置の構成部品を2・381図に、また油圧系統を2・382図に示す。
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2・381図 パワートリム&チルト装置
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2・382図 油圧系統図装置
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