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3.11 トリム及びチルト装置
1)チルトピン式
 チルトピン式のチルトアップと浅瀬航行機構を2・367図に示す。
 スイベルブラケットに働く前進のプロペラスラスト反力はチルトピンで受け止められる。従って、チルトピン段数(取付位置)を変えることによってドライブユニットの取付角度を変えることができる。後進の反力は逆に働くので、跳ね上がりを防ぐためチルトロックプレートがチルトピンに噛み合っている。チルトアップ操作時及び水中障害物への衝突時には、この噛み合いが外れて船外機が跳ね上がる。浅瀬航行レバーを動かしてチルトピンに当てると、プロペラが少し引き上げられて、前進方向のみ浅瀬航走できる。
 
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2・367図 チルトピン式
 
・チルトピン調整
 一般的に船底とアンチキャビテーションプレートが平行になるチルトピン段数を選ぶ。しかし、航走時に2・368図に示すように船首が上がりすぎるならば、チルトピン段数を変えてドライブユニットをトランサムボードに近づける。逆の場合は遠ざけるようなチルトピン段数を選ぶ。
 
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2・368図 チルトピン調整
 
2)ハイドロチルト式
 中型機種の一部には2・369図に示すようなハイドロチルトロック装置が取り付けられている。トップカウリング部を手で引っ張り上げてチルトアップ操作を行う時、ガスを密閉したチルトシリンダの働きによって操作力が軽減される。またこのチルトシリンダはショックアブソーバの機能を持っている。
 
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2・369図 ハイドロチルトロック機構
 
2・370図 マニュアルチェックバルブ
 
2・371図 リリーフバルブ
 
(1)マニュアルチェックバルブ
 マニュアルチェックバルブは2・370図に示す構造をしており、チルトレバーをLOCK(下側)からTILT(上側)の位置に引き上げると、カムがプッシュロッドを押してマニュアルチェックバルブが開かれる。
(2)リリーフバルブ
 リリーフバルブは2・371図に示すような2つのリリーフバルブ、ダウンリリーフバルブとアブソーバリリーフバルブが組み込まれており、チルトダウンすると、シリンダ上部の圧力上昇によってダウンリリーフバルブが開かれオイルが移動する。このためチルトレバーがLOCK位置であってもチルトダウンは可能である。
 また、ドライブユニットが水中障害物に衝突すると、シリンダ下部の圧力上昇によってアブソーバリリーフバルブが開かれオイルが移動する。
(3)航走時
 航走時、チルトレバーはLOCK(下側)の位置にあり、チルトシリンダは2・372図に示す状態にあり、マニュアルチェックバルブは閉じられているので、後進スラスト反力によるドライブユニットの跳ね上がりが防止される。
 
2・372図 航走時
 
2・373図 チルトアップ操作
 
2・374図 チルトダウン操作
 
2・375図 障害物へ衝突時
 
(4)チルトアップ操作
 チルトレバーを2・373図に示すように、TILT(上側)の位置に動かし、チルトアップ操作を行うと、マニュアルチェックバルブが開いているのでオイルは矢印の方向に移動する。この時密封されたガス圧力が加わってチルトアップ操作力を軽減する。
(5)チルトダウン操作
 ドライブユニットをチルトダウンする。この時チルトレバーはLOCKの位置にありマニュアルチェックバルブは閉じているが、2・374図に示すようにシリンダ上部の圧力上昇によってダウンリリーフバルブが開き、オイルは矢印の方向に移動しチルトダウンする。
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2・376図パワーチルト式
 
(6)障害物へ衝突時
 航走時(チルトレバーはLOCKの位置)、ドライブユニットが水中障害物に衝突すると、2・375図に示すようにシリンダ下部の圧力上昇によってアブソーバリリーフバルブが開き、オイルは黒矢印→の方向に移動する。このオイルの移動によって衝撃が緩衝される。水中障害物を乗り越えると、ドライブユニットは前進スラスト反力によって押され、オイルはダウンリリーフバルブを通って白矢印→の方向に移動し、元の位置までチルトダウンする。







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